「光の護封剣」「多分エヴァ」 上空に出現した8本の「光の柱」が話題に→その正体は?専門家に聞く
北海道の夜空に突如現れた不思議な光景がツイッター上で注目を集めた。
これは、北海道・函館市の北側にある七飯町で2022年8月22日に撮影された写真。
黒い影のように見える森の上空に、8本の光の柱が浮かんでいる。
現実のものとは思えないどこか神秘的な光景だが、これは一体何なのだろう?
この写真を投稿したのは、七飯町にある「函館大沼プリンスホテル」の草原や森林でセグウェイによるツアーを行う「函館大沼セグウェイツアー」の公式ツイッターアカウント(@SegwayOnuma)。
Jタウンネット記者は8月23日、まず投稿者の函館大沼セグウェイツアーガイドの小泉さんに撮影時の状況を聞いた。
「漁火光柱」の可能性が高い
小泉さんが光の柱を撮影したのは2022年8月22日の20時半ごろ。大沼町(七飯町内の地名)の自宅にいた小泉さんは、家族から光の柱が出ていることを聞き、不思議に思い外に出た。天気はくもり、気温は20度。南の函館方面の上空に、それは浮かんでいた。
「何かの自然現象かと思いましたが、初めて見たのでビックリしました」(小泉さん)
小泉さんが捉えた不思議な光景はツイッター上で3000件以上のリツイート、1万2000件を超えるいいねを集めるなど注目の的に。写真を見たユーザーからは
「実際みたら感動しそう」
「多分エヴァンゲリオンか何かだと思います🤣」
「光の護封剣」
などアニメやゲームの内容に例える声が続出している。
この現象は何なのか。Jタウンネット記者が、映画「天気の子」でも気象監修を務める気象学者・荒木健太郎さん(気象庁気象研究所主任研究官)に話を聞いたところ、光源はわからないものの「漁火光柱(いさりびこうちゅう)」の可能性が高いとする。
「漁火光柱」とは、漁船の漁火が夜間に上空の氷でできた雲にあたることで発生する現象。氷が六角形の板状で、かつ水平線にほぼ平行に並んでいる時、下から上に向かう光がこれに反射して、柱のように見えるのだという。
「夏に見られるのは珍しい」ってホント?
この漁火光柱について、ツイッター上では「冬が多いから真夏は珍しい」との声もあるが、一体なぜ夏に観測されたのか。疑問に思った記者が荒木さんに聞くと、
「巻層雲や高層雲などの氷でできた雲が広がれば、季節に関係なく夜間の漁火の上空で発生します」
とのこと。空の高い場所に氷の雲が、そして周辺の海域に漁火を灯した漁船があることだけが発生の条件というわけだ。
では「漁火光柱」はどれほど珍しいものなのか。荒木さんは次のように語る。
「統計があるわけではないですが、年に数回は写真と同じような漁火光柱が多くの方に目撃されて話題になっているようです。
ただ、人間活動の活発ではない夜間に発生する現象なので、実際にはもっと多く発生しているかもしれません」
ちなみに、荒木さんの著書『もっとすごすぎる天気の図鑑』によると、上空に氷の雲が出ている時は「漁火」だけでなく太陽や月の光も「太陽柱(サンピラー)」「月柱(ムーンピラー)」という柱になるそうだ。
(10月6日11時00分追記:記事初出時、本文中の表記に一部誤りがありましたので、修正しました。)
荒木 健太郎 もっとすごすぎる天気の図鑑 空のふしぎがすべてわかる!