「雨の夜の帰り道、後ろからどんどん近づいてくる足音。次の瞬間、見知らぬサラリーマンが私を傘に...」(東京都・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Aさん(東京都・30代女性)
その日、Aさんが家に帰ろうとしていると、雨が降ってきた。
遠出していたため荷物が多く、でも傘はない。仕方なく濡れながら帰っていると、後ろから早足でついてくる足音に気付いて......。
<Aさんの体験談>
大学生の頃、少し遠くまで出掛けた日のことです。帰りが遅くなっていた上に、大きい荷物があったのに不運にも雨まで降ってきてしまいました。
最初は小雨程度だったので急ぎ足で帰ればいいかと思っていたらあっという間に本降りに。雨宿りできるところもなく、私は諦めて歩いていました。すると、後ろから誰かが早足で近づいてくる音が聞こえたのです。
「良かったら入ってください」
足音の主は「あの」と声を掛けてきました。
帰り道に痴漢やナンパにあったことが何度もあったので、私はその声には振り向きませんでした。すると、急に雨が当たらなくなり......。
「良かったら入ってください」
サラリーマン風のスーツの男性が傘に入れてくれていました。
とはいえ、私はまだ警戒していたので「いえ」「大丈夫です」と断っていたのですが、その人は
「今日は寒いですし結構降ってきましたから。荷物も濡れてしまうでしょ」
と、傘を差しかけてくれて、自分はほとんどはみ出していました。しかもこちらが警戒してるのを察して特に話し掛けるでもなく、肩なども触れないよう隙間をあけてくれていたのでした。
「僕が見えなくなるまで...」
やがて、自宅の手前の曲がり角まで来たところで「もうそこなので」と言ったら、その人は
「じゃあそこのお店のひさしにどうぞ。僕が見えなくなるまでちょっとだけ待ってくださいね」
と濡れない場所まで誘導してくれました。そこで私がお礼を言うと「風邪をひかないように気をつけて」と言って、足早に去って行きました。
その時は「あんなに急いでいたのに歩くペースを合わせてくれて有難いな」と思っただけだったのですが、後でもう一つの気遣いに気付きました。
お店の前で分かれることで、私の住んでいる場所がわからないようにしてくれていたのです。ますます感謝の気持ちが湧きました。
あの時はお名前も聞かず十分なお礼も出来ませんでしたが、助けてくれただけでなく怖がらせないよう気遣ってくださったこと、ありがたく思っています。
それ以降私はバッグには折畳み傘を常備するようになり、雨が降った時には困っている人に差し上げる事ができる大人になりました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)