ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

福井に向かっていたはずが、戦国時代に着いちゃった!?  歴史の中に入り込む「一乗谷・城下町探訪記」

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2022.09.16 16:00
提供元:福井県

福井に、行こう。Jタウンネット記者はある日、唐突にそう決断した。

緑豊かな山々、雄大な日本海、大迫力の断崖と白い砂浜、そしてちょっとレトロな街並み......福井の、そんな風景に癒されたい。どこまでも続く東京のコンクリートジャングルには、もう疲れ果てたのだ。

思い立ったが吉日で電車に飛び乗り、福井に着いたはず、だったのだが――。

ここはどこ?
ここはどこ?

土壁に板ぶきの屋根。なんだか「レトロ」どころではない風貌の町屋がズラリと立ち並んでいる。

以前、福井県南部を訪れた際も歴史ある町屋の合間を歩いて「なんちゃってタイムスリップ」と洒落こんだことがある。でも、いま目の前に広がっている風景は、その時のものとは明らかに違う。

例えるなら、そう。この場所はどこを見ても、まるで時代劇に出てきそうな感じなのだ。

第一村人発見...!?

ここがどこなのか、まだわからない。記者は呆然としながらも、とりあえず住人を探すことにした。

失礼しま~す......
失礼しま~す......

のれんをめくりつつ声をかけたが、返事がない。しかし、中を覗いてみると米俵が積まれていた。お米屋さんだろうか?

とりあえず、生活の気配を感じるので今はどこかに出かけているのかもしれない。

米俵がたくさん
米俵がたくさん

そんなふうにしばらく散策を続けていると......。

わぁっ
わぁっ

町屋から和装の女性が出てきた。突然の遭遇にお互いびっくり。

そして彼女は記者を頭のてっぺんから足の先まで、怪訝そうに眺めてくる。なんだか警戒しているようだが、こちらはココがどこかもわからないのだ。だから、恐る恐る聞いてみた。

「ここは、どこですか?」

すると、彼女は言った。ここは一乗谷の城下町で、朝倉氏という大名が治めている場所だと。

――ひょっとして記者は、戦国時代に来てしまったのだろうか?

いざ戦国時代の城下町を探検

衝撃的な可能性に言葉を失っていると、さっき出会った女性に町屋の中に引っ張り込まれる。そして、「そんな恰好じゃ目立つから」と服を貸してくれた。

変身!
変身!

いかがだろうか。

我ながらなかなか、周囲の雰囲気に馴染んでいる。城下町で暮らす町民にしか見えない。これなら他の人に出会った時に警戒されることもないだろう。

さて、ここがもし本当に戦国時代なら、こんな貴重な経験なかなか出来るモノではない。

記者がすることといえば、1つ。もちろん、取材だ。

町人が集まってきた
町人が集まってきた

「一乗谷の城下町」とは、どんな場所なのか。散策しながら探っていると、先ほどの女性以外にも住人の姿がちらほら見受けられた。

「私はそこに住んでるのよ」
「あそこは染物屋さんだよ」

と、皆さん親切に町の情報を教えてくれる。

町の中にある立派な構えの門は、武家屋敷のものらしい。人けが無いので、こっそり入ってみた。

内側から見た門
内側から見た門

井戸があった。

武家屋敷だけでなく、井戸はほとんどの町屋や屋敷にも備えつけられていたので、このあたりで生活している人々は水に困っていないみたいだ。

その後も散策を続けていたら、大きなお屋敷の敷地に迷いこんでしまった。お食事中のようだったので慌てて退散しようとしたのだが......。

ん?
ん?

よく見ると人形だ。

日本で初めて発見された「トイレ」?

――勘の鋭い読者の皆さんはすでにお気づきのことだろう。

記者はタイムスリップしたわけではない。予定通り、現代の福井県に辿り着いている。

今回、やってきたのは国の特別史跡・特別名勝・重要文化財の3つに指定されている「一乗谷朝倉氏遺跡」(福井市)。

戦国時代、越前朝倉氏が約100年に渡って治めていた一乗谷には、1万人もの人々が暮らしていたこともあったと言われている。1573年に織田軍によって焼き滅ぼされた後400年以上も土に埋もれていたが、発掘調査の結果ほぼ完全な形で見つかった。

記者が歩いていたのは、そんな遺跡の内部にかつて栄えた城下町を再現した「復原町並」だ。

当時の町屋や武家屋敷などを再現
当時の町屋や武家屋敷などを再現

町で出会った人々は、「城下町生活再現」として復原町並内を周回しているスタッフの皆さん。地元の劇団員や一般応募で選ばれたメンバーが当時の町人の服装で歩いたり、会話したりしていて、リアルな「戦国時代の城下町」を演出している。

また、取材時はコロナ禍で休止中だったが、甲冑やお姫様の衣装を着られる着付け体験(500円)もある(記者が町の皆さんと同じ服を着させてもらったのは、特別だ)。

日本で初めて?
日本で初めて?

復原町並内はどこもかしこも興味深いものばかりだが、その中でも特に面白いと思ったのはこちら。中級武家屋敷群のなかにあった、当時の「トイレ」を再現したものだ。

武士という職業柄、後ろから切りつけられることがないように、今の和式トイレとは違い、当時のトイレは扉の方を向いていたそう。

壁ではなく、扉の方を向いて用を足していた
壁ではなく、扉の方を向いて用を足していた

一乗谷朝倉氏遺跡は日本で初めて「トイレ遺構」が考古学的に確認された場所。トイレの穴の前を覆う「金隠し」が遺跡から出土したことで、いくつも開いていた穴が「トイレ」としてつくられたものだと裏付けられた。

他にも、戦国時代の「暮らし」に触れられる多くの遺物、遺構が発掘されていて、復原町並だけでなく、「平面復原地区」も見どころだ。

一乗谷朝倉氏遺跡
一乗谷朝倉氏遺跡

たとえばこれは、第5代当主の朝倉義景が住んでいた館跡。

建造物の基礎となり柱などを支えている礎石(そせき)が発掘されたことや、茶器や花瓶などの道具が出土したことなどから、詳細な間取りが明らかになっている。また、発掘調査で見つかった中では、日本最古といわれる「花壇」の遺構も残っている。

館を見下ろす場所に位置する一乗谷で最も古い庭園「湯殿跡庭園」
館を見下ろす場所に位置する一乗谷で最も古い庭園「湯殿跡庭園」

その上、道具や素材も多く発掘されていることから、城下町にはどのような職人が暮らしていたのかまで判明しているのだという。

そんな場所だからこそ、当時の人々の生活をものすごくリアルに再現し、タイムスリップしたと思ってしまうほどに忠実な町並を復原することができたわけだ。

リアルな暮らしが分かる
リアルな暮らしが分かる

2022年10月1日にはそんな朝倉氏の歴史を学べる「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」もオープン予定。この地で発掘された遺物や、城下町のジオラマがあり、5代当主の義景が暮らした「朝倉館」の一部を原寸大で再現したエリアもあるので、ぜひ足を運んでもらいたい。

日本初の「トイレ遺構」発見の立役者である「金隠し」も展示されている。

ココにも行ってみて!一乗谷おすすめスポット3選

ここからは、一乗谷朝倉氏遺跡を訪れた時に立ち寄ってほしいスポットをご紹介する。

「一乗谷レストラント」「青木蘭麝堂」「一乗谷 あさくら水の駅」の3か所だ。

一乗谷レストラント

レストラン「一乗谷レストラント」は、遺跡の中にある。見ごたえのある遺跡を巡り、お腹が空いてしまっても安心だ。

一乗谷レストラント(ランチは11時~14時30分ラストオーダー、カフェは14時30分~16時、火曜定休)
一乗谷レストラント(ランチは11時~14時30分ラストオーダー、カフェは14時30分~16時、火曜定休)

ランチメニューのラインアップは地元産の厳選食材と郷土料理を存分に楽しめる「饗膳(きょうぜん)ランチ」や、越前おろしそばと選べるミニ丼・小鉢がついた「一乗谷そばセット」、へしこおろしそば、にしんそば、ソースカツ丼など量も種類も豊富。福井の名物が揃った、観光客に嬉しいラインアップだ。

豪華な「饗膳ランチ」(税込2600円)
豪華な「饗膳ランチ」(税込2600円)
「一乗谷そばセット」、写真はソースカツ丼(税込1500円)
「一乗谷そばセット」、写真はソースカツ丼(税込1500円)

青木蘭麝堂

遺跡入り口から車で3分程の場所にある青木蘭麝堂は、戦国大名・朝倉氏の時代から一乗谷西方・越前東郷に根付く老舗。数百年の歴史を持つ酒蔵で、庭園は福井市指定文化財に、敷地内の建物は国の登録有形文化財に指定されている。

雰囲気のある佇まい
雰囲気のある佇まい

ここで製造販売しているのは、朝倉氏一門が健康維持と氏族繁栄のために珍重したと言われる健康酒「蘭麝酒(らんじゃしゅ)」。越前東郷米を原料に、十数種類の生薬を漬け込んで熟成させたものだ。

かわいいミニボトルの蘭麝酒、ミニボトル(100ミリリットル)2本入りで税込1100円
かわいいミニボトルの蘭麝酒、ミニボトル(100ミリリットル)2本入りで税込1100円
琥珀色が美しい
琥珀色が美しい

琥珀色のとろりとした液体が美しい。匂いを嗅いでみると、ハーブのような、漢方薬のような、不思議な香りがした。うっすらと木のような匂いもする。

口に運ぶと、意外にもさらりとした口当たり。しかも後味が驚くほど爽やかで、清涼感がすごい。口の中にすーっと広がり、さっぱりしていく。

お店の人からは、「健康維持のために飲むならそのままでもいいけど、ロックにしたり、ソーダ割りにすると美味しい」と教えてもらっていたのが、なるほど確かに、炭酸が合いそうだ。

揚げ物や中華料理といった油っこい料理と一緒に飲むと、この清涼感は余計に心地がいいかもしれない。

道の駅 一乗谷 あさくら水の駅

シンボルの三連水車
シンボルの三連水車

「道の駅 一乗谷 あさくら水の駅」は一乗谷朝倉氏遺跡の玄関口にあり、観光案内所としての役割も担っている。

飲食コーナーでは越前おろしそばやソースカツ丼といった地元グルメはもちろん、ソフトクリームやパフェといったスイーツも楽しめるのでちょっとした休憩にぴったり。福井県の銘菓や地酒といった名産品、地元の新鮮な農産物なども販売しているので、おみやげを探すのにももってこいだ。

休憩・おみやげのどちらにもオススメなのが、一乗谷ジンジャエール。このあたりでしか買えない、一乗谷エリア限定商品だ。

瓶もかわいい
瓶もかわいい

「朝倉氏遺跡保存協会」とJA福井市女性部「ジンジャーガールズ」が共同開発したもので、福井市産のしょうがのみを使用したという地元ならではの商品。甘すぎず、しょうが本来の風味を楽しめる優しく、さわやかな味わいだった。

おみやげも色々買ってしまった
おみやげも色々買ってしまった

ほかにも、朝倉家の家紋「三つ盛り木瓜(みつもりもっこう)」がデザインされた戦国大名朝倉どら焼きや、朝倉家初代の孝景が非常食として栽培したのが起源とされている「越前そば」の「籠城用」(常温保存で「なま」なのに賞味期限が2か月以上もある!)、朝倉家が戦勝祈願を行ったという「安波賀春日神社」の日供祭でお供えされている「てもみ和布(わかめ)」など、朝倉氏に縁ある気になるおみやげがたくさんあった。

遺跡を見るだけではなく、中に入り、味わい、楽しめる。一乗谷朝倉氏遺跡はまさに、歴史を「体感」することが出来る場所と言える。

福井駅から、JR越美北線で16分+一乗谷駅から徒歩9分、路線バスでは30分ほどで辿り着ける「戦国時代」に皆さんもタイムスリップしてみてはいかが?土日祝日には遺跡内を巡る無料周遊シャトルバス「朝倉ゆめまる号」も走っているぞ!

 

<企画編集・Jタウンネット>

PAGETOP