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もう出来ないと思ってた! 寝台特急「サンライズ瀬戸」で今や貴重な「吸いながら鉄道旅」を体験

大山 雄也

大山 雄也

2022.09.13 17:00
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2020年4月1日から全面施行された改正健康増進法により、鉄道は原則屋内禁煙となった。

その頃にはすでに座席に座ってたばこが吸える「喫煙車両」の存在はレアなものになっていたものの、完全になくなってしまう、というのは愛煙家の記者にとってはさみしい出来事だった。

懐かしの喫煙車両(2020年1月、近鉄特急の喫煙車にて)
懐かしの喫煙車両(2020年1月、近鉄特急の喫煙車にて)

記者は、喫煙車両のある700系のこだまに乗ったことがある。2017年10月、故・萩原健一さんのコンサートを見るために埼玉から大阪に向かっていたのだ。窓際の席に座り、ゆっくりとたばこの煙を体に取り込みながら眺めた車窓からの景色は決して忘れない。

あの旅を再びやろうと思っても、もう叶わない。景色とたばこを同時にゆったり楽しむ鉄道旅はもう、自分の記憶の中にしかないのだ。

――そう思っていた記者の耳に、思いがけない情報が入ってきた。

「サンライズ瀬戸・出雲に、たばこを吸える車両があるよ」

「喫煙可」の個室が!

高松駅に停車するサンライズ瀬戸(2022年9月1日、Jタウンネット撮影)
高松駅に停車するサンライズ瀬戸(2022年9月1日、Jタウンネット撮影)

......そんな馬鹿な。一瞬、情報をくれた同僚の言葉を疑ったが、調べてみると、サンライズ瀬戸・出雲には喫煙できる寝台個室があるではないか!

新幹線とはわけが違うが、夢にまで見たたばこ鉄道旅をやらないわけにはいかない。

記者は2022年8月31日、サンライズ瀬戸に乗車した。

サンライズ瀬戸の行先表示(8月31日、Jタウンネット撮影)
サンライズ瀬戸の行先表示(8月31日、Jタウンネット撮影)

サンライズ瀬戸・出雲は山陰エリア・四国エリアと東京を結ぶ寝台特急。東京を出発する際は、14両編成のうち1~7号車が「サンライズ瀬戸」、8~14号が「サンライズ出雲」となり、岡山駅で分割してそれぞれ高松と出雲市まで向かう。

この内、6号車と13号車にあるすべての個室と4号車と11号車の半数の個室で喫煙が可能だ。すべてのシングルが喫煙できるわけではないので、吸いたい人は予約時にしっかり確認しておこう。

改正健康増進法では、望まない受動喫煙を防止する措置の適用除外の場所として「旅客運送事業鉄道等車両又は旅客運送事業船舶の客室」が挙げられている。サンライズ瀬戸・出雲の個室も客室であるため、たばこが吸えるのだ。

今回、東京から高松に向かう記者は6号車の1人用個室(シングル)を予約した。料金は乗車券が1万1540円、特急券3300円、シングルのB寝台券7700円の計2万2540円。

喫煙ができる個室が並ぶ車両に入っても、そして、個室のドアを開けても、たばこの臭いは気にならない。

同行した非喫煙者の同僚EさんとYさんも「全然臭いがしない」と驚いていたほどだ。

記者が利用した6号車25番の個室の内部(8月31日、Jタウンネット撮影)
記者が利用した6号車25番の個室の内部(8月31日、Jタウンネット撮影)

個室内にはベッドとテーブルが設置されているほか、入り口付近に少しスペースがある。

紙コップやごみ袋、浴衣は置かれているが、アメニティの類はない。必要最低限の物がそろった簡素な宿といった印象を受けた。

そんな個室に、肝心要のアイツはついている。

うひょー! 灰皿だぜー!

 6号車25番の個室についている灰皿(8月31日、Jタウンネット撮影)
6号車25番の個室についている灰皿(8月31日、Jタウンネット撮影)

テーブルから引き出す形で、灰皿が! 昔の車についているような小さな物だけれど、列車の個室に灰皿がある。それだけでちょっと感極まってしまった。

それでは、ベッドに腰を据え、車窓からの景色を眺めながらゆっくり一服をしよう。

車窓からの景色を眺めて一服(9月1日、Jタウンネット撮影=以下同)
車窓からの景色を眺めて一服(9月1日、Jタウンネット撮影=以下同)

21時50分東京発、翌朝7時27分高松着の電車に乗った。そのため、発車してからしばらくは夜の景色が続く。これはこれで良いのだが、特に素晴らしかったのは夜が明けてから。

季節によって違うが、記者が乗車していた9月1日の場合、兵庫県西部を走っているあたりで日の出の時間がやってきた。午前5時30分ごろ、姫路駅を過ぎたあたりで美しい山並みが見えはじめる。その後、岡山駅を通過すると、待っているのは瀬戸内海の絶景。これらの景色をベッドに座ってたばこを吸いながら堪能できる。これ以上の幸せがあるだろうか。

個室の車窓から撮影した瀬戸内海の景色
個室の車窓から撮影した瀬戸内海の景色

共有スペースも超快適

このように、個室だけでも素晴らしい乗車体験ができるのだが、サンライズの魅力はそれだけにとどまらない。

3号車のラウンジ
3号車のラウンジ

3号車と10号車にはラウンジが設置されている。テーブルと座席がついており、広々とした空間で一緒にきた仲間とのささやかな談笑も可能だ。もちろん寝台特急なので、騒いではいけないが。ラウンジの近くには自動販売機も設置されていて、飲み物も買える。

3号車の自動販売機
3号車の自動販売機

また、ラウンジと同じ3号車と10号車にはシャワー室もあり、330円のシャワーカードを使うことで利用できる。

ただ、このシャワーカードを手に入れるのが結構難しい。カードは車内で販売されているので、記者は発車20分前から販売機に一番近い入り口(4号車のもの)に並んでいたのだが、記者の次の人が購入したところで売り切れてしまっていた。

3号車のシャワー室
3号車のシャワー室

ほかに、洗面台やトイレもある。ただ、アメニティ類は車内にないため、タオルや歯ブラシなどは各自で準備しておく必要があるので、注意したい。

高松に着くまで、約9時間30分の超長旅であったが、たばこが吸えて、設備にも恵まれていた。正直、長時間の乗車でかなりの苦痛が強いられるのではないかと思っていたが、非常に快適だったし楽しい思い出も作れた。

今や大変貴重な喫煙可能個室付のサンライズ瀬戸・出雲。四国や山陰地方にお出かけする機会のある喫煙者は移動の選択肢に入れてみるのはいかがだろうか。

もちろん、喫煙可能な個室を除いて車内は禁煙なので、吸わない人でも快適な時間を過ごせるだろう。

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