原田泰造、過去の「地元自慢」を謝罪 発端となったポスター「すみません多摩湖は東大和のものです」はなぜ作られた?市役所に聞く
「堤防の半分は東大和市さんのもので、湖はすべて東大和市さんにあると、ここで明らかにしたいと思います。ずっと東村山市にあるようなことを言って、誠に申し訳ございませんでした」
2022年8月22日放送のバラエティ番組「しゃべくり007」(日本テレビ系)で、東京・東村山市の渡部尚(わたなべ・たかし)市長と同市出身のネプチューン・原田泰造さんが謝罪した。
市長と地元出身のスター芸人がそろって番組内で謝る異例の事態を引き起こしたのは、東京・多摩湖だ。
正式名称は「村山貯水池」。1916年~1927年の間に建設された人造湖で、堤防の上は多摩湖と狭山丘陵を一望できる遊歩道になっている。桜や紅葉の名所、景勝地としても人々に愛され、「新東京百景」にも選ばれるほどだ。
原田さんはこの多摩湖について22年4月11日、5月16日放送の「しゃべくり007」で言及。どちらの回もゲスト芸能人が地元の魅力をアピールする企画で、そこでレギュラーである原田さんも
「堤防はすごいですよね、真っすぐで。両脇にはカラスがズラーっといて」(4月11日放送回)
「堤防がすっごい長くてね。こっち側は多摩湖が広がっているんですけど、振り向くと桜がずらっと満開で、そこは本当にすごいから」(5月16日放送回)
などと、多摩湖の魅力を「地元自慢」として熱弁していたのだ。しかし......。
東大和市が対抗?
8月22日の「しゃべくり007」で、渡部市長は多摩湖の堤防は半分が東村山市のものだが、あと半分と多摩湖の湖面すべては東大和市のものであると説明。そして、6月に東大和市がこんなポスターを作ったと紹介した。
「すみません多摩湖は東大和のものです」
......東大和市が多摩湖は自分たちのものだと大々的にアピールしているではないか。
これまで原田さんが番組で度々行ってきた多摩湖の堤防アピールを見て、ポスターが作られたのではないか――そんな出演者からの指摘に渡部市長は「多分そうだと思う」とコメント。そして、ポスターまで作った東大和市に、冒頭の謝罪を行ったのだ。
「しゃべくり007」は日テレのプライム帯で放送される人気番組で、影響力は計り知れない。ただ、番組内での発言に対抗する形で自治体がポスターまで作るなんてことがありえるのか。
真相を確かめるべくJタウンネット記者は8月23日、東大和市企画政策課の職員を直撃した。
「原田さんの発言の影響は......」
東大和市は関東学院大学法学部と連携し、『東大和市魅力「彩」発見ポスター制作事業』を行っている。
その第一弾として作られたのがキャッチコピー「すみません多摩湖は東大和のものです」が目を引くポスターだ。「多摩湖」をテーマに、同学牧瀬ゼミナールの3年生たちが制作した11点の中から、市長が選定したものである。
選定会は6月13日だった。この時点で原田さんは、すでに「しゃべくり007」で2回にわたって多摩湖の堤防を自慢している。となれば、テーマ選びやポスターの制作にその影響があったのではないか。記者の問いに企画政策課の職員は、こう答えた。
「直接的に原田さんの発言の影響はないのではないかと思われます。今回のポスター制作は元々、東大和市の『まち・ひと・しごと創生会議』で委員の方が『多摩湖が東大和市にあると認知されていない』と話されたことがきっかけです」
では、多摩湖が東大和市のものと認知されていないと発言した委員は何を念頭においていたのだろうか。
「委員本人ではないので、『しゃべくり007』や原田さんの影響を受けたかわかりません。故・志村けんさんの影響については話していました」(企画政策課の職員)
志村さんと多摩湖といえば、「東村山音頭」だろう。この歌の冒頭は「東村山 庭先にゃ 多摩湖」で、多摩湖=東村山というイメージがつきかねない。お化け番組と言われるほどの人気を集めた「8時だョ!全員集合」(TBS系)でも披露されていたことを考えると、原田さんの発言以前から東大和の人々は「多摩湖は自分たちのものなのに!」と思っていた可能性もある。
企画政策課の職員の話を聞く限りでは、原田さんが東大和市のポスター制作に与えた影響はそれほどなさそう。番組で市長と一緒に謝罪したのはやり過ぎだったかも?