「夜明け前に目覚めたら、ベッドから両親が消えていた。家の中を探すと、床に血だまりが出来ていて...」(岡山県・20代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Wさん(岡山県・20代男性)
Wさんはある朝、目が覚めたら一緒に寝ていたはずの両親がいないことに気がついた。
寝室を出て家の中を探していると、階段の下に血だまりが出来ているのを発見し......。

<Wさんの体験談>
まだ私が4歳ほどの幼児だった、ある朝のこと。普段は寝起きが悪いのに、その日だけ何故か早朝5時ごろに目が覚めた。
そして、同じベッドで一緒に寝ているはずの両親の姿が見えないことに気がついたのだった。
リビングに行く途中、血が...
不思議に思いつつも、寝室のあった2階からリビングのある1階へと降りようとした時、階段を降りた先に血溜まりがあるのを発見。
慌てふためき混乱しながらも、私は「血があるから、おそらく両親は病院に行ったはずだ」という推測を立てた。
そして、1人で走って病院に行くことを決意した。

パジャマのまま、玄関の鍵も開けたまま、ぶかぶかの靴を急いで履いて、私は夜明け間近の道路へ駆け出した。
もしかしたら車に轢かれていたかもしれないし、怪しい大人に誘拐されていたかもしれない。田舎なので、田んぼや用水路に落ちていたかもしれない。
今考えるとなんと無謀で危険な行為だろう。
車通りの多い交差点で、見知らぬおじさんが...
車通りがそこそこ多い交差点に差し掛かった時、一人のおじさんが私に声をかけてきた。作業服のようなものを着た中年の男性だ。
元々さほど社交的でなかった私は少し身構えながら、おじさんの質問に少ない言葉数で答えた。
どこへ行くのかと聞かれたので「病院へ」と答え、「一人で?」という質問に頷く。
そして、「お父さんとお母さんは?」と聞かれたので、
「多分病院におる」
と答えた。当時、母のお腹の中には弟がいて、私は両親と一緒に名前を考えたり、赤ちゃん用の服やおもちゃを買ったりしていた。だからおじさんに「赤ちゃんが産まれるから」とも伝えた。

そんな会話を交わした後、おじさんは警察に電話をかけた。数分するとパトカーのサイレンが聞こえ、おじさんは私を警察官へと引き継いだ。
結局、私の推測は当たっており、母親は夜中に出血して、父の車で最寄りの病院へと搬送されていた。両親は、私が起きたらお気に入りの電車のビデオでも見るだろう、連絡を受けた祖父母がそのうち家に到着して面倒を見てくれるだろう、と考えていたらしい。
しかし、その予想は見事にはずれ、一人で病院へと向かってしまったことを出産後に病院で知った母親は卒倒しかけたという。
あのおじさんがいなければ...
そのとき生まれた弟も今年大学に入学し、私も来年大学を卒業する。
早朝にパジャマ姿の子どもが一人走っているのを見て不審に思い、わざわざ私の元に歩み寄って、保護してくれたあのおじさんの顔も名前も、もう残念ながら覚えていない。
祖父がおじさんの連絡先を聞いていて、すぐにお礼の電話を入れたようだが、時が経ち、祖父も忘れてしまったらしい。そのため、私はおじさんのことについてほとんど全く知らないし、知る術もない。
ただ、おじさんがいなければ、私はどこかで命を失い、弟に会うことはできなかったかもしれない。

あの時、感謝の言葉をもっとちゃんと言えばよかった。未だに時々後悔する。4歳の私を助けてくれてありがとう。そう伝えたい。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
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