二羽の白鷺が翼を広げ、優雅に舞う 江戸時代から続く伝統芸能「津和野の鷺舞」が美しい
津和野町(つわのちょう)といえば、山陰の小京都として、旅好きな人々に人気の高い町だ。
島根県の南西部、山口県との県境に位置しており、山間の小さな盆地に広がる町並みは、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
2022年7月20日、そんな津和野町に伝わる民俗芸能について次のような動画付きのツイートが投稿され、話題となっている。
町内の「弥栄(やさか)神社」で毎年7月末に行われる祇園祭の中で奉納される、「鷺舞」と呼ばれる舞だという。二羽の白鷺が翼を広げ風雅に舞う様子を表現した古典芸能で、国の重要無形民俗文化財に指定されているらしい。
ツイッターユーザー・幣束(@goshuinchou)さんが投稿したこのツイートには、2万件を超える「いいね」(25日夕時点)が付けられ、こんな声も寄せられている。
「動画でしたが、とても素晴らしいということが、音だけでもわかりました。音だけでも伝わる、て、すごいです」
「日本はすごいな」
「スゲー練習していると思う舞と後ろ二人」
「衣装も所作も、唯一無二だ」
「津和野の鷺舞」とは、いったいどんな舞なのか。 Jタウンネット記者は投稿者の「幣束」さんと、津和野町観光協会に取材した。
応仁の乱以前から伝えられた貴重な芸能
投稿者「幣束」さんによると、動画を撮影したのは7月20日15時からだったという。
津和野には鷺舞を観るために訪れたそうだ。感想を聞くと、こう答えた。
「印象的だったのは、やはりその特徴的な翼と鷺の頭部を模した装束ですね。
この格好を江戸時代初期から、元を辿れば室町時代応仁の乱以前からやってたという所が凄いなと、粋というか、当時のセンスを思います」(「幣束」さん)
津和野町では毎年7月20日に町内11か所、27日に町内9か所で鷺舞が舞われる。
文化庁の「国指定文化財等データベース」によると、鷺舞はもともと京都の祇園会で演じられていたが、室町時代に山口の祇園会に移り、さらにそれが津和野の弥栄神社の祭礼にも伝えられたものと言われている。津和野ではいったん途絶えたが、江戸時代初期に京都の祇園会から移し伝えられ、それが今日も残っているそうだ。
他にも鷺舞が伝わった地域は数か所あるが、古来からの伝統的な姿が最もよく継承されているのが、津和野のものらしい。
今年の鷺舞神事は3年ぶり
一方、京都の鷺舞はその後途絶えてしまったという。津和野町観光協会のウェブサイト「ゆ~うにしんさい」によると1955(昭和30)年ごろに京都の八坂神社が鷺舞の復活を企画し、津和野の鷺舞を習得に来たという。
そこには「一度伝統の断たれたものの復元は到底不可能のように思われます」とあるが、結局、どうなったのだろう?
Jタウンネット記者が津和野町観光協会に取材すると、担当者は
「残念ながら八坂神社様からは、鷺舞の復活については何も伺っておりません」
と答えた。
鷺舞の構成は、舞方が鷺雌雄の2人、棒振(ぼうふり、棒を振って周りの邪気を沈めて歩く)2人、羯鼓(かんこ、鷺を追い立てるような仕草をする)2人。また囃方は、太鼓 2人、鐘2人、鼓2人、笛2人。ざっと10人ほどの演者が、古来より伝わる芸能を演ずる。
「幣束」さん投稿の動画を見ると、その完成度の高さがよく分かる。
たしかに、一度失われてしまったら復興するには相当な熱意が必要だろう。
「津和野の鷺舞」の詳細は、観光協会のウェブサイトに記されている。ぜひご一読を。
でも、できれば、7月27日、現地でナマで観てみたいものだ。
津和野町観光協会担当者もこう語った。
「3年ぶりに行われる鷺舞神事です。ぜひご覧ください」
雨天の場合は、体育館などで行われるという。また新型コロナウィルス感染症の状況により、急遽変更・中止の場合もあるとのことだ。