見れば見るほど脳がバグる...! 三次元ではありえないはずの存在を「立体化」した造形師あらわる
「不可能図形」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
二次元の絵としては描くことができるが、三次元の物体としては実現しない、三次元的な図形――つまり、立体的に見えるが、実際に立体にすることはできない絵、ということだ。オランダの画家・エッシャーが「上昇と下降」で描いた「無限階段」が分かりやすい例だろう。
そんな「不可能図形」の一種を立体化した造形作家が、ツイッター上で注目を集めている。
こちらは、兵庫県在住のフィギュア原型の制作を行う榎木ともひで(@eyewater_e)さんが2022年5月10日に投稿した写真。指先で持たれているのは、有名な不可能図形の一種「ペンローズの三角形」を、粘土を使って立体化したものだ。
三角形のどの「辺」が一番手前にあるのか把握できないような「ありえない図形」のはずなのに、リアルに存在している......! 不可思議な1枚に、ツイッター上では混乱するユーザーが続出している。
「あ、頭がバグる...」
「この三角形は見れば見るほどおや? ってなります!」
「捻りながら繋ぐような感じかなって意識は出来るんだけど、見ると認識出来ない」
一体、どうなってるの? Jタウンネット記者は11日、この作品について榎木さんに話を聞いた。
ある一定の角度から見た時だけそう見える
榎木さんが立体的な「ペンローズの三角形」を作ったのは10日、自宅でのことだ。
「普段の造形で用いている、二次元イラストから読み解いて立体化したり、限られた空間に造形を凝縮して立体的嘘で表したりする表現方法や技術をわかりやすく説明する方法はないかと考え、『騙し絵の立体化』に行き着きました」(榎木さん)
制作にあたっては、熱を加えると硬化するグレイスカルピーという粘土を使用。まだ粘土が柔らかいうちにヘラで形を作ったり、オーブンで焼いて固めてカッターで削ったり、という作業を納得いくまで繰り返したという。
そうして完成したのが同作だが、「ペンローズの三角形」を完全に立体化したというわけではない。太さが均一でまっすぐな角柱3本から成り立っているように見えるこの作品を、別の角度から見てみると......。
部分によって幅も違うし、滑らかな曲線を描いている部分もある。そう、この作品はある角度から見た時だけ「ペンローズの三角形」に見えるような構造になっているのだ。
「ある一定の角度から見るとき、全てのエッジ(縁)が直線になるようにできています。角度をずらすと直線に見えたエッジには高低差があり、その差でエッジは曲線に見えます。そのある一定の角度から見た時に『見えなくなる高低差』を利用して『ペンローズの三角形』を表現しています」(榎木さん)
短時間で作ったため「精度的には70パーセントくらいです」と語った榎木さんだが、「やりたいことはできたと思っています」と振り返る。
投稿に多くの反響が寄せられたことについては、
「一見何をやっているのか分からないことにこんなに興味を持っていただいて、本当に嬉しく思っています。これをきっかけに造形師とは実際のところ何をやっているのかに興味を持っていただければと思います」
とコメントした。