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「九十万の県民」...は、いないけど 人口減少続ける島根が「実態にそぐわない県民歌」を推すアツい理由

大山 雄也

大山 雄也

2022.04.10 17:00
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制定当時を考えれば納得

県のウェブサイトによると、「薄紫の山脈」は1951年にサンフランシスコ講和条約の締結を記念して制定されたもの。米山治氏の詩が公募により歌詞に選ばれ、曲はNHK朝の連続テレビ小説「エール」でも取り上げられた古関裕而氏が手がけている。

県民歌が制定された当時を振り返ってみると、50年の国勢調査で島根県の人口は90万人を突破。55年の同調査では92万9066人となりピークを迎えた。

50年代の人口を考えれば、歌詞に「九十万の県民の」との一節が入っていても不思議ではない。しかし、現在はどうだろう。

島根県庁
島根県庁

島根県の人口は2015年の国勢調査で69万4352人と初めて70万人を割り込み、最新の20年の調査では67万1126人とさらに減少。今となっては「九十万の県民」から約23万人ものズレが生じてしまっているのだ。

そんな状況下で、島根ではこれからも「90万」と歌い続けていくのだろうか。Jタウンネット記者が4月4日、島根県政策企画局広聴広報課の担当者に話を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

「歌詞の変更の予定はありません」

実は筆者に限らず、「九十万の県民の」という歌詞について、県民や県議会議員からも疑問の声があがったことがあるという。

実際、2016年12月6日に開かれた県議会では加藤勇議員が「よく県民歌を歌う中で、私の周りにも、本当に90万という人口が島根県におったかと、よくそういう質問が来ます」と発言。歌詞が作られた当時とは状況が変わってきていることを述べたうえで、「県民歌ができてもう60年以上もたっておりますので、県民歌を変える時期ではないかなと思っております」と意見したのだ。

しかし、現在も「薄紫の山脈」は島根の県民歌のまま。変更しないのは理由があると、担当者は言う。

「当時の90万人の県民が新しい島根を築く、との気持ちが歌詞には込められています。作詞者や当時の県民の気概を尊重したい」

歌詞制定時の県民の思いを大切にしたい――人口が減っていても、守り抜かなければならない一節なのかもしれない。

なお、島根県では「薄紫の山脈」の楽譜などを県内の中学生に配布したり、ウェブサイトに掲載したり、島根のイメージCMにこの歌を使ったりと、積極的な普及に努めている。

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