叩かれ続けて数百年、今や驚きの白さ 完全に「顔面崩壊」しちゃってるお地蔵さまがこちらです
地蔵というのは日本各地に存在しているが、その姿は様々。
たとえば、かつてJタウンネットで紹介した「ゆうれい地蔵」は、まるで骨がむき出しになっているようだった(詳しくは「まるでミイラ?東京・高輪の『ゆうれい地蔵』 なぜこんな姿になったのか、その歴史を追った」を参照)
そして、東京・足立区にも一風変わったお地蔵さまがいるらしい――そんなうわさを聞き付けたJタウンネット記者は、さっそく現地に向かった。
訪れたのは、北千住駅から徒歩10分ほどの場所にある安養院という寺。
鎌倉時代の建長年間(1249年~1256年の間)に長福寺として創建され、後に安養院に名前を変更。江戸時代には8代将軍・徳川吉宗の鷹狩の休憩所としても使われたという。
そこにある変わった地蔵は、「かんかん地蔵」と呼ばれている。
叩かれ続けてのっぺらぼう化
こちらが、その「かんかん地蔵」の姿である。
頭から肩にかけては、ほとんど真っ白。胴体の中心も白くラインが入っているような状態だ。隣に立つ「仲直し(なかよし)地蔵」と比べれば、そのヴィジュアルの特異さは一目瞭然である。
「かんかん地蔵」はなぜ、こんな姿になってしまったのか。記者が3月10日、安養院の住職に取材をしたところ、こんな話をしてくれた。
「かんかん地蔵は、叩くと『かんかん』と音が鳴ることからその名前が付けられています。ずっと叩いてもらってきたので、削れてしまっているんです」(安養院の住職)
叩くとご利益がある――そんな噂が人々に広まり、叩かれ続けてきたかんかん地蔵。1699年の建立後、一度も交換されず現在に至っているそうだ。
「音」はどれだけ違う?叩き比べてみた
さて、叩くと良い音が鳴るというが、はたして他のお地蔵様とどれだけ差があるのか気になるところだ。
そこで記者は住職に許可を得て、「かんかん地蔵」とその隣にある「仲直し地蔵」を叩いて比べてみた。
いかがだろう。先に試した「仲直し地蔵」は叩いても鈍い音しか聞こえない。しかし、「かんかん地蔵」は金属を叩いたような高い音が響いていてくるのだ。
なぜ、この地蔵だけ良い音がするのか。住職に尋ねたが、返ってきたのはこんな答え。
「かんかん地蔵は、そもそも何のために建立されたのか、なぜこれだけ良い音がするのかわかっていません。建てた人が意図的に良い音がなる石を選んだのか、たまたま叩いたら良い音がしたのか、何も伝わってないんです」
由縁もわからないまま、長年人々から叩かれ続ける――そんな「かんかん地蔵」には、ほかのお地蔵様にはない魅力があるという。
「やっぱり、かんかん地蔵は『叩く』というのが良いのかもしれません。願いを聞き届けてもらえる感じがしますからね。
それに、近所の子供たちが、よくかんかん地蔵を叩きに来てくれます。触っちゃいけないものじゃなくて、叩いて直に触れられるフレンドリーなところがあるのも魅力でしょう。そういったところが、長年にわたって地域の方に親しまれている要因ではないでしょうか」(住職)
真っ白ののっぺらぼう状態になっているのは、それだけ多くの人に願いを込めてもらっているからこそ。長年愛されてきた証、というわけだ。