車窓から見えるアイツは何者? 幼いころから見続けてきた「後ろ姿」の真正面に、立ってきました
突然だが、読者の皆さんはこの後ろ姿を見たことがあるだろうか。
こちらは、JR京浜東北線の南浦和駅から蕨駅の間、ちょうど浦和実業高校(さいたま市)付近に差し掛かったあたりで車窓から見えるゴリラだ。
京浜東北線だけでなく、並走する宇都宮線や高崎線に乗っていて車窓からこのゴリラを見た人もいるのではないだろうか。
宇都宮線ユーザーの筆者は幼いころから電車に乗るたび、両親から「ここでゴリラが見えるんだよ」と教えられ、後ろ姿だけは幾度となく見てきた。今でも通勤途中に見てしまうときがあるのだが、ある時思ってしまった。
――あのゴリラは、どんな顔をしているのだろう。
正面から見たこともなければ、どんな場所に立っているのかも知らない。埼玉県民として一度くらいは行っておいた方が良いのではないか。
というわけ2022年3月10日、筆者はあのゴリラに会うため、埼玉・川口市に向かった。
あのゴリラに名前があったなんて......
あのゴリラが立っていたのは、東京外環自動車道の高架下にある公園。その名も「ゴリラ公園」だ。やっぱり電車から見えるあいつがシンボルらしい。
やってきたからには、まずやらねばならないことがある。小さいころからずっと気になり続けたあいつ。真正面からそのツラを拝んでやらなければ......。
口を大きく開け、左腕で時計を曲げている威厳たっぷりの姿がそこにはあった。時間が非常に見にくくなっていることが、そんなことお構いなしである。
これこそが、長年気になり続けてきたゴリラの全容。思わず感動してしまった。
そして、ここで筆者はある衝撃の事実を目の当たりにした。
モニュメントの右下に設置されているゴリラデザインの看板に目をやると、そこには、
「ビックジョー」
と書かれている。なんと、あいつにはちゃんと名前が付けられているのだ!
ビッグジョーの周囲に謎のダート道
せっかくなので、園内を散策してみた。公園なのでちゃんと子供が遊べる遊具もある。しかし筆者が気になったのは、こちらのスペース。
ビッグジョーが設置されている周囲を見渡すと、起伏のあるダート道があり、さらにはスタート台らしきものまである。
何のために設置されているのか。
改めて、案内板を確認すると......
東京五輪で話題のあの競技でした
昨年の東京五輪でも話題になったBMXのコースだった。ゴリラ公園はライダーたちにかなり優しいようで、自転車の洗い場まで設置されている。
ビッグジョーだけでなく、BMXコースまであるなんて、ゴリラ公園はかなり特殊な場所と言えそうだ。
なぜ、ゴリラ公園はこんなにも独特なのか。Jタウンネット記者が3月17日、川口市公園課管理係の担当者に聞いたところ、ビッグジョーやBMXのコースは1995年の開園当初から存在しているという。
「住民参加のまちづくりをコンセプトに市民参加型のワークショップにより公園整備計画が始まりました。
ゴリラが公園のモチーフになっているのも、BMXのコースが設置されているのも、ワークショップに参加した市民のアイデアです」(川口市公園課管理係の担当者)
ワークショップに参加していた市民に中々のアイデアマンがいたようだ。そして、この閃きを採用した川口市の勇気もすごい......。
電車に乗る人々の目を引く公園は川口市と市民の知恵の結晶なのかもしれない。