誰も助けてはくれない――雪道で動けなくなった1人の教師は投げやりになり「それなら、皆困ればいい」
後ろに連なる車は皆、知らんぷりです――。
青森県在住のHさん(50代女性)から10年程前の体験談がJタウンネットに寄せられた。
毎日仕事帰りに入院中の父親の元へ、車で通っていたHさん。その日は雪のせいで路面の状態が悪く、道は渋滞していた。
そのため発進と停車の繰り返し。すると不幸にも車が動かなくなってしまったという。
心身共にヘトヘトなのに......。家庭の事情に加えて、困っているのに誰も手助けしてくれないという状況が重なり、投げやりな気持ちになってしまったそうだ。
Hさんの車が動かないと、後ろだって動けない。でも、助けてくれない人達なんて「困ればいい」。
そう思っていた彼女に、窓の外から声をかけた若者がいた。
「心身共にへとへとなのに、誰も助けてくれない」
今から9年前の冬、父が癌で余命数ヶ月と宣告され、入院していた時のことです。
私は毎日、仕事が終わってから父のもとへと通っていました。
その日は日中の降雪で路面状況が非常に悪く、まるでモーグル会場のよう。皆のろのろ運転で、渋滞していました。
私の車は四輪駆動ではないので、停車する時には慎重に場所を選ばないと発進できなくなってしまいます。
ところが、渋滞のせいで思いも寄らないところで停車してしまい、前進もバックもできなくなってしまいました。
いろいろ試してみても動けません。氷の塊になってしまった雪はどけることもできません。
後ろに連なる車は皆、知らんぷりです。
日々、病状が悪化して苦しむ父。仕事の後、吹雪の中を30キロ走って病院へと向かう毎日。心身共にへとへとなのに、誰も助けてくれない。私が動かなければ後続車だって動けないのに。
――それなら、皆困ればいいでしょ。私は、投げやりな気持ちになっていました。
「ぼく、横をずっと歩いてついていきますよ!」
その時、「ぼく、押しますよ!」という声が聞こえました。
見ると学生さんらしき若い男性が私に話しかけているのです。
「窓を開けてください、声をかけますから、それに合わせてアクセル踏んでくださいね!」
それだけではありません。
「この路面だとまた動けなくなるかもしれないから、ぼく、横をずっと歩いてついていきますよ!」
何度も声をかけながら一生懸命押してくれたおかげで、私の車はやっとのことで脱出できました。そして彼はそのあとも、車の横をずっと一緒に歩いてくれました。
へとへとだった私の心に、彼の優しさがどれだけありがたく沁み入ったことか。
それなのに、ようやくスムーズに車が流れ始めた時、停車することを恐れた私は、窓を全開にしてお礼の言葉を叫ぶのが精一杯でした。
おそらく地元の大学の学生さんだったと思います。黒っぽいダウンにニットキャップのお兄さん、あの時は本当にありがとうございました。
私は教員で、折に触れ生徒たちにあなたのことを話しています。生徒たちもあなたのようになりたいと言っていますよ!
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてく れた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
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