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「自分だけの旅行ガイド」で満喫する地域の魅力 飛騨高山の新ホテルで「サスティナブルトラベル」体験してみた!

大久保 歩

大久保 歩

2021.08.13 17:00
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通称「北アルプス」として知られる飛騨山脈を有する岐阜県高山市に、斬新なコンセプトのホテルがオープンした。

その名は、「ホテルアラウンド高山」。目指すのは「サスティナブルトラベル」だ。

ホテルアラウンド高山(画像はラ・クレタより)

これまでの主流であった「マスツーリズム」――大勢の旅行客が、定番の観光スポットを順路どおりに巡るというやり方は、大規模の観光施設ばかりが潤い、地域の小さな魅力は注目されにくいという欠点があった。

それに対して、ホテルアラウンド高山は、少人数での旅行を中心に、ひとりひとりが、観光地やそれ以外の魅力的な場所など好きなところを自由に選択して訪れるというスタイルを提案している。

コンセプトは、「旅人と、地域のGOOD LOCALな出会いを紡ぐ」。旅の中で、ホテルアラウンド高山は単なる宿ではなく、「ハブ」(拠点)として機能する。

飛騨の木で作られた「さるぼぼ」のタワー(館内にて。編集部撮影、以下同)

この新ホテルのウワサを聞きつけたJタウンネット記者は、2021年7月26日から27日にかけて、30日のオープンに先駆けた1泊2日の試泊会に参加してきた。

地元の人たちに聞いたおすすめスポットを網羅

「サスティナブルに地域を楽しむ、回遊拠点型ホテル」を目指す同ホテルの、その思想が最も色濃く反映されているのが、1階にある「GOOD LOCAL SQUARE」だ。

高山市の見どころを網羅したマップ

ここに来さえすれば、飛騨高山で自分が訪れたい場所が見つかる。いわば宿泊客向けの「旅行情報ステーション」である。

まず、壁に描かれた「GOOD LOCAL MAP」を見て、気になる場所をチェック。高山市内のおすすめスポットが一覧になっている。

特におすすめの場所については、すぐそばにある「GOOD LOCAL 100」というボードを見れば、さらに詳しく知ることができる。

カードは何枚でも自由に持ち帰れる

ホテルアラウンド高山「地域編集室」の担当者が、1年以上かけ地元の人々の話を実際に聞いて作成したカードが100枚、並んでいる。観光客に本当に訪れてほしい、地域の魅力が光るスポットを厳選し、ひとつひとつを解説したものだ。

旅行ガイド本を読んだり地名で検索したりするだけでは見つからない、意外な場所も網羅されていて、宿泊客はこのカードを自由に持っていくことができる。

もし、目的地をほとんど決めずにホテルを訪れても、「GOOD LOCAL SQUARE」に立ち寄ればあなただけの目的地が見つかるはずだ。

GOOD LOCALな「食」も満喫

さらに、旅の醍醐味の1つ、ホテルでの食事もすばらしい。地元のおいしい食材をふんだんに使った料理が、次々に運ばれてきた。

飲み物は別に注文

夕食は、「飛騨牛 陶板焼き ディナーコース」。

「地元野菜の旬菜サラダ」や「熟成マグロのカルパッチョ」などに続いて、メインである「飛騨牛もも肉 陶板焼き」が登場した。

好みの焼き加減に自分で調節できる

ミディアムに焼き上がった頃あいで、スタッフおすすめの薬味・ワサビをつけていただく。

ワサビの豊かな風味が鼻を抜け、お肉本来の旨みを引き立ててくれて......しっかりめの歯ごたえも、ご飯との相性ばつぐんだった。

朝食は、「飛騨高山 四重玉手箱」。

箱状に重なった四角い皿を広げると、彩り鮮やかな料理が登場する。

左上が一の膳、右上が二の膳、左下が三の膳、右下が四の膳

一の膳は「焼き鮭の朴葉味噌添え」、二の膳は「飛騨高山惣菜のスペシャリテ」、三の膳は「本日の彩り前菜盛り合わせ」、そして四の膳が「地元野菜のパワーサラダ」。

ホテルの朝食によくあるビュッフェ形式にしていないのは、フードロス削減のためだという。

朝からかなりの量......と思いきや、野菜中心のさっぱりしたメニューが中心で、案外ぱくぱく食べられてしまう。味付けもしつこくなく、素材そのもののおいしさを存分に味わうことができた。

アイスに見えるが、実はポテトサラダ

「玉手箱」が運ばれてくるまでの間に提供された、漬物を刻んで加えたポテトサラダもユニーク。

なんと、アイスクリームのようにワッフルコーンに載っているのだ。最初にアイス......?と思ったら、ポテトサラダで度肝を抜かれた。

そして、客室でも「GOOD LOCAL」な備品がところどころで存在感を発揮する。

客室の内装には、飛騨の森で採取した廃材も活用

たとえば、品の良いイスや机には、飛騨のケヤキが木材として使われている。ベッドサイドやゴミ箱、グラスを置くコースターに至るまで木製で統一。これらには、飛騨の森で採集された木のうち、形が曲がっているなどの理由で廃材となるはずだったものも活用されている。

だから、部屋全体から木のあたたかみが感じられるのだ。

飛騨のケヤキで作られた家具。極上の座り心地!

そんな最高の部屋で睡眠を満喫し、翌日は、廃線後の鉄路を自転車で走るアクティビティ「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」へ向かった。ここも「GOOD LOCAL 100」に選ばれた1つだ。

ここでまさかあのような恐怖体験が待っているとは、あのときは夢にも思っていなかった――。

絶景?絶叫??コース

「GOOD LOCAL 100」のカードにもなっている

「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」(ガッタンゴー)は、「GOOD LOCAL 100」の中にも入っている。カードでは、以下のように説明されている。

「高架あり、トンネルありのアドベンチャーレイルロードをペダル漕ぎ。線路の上を行く不思議な自転車で、道路とは違う景色を」
トンネルの中もガタゴト進む

コースは「渓谷コース」と「まちなかコース」の2種類があり、この日は前者を行くことに。

線路の上には専用のメタルフレームが付けられていて、その上に、電動自転車が固定されている。線路の2本のレールに一台ずつの自転車を、2人で漕いでいく形だ(「まちなかコース」には4人で漕ぐものなどもある)。

後輪が直接レールに接しているのでペダルをこぐと前に進み、継ぎ目の部分に差し掛かるとガタゴトと音がして、振動が伝わってくる。

実際に参加するまで、記者はこれを軽い運動程度の気軽なアクティビティと思っていた。しかし、実際は素晴らしい景色といっしょに大きなスリルにさらされる、とんでもない時間となったのだ。

乗る前にまず、ヘルメットと命綱を装着する。この日は雨が降っていたので、現地で販売しているレインコート(税込150円)も着ることに。このころには「ずいぶん大げさだな......」と、だんだん不安になり始めていた。

ちなみに、公式サイトでは「渓谷コース」について次のように紹介されている。

「大きな橋や鉄橋があり、スリルだけは満点です。基本的に大人ばかりの方におすすめの絶景?絶叫??コースです」

絶景への感動を上回るスリル

ヘルメット、命綱、レインコートの完全装備

2人1組のアクティビティのため、現地で知り合った女性といっしょに乗り込む。スタート地点の注意書きを見て、さらに不安は加速した。

「折り返しまでは降りない(休憩は折り返し地点で)
コースの途中で止まらない」
「コースは、片道3.3キロ・往復6.6キロ」

なんと、3.3キロメートルもの距離を止まらずにこぎ続けなければいけないらしい。あまり体力に自信のない記者。まあ電動自転車だし、そこまで必死にこがなくても進むだろう。大丈夫なはず......。

しかしこれが、想像以上にハードだった。

電動とはいえ、行きは上り。ペダルがずいぶん重く感じる。しかし、それどころではない恐怖体験が、このすぐ後に待ち受けていた。

線路はずいぶん高いところに敷かれており、そこから川を見下ろしながら走るコースだったのだ。

断崖絶壁とは言わないまでも、線路の横に柵などはないため、もしも自転車がコースから外れたら下へまっさかさま......と、怖い想像をしてしまう。

しかも、途中には線路がやや横に傾いているように感じる箇所があり、そこで体も傾くため、そのまま転げ落ちそうで非常にスリル満点なのだ。もちろん、自転車はしっかりと線路に固定されているので、その心配はないのだが......。

トンネルの中にベンチがあり休憩できる。ここにたどり着くまで降りられない...

そして、途中には真っ暗なトンネルの中を進む場面も。

自転車のライトを点けて進むのだが、明かりはだいぶ小さく、頼りない。前の自転車と追突しないように、慎重にゆっくりこいでいく。

トンネルを出たときの開放感はひとしおだった。

もちろん、高いところから見下ろす透き通った川も絶景である。けれどそれを楽しむ心の余裕は一切ない......。

休憩なしで3.3キロを進む間、隣でいっしょに漕いでいる女性は、勢いよく流れる川や水の美しさに何度も歓声をあげていた。

記者がガチガチに固まっているのを見て心配してくれたのか、「見てください! きれいですよ!」と声もかけてくれたのだが、高さが怖くてじっくり景色を堪能できなかったのが悔やまれる。

高いところが苦手でない人なら、運動しながら最高の景色を味わえるはずだ。ぜひとも乗ってみてほしい。

他にも、選ばれた中から伝統工芸「飛騨春慶塗(ひだしゅんけいぬり)」のアクセサリーを販売している地元のお店を訪ねたり、江戸時代の古い町並みが残るエリアで、立ち並ぶお店の「飛騨牛にぎり」を食べ比べてみたり、高山の色んな魅力をホテルから見つけに行くことができた。

ホテルアラウンド高山は、まさに名前のとおり、ただの宿ではなくその「周辺」の魅力へと足を運ばせてくれる「ハブ」だった。

よくある観光地を巡るだけでは味わえない、「GOOD LOCAL」を満喫する旅が新たな主流になる日も、きっと遠くないだろう。

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