幼虫を守るミツバチたちのために... 神社の手水舎に設置された、ちいさな「専用水飲み処」がやさしい
7月も半ばを過ぎた。東京都ではここ数日最高気温が30度を上回る真夏日が続いており、今年の夏はかなりの猛暑となりそうだ。
熱中症対策にはこまめな水分補給が大切だが、茨城県のある神社では人間ではない「ある生き物」のための専用の水飲み場が設置されている。
神社の手水場の縁に、半分に切って水で満たされた竹が置かれている。竹の中には緑色の苔の塊のようなもの。そこに群がっているのは、ミツバチだ。
そう。これはミツバチたちの為に用意された、専用の水飲み場なのだ。赤い旗には「ミツバチ御一行様専用水飲み処」と書かれている。
水分を吸った苔の表面にくっついているミツバチたち。なんだか可愛らしい光景だ。
この写真に対し、ツイッター上では、
「やさしいせかい」
「すごく素敵ですね! 正直蜂は怖いですが、こんな風に案内書きがあると騒がず大人しく見守ろうという気になれます」
「蜂ってだけで、すぐに『駆除』と言われる御時世、なんと優しいお宮さんなのでしょう」
といった声が寄せられている。
話題になっているのは、茨城県常総市にある一言主(ひとことぬし)神社のツイッター公式アカウントが2021年7月21日に投稿した写真。Jタウンネット記者は21日、神社に取材した。
数年ぶりに「御来社」
取材に応じたのは、同神社の禰宜(ねぎ・神社における神職の職名の1つで、宮司の補佐をする立場)である大塚裕一(ひろかず)さん。
ミツバチのための水飲み場は一週間ほど前に神社の手水舎に設置したものだという。
「暑くなると、ミツバチたちは巣の中の温度を下げて幼虫を守るために水を運ぶ習性があり、神社の近所にいるミツバチたちもその習性から手水舎に水を求めてやってくるんです。
ただ、基本的にはとても大人しく危険の少ないハチとはいえ、やはりあちこち飛び回っていると参拝客の人たちも怖がってしまうので、どこか一か所に集めた方が良いだろうということでこの水飲み場を設置しました」(大塚さん)
大塚さんによると、ミツバチ用の水飲み場を初めて設置したのは、5年ほど前のこと。
ここ数年はミツバチたちが神社にやってこなくなり設置していなかったのだが、今年の夏になって久々に「御来社」してきたので、また設置することにしたそうだ。
水飲み場は、竹を半分に切ったものに砂利を詰め、その上に苔を置いて作っている。
苔を置いているのは、あまり水位が深いとミツバチが溺れてしまうので、それを避けて水を飲みやすいようにするためだ。
数年ぶりにやってきたミツバチたちについて大塚さんは、
「数年ぶりにミツバチたちがやってきてくれて嬉しいです。
ただ、現状だと水を飲みに来るミツバチたちがかなり『密』になってしまっているので、彼らのソーシャルディスタンスも保つために、もう少し拡張しようかと思っています」
と語った。