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「漁師さんに止められました」 室蘭水族館の「とりあえず食べてみる」飼育員に反響→本人に話を聞いた

松葉 純一

松葉 純一

2021.05.17 21:00
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2021年5月17日、北海道にも新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令された。それに伴い、室蘭市にある室蘭水族館も、5月31日まで臨時休館となった。

この室蘭水族館、実はネット上で話題となっていた。それは、5月6日に投稿された次のようなツイートが発端だった。

ツイートに添えられた写真は、水族館に展示されている魚類の説明板のようだ。よく見ると、通常の解説の他に、「旨いレベル」という項目があるではないか。いったいこれは?

投稿した小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんは、「室蘭水族館、小さな市営ながら飼育員に一人だけ『とりあえず食って味を確かめようとする』とか『クラゲに触って毒を確かめる』を基本ムーブにしてるパワータイプの人がいて笑顔なれるよ」とコメント。

このツイートには約1万件の「いいね」が付けられている。

ツイッターユーザーからは「食べて大丈夫なんですかねそれ」「無事を願う」などと心配する声も多数届いているようだが、はたして......?

Jタウンネット記者は、投稿者の小林こっぴーさんと室蘭水族館担当者に詳しい話を聞いてみた。

食べてみようと思ったら獲ってくれた漁師さんに止められた?

小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより
小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより

Jタウンネット記者は、5月11日、まず投稿者・小林こっぴーさんに聞いた。

「4月30日、ちょうど仕事が休みだったのでふらっと立ち寄りました。写真は、そのとき撮影しました。
生まれたときから北海道室蘭市在住で、室蘭水族館には毎年営業期間になると何度か足を運びます。水族館の周囲にはソ、フトクリームが美味しい白鳥大橋記念館や、銭湯もあるので便利です」(小林こっぴーさん)

展示の案内板に、「旨いレベル」という項目があることに気が付いたのは、そのときだったようだ。そこには、「魚類飼育員高山の個人的感想」と記されている。

ハゲナマコの仲間(画像提供:室蘭水族館)
ハゲナマコの仲間(画像提供:室蘭水族館)

「そもそも『旨いレベル』の記載が高山さんの主観すぎて面白過ぎますね。ものによっては旨いレベルが低かったり、忌憚のない感想が書かれたりするので必見です」と、 投稿者・小林こっぴーさんは語る。

「とくに印象に残ったといえば、やはりハゲナマコの仲間とセトモノイソギンチャクの仲間につけられた旨いレベル『食べてみようと思ったら獲ってくれた漁師さんに止められた』です。
つまり、止める人がいなければ飼育員の高山さんは間違いなくこの二匹を食べていたことになりますよね」(小林こっぴーさん)

たしかに魚類飼育員高山さんの体を張った探究心は興味深いし、微笑ましくもある。

「どのようにして味を確かめているのか気になります。高山さんにはくれぐれも無茶をしてお腹を壊したり、クラゲの毒にやられたりしないようご自愛していただきたいです」と、小林こっぴーさんは話した。

そこでJタウンネット記者は、室蘭水族館にメールで取材。

5月15日、魚類飼育員の高山佳代さんから回答が返ってきた。

小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより
小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより

――「旨いレベル」は、いつ頃から、どんなきっかけ、狙いで企画したのだろうか?

「仕事として本格的に始動したのは、昨年冬頃からです。子供のころから色々な魚などを食べている実績はありました。
以前からご来館されたお客様から『食べられるの?』『どうやって食べたら美味しいの?』などの質問を多数受けたことがきっかけです。地元で獲れる馴染みのない魚や、未利用魚にも美味しいものがあることを知ってもらい、興味を持ってもらいたかったからです」(魚類飼育員・高山さん)

漁師さんからは「そんなの食うのか!?」と苦笑いされることや引かれることもあるそうだが、高山さんは負けない。来館者に魚類について興味を持ってもらいたいという使命感があるからだ。

――漁師さんから、止められたこともあるそうだが?

「ハゲナマコやセトモノイソギャクのことですね。
『ちょっと食べてみようかな』と聞いたところ、『え...食べれるんですか?』と言われ、『たぶん食べちゃだめな気がするんですが、どんな感じなのか気になりまして!』と言ったところ、『あれは食べれるかわかってからの試食を勧めます!!』と止められました。
現在未食ですが、調査の上、いずれチャレンジしたいです!」(魚類飼育員・高山さん)
小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより
小林こっぴー(@kobayashi_powao)さんのツイートより

今までどのくらい食べた実績があるのか? と聞くと、「ちゃんと数えたことはないのですが、100種類以上は実食してるんじゃないかと思います」と、高山さんは答えた。

もっとも印象に残ったものはと? 聞くと、高山さんは「フサギンボ」と「アオビクニン」を挙げた。その理由は、説明を読んでほしいとのこと。

●フサギンボ
旨いレベル(魚類飼育員高山の個人的感想)★★★
見た目はウル〇ラ怪獣みたいで捌くのためらうかも。見た目とは裏腹にふわふわした癖のない上品な白身で天ぷらと煮付けにしたらなんと大変美味な魚だった。


●アオビクニン
旨いレベル(魚類飼育員高山の個人的感想)★
潮汁で食べてみた。出汁ははるか遠くにわずかに感じるエビの風味。身と皮は姿の通りでろんでろん。自分が何を食べているのかわからなくなる触感。

読んでいると、なんとも美味しそうで、思わず食べたくなってきたのは、Jタウンネット記者だけではあるまい。

フサギンボ(Wikipedia commonsより、Daiju Azumaさん投稿)
フサギンボ(Wikipedia commonsより、Daiju Azumaさん投稿

SNSで話題になっていることについては、魚類飼育員・高山さんはこうコメントした。

「まさかの事態に大変驚いています! 普通だと思ってやっていたことが1万いいねをいただけるとは本当にありがとうございます!
たくさんの方に市立室蘭水族館を知っていただけるきっかけが出来ました! これからも応援していただけると嬉しいです」

室蘭水族館に行ってみたいと思った読者もいるだろうが、冒頭にお断りしたように、緊急事態宣言が発令され、室蘭水族館も5月31日まで臨時休館である。コロナ禍が収束したら、「北海道最古の市立室蘭水族館にぜひ遊びに来てください」とのこと。

ちなみに、室蘭水族館のシンボルフィッシュは、大きなアブラボウズだ。

室蘭水族館のシンボルフィッシュ、アブラボウズ(画像提供:室蘭水族館)
室蘭水族館のシンボルフィッシュ、アブラボウズ(画像提供:室蘭水族館)

アブラボウズは深海魚の一種で、成長すると、体長が約2メートル、体重90キロに達する大型魚。体全体に多くの脂肪分(油)を含んでいることが、名前の由来だという。脂がのった美味しい魚で、高級魚として重宝されているそうだ。

「旨いレベル」は、たぶん★★★だろう(知らんけど)。

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