軒先に「ダミーハチの巣」をつるすとハチが寄り付かなくなるってホント? 専門家に聞いた
科学的根拠はあるの?
取材に応じた同センターの研究員は、「自身もネットでこのような疑似巣を見かけたことがあり、面白いと思った記憶がある」とした上で、「しかし本当に効果があるかどうか、科学的にはよく分かっていないと思います」と述べた。
ダミーの巣に本当に効果があるのかを科学的に検証するには、きちんとした実験を行わなければならないと同研究員。
具体的には、まず似たような構造物のセット(例えば同じ構造をした2軒の家)を複数セット用意して、それぞれのセットで一方にだけ疑似巣をとりつけ、その効果を観察するというもの。ただ、統計的な有意差が得られることを期待して行う実験なので、「相当数のセットを用意する必要があります」。
「そのような実験を行って、例えばキイロスズメバチの営巣数には有意差は見られないけれど、キアシナガバチの営巣数は疑似巣をぶら下げた場合にぶら下げない場合と比べて有意に数が少ないという結果が得られたら、『キアシナガバチに効果がある可能性』があるといえます。
統計的な有意差を得るためには、疑似巣なしの実験区のほうにある程度の数の巣が作られる必要があり、そこがこの実験の大変なところになります」(同研究員)
ただし、たとえある特定の種(例えばキアシナガバチ)のハチの営巣数に有意差が観察されても、その効果は疑似巣だからではなく、単に営巣の邪魔になりそうなものがぶら下がっていたからハチが嫌がっただけの可能性もあるという。
そのため、次の実験として疑似巣と疑似巣ではないもの(例えば立方体、直方体、正四面体などで、どう見ても巣には見えないもの)をぶら下げてみて、疑似巣の場合に限ってキアシナガバチの営巣数が統計的に有意に少ないことを確認する必要があるとのことだ。
「そこまでデータがそろえば、『疑似巣にキアシナガバチの営巣抑止効果があることが示唆された』ということができます。(ダミーのハチの巣に効果があるという)科学的な根拠としては、最低でもある特定の種のハチに対して統計的な有意差があり、その効果が疑似巣に特異的である、ということを示した観察結果が要求されます」(同研究員)
つまり、「ダミーのハチの巣を設置するとハチの巣が寄り付かない」というのは、まだ科学的根拠に乏しく、はっきりと断定することはできない事象だということだろう。
一方で、研究員いわく「疑似巣に他のハチを寄せ付けない効果がある可能性はあると思いますし、大変興味深いところです」。
毎年ハチがやってきて困っている、という人は一度試してみてもいいかもしれない。
ただ、繰り返しになるが「効果がある」とは断言できないので、それでもハチが来てしまったときは、素直に駆除をお願いしよう。