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軒先に「ダミーハチの巣」をつるすとハチが寄り付かなくなるってホント? 専門家に聞いた

福田 週人

福田 週人

2021.04.12 21:00
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自宅や仕事場の近くにハチの巣ができてしまった──早急に対処するべき由々しき事態だ。

読者の皆さんの中にも、似たような不幸に見舞われた経験がある人もいるかもしれない。

万が一ハチの巣ができてしまった場合は、下手に近づかずに駆除業者に連絡して駆除してもらうのが、一番安全で確実な方法だ。ただ、そもそもハチの巣ができないようにする方法があれば、それに越したことはないだろう。

今回、そんなハチの巣問題の一つの解決策と言える......かもしれない方法が、ツイッターで話題になっている。それが、こちらだ。

ハチの巣にはハチの巣をぶつけるんだよ(画像はニノマエハジメ/u3@ninohajimさんのツイートより)
ハチの巣にはハチの巣をぶつけるんだよ(画像はニノマエハジメ/u3@ninohajimさんのツイートより)

写真にあるのは、軒先に吊るされた黄土色の楕円形の物体。外側は紙テープのようなものでぐるぐる巻きにされている。

こちらは、ハチの巣に見立てた「ダミーのハチの巣」。畑の真ん中にカカシを立てて鳥よけにする要領で、予めダミーのハチの巣を設置しておくことで新たにハチの巣ができるのを防ごう、といった作戦のようだ。

設置後、スズメバチの姿は...

話題になっているのは、ツイッターユーザーのニノマエハジメ/u3(@ninohajim)さんが2021年4月6日に投稿した写真。Jタウンネット記者は9日、投稿主のニノマエさんに話を聞いた。

投稿にあった写真は6日、職場の裏口で撮影したもの。ダミーのハチの巣を設置するに至った経緯については、

「職場の女性陣が『蜂が出たーーー!』と毎回呼びつけるので未然にそれを防ぐ方法を探し、Twitterで見かけたやり方を試してみました。
(対策する)蜂は一応スズメバチを想定してます。他のにも効くのかはよくわかりませんが、設置してからは見かけなくなりました」

と明かした。

ダミーの素材は厚紙と新聞紙と針金のハンガー。ハンガーで骨格を作って張り子のようにして、中に新聞紙を詰め込んでいる。ハンガーのフックはそのままにしてあるので、どこにでも移動させられるということだ。

「今のところ蜂をみかけなくなったので効いてるのかもしれませんね。もう少し暖かくなるとアシナガバチとかも出てくるので、どうなるか楽しみです」(ニノマエさん)

こちらのダミーに対し、ツイッター上では、

「平和的解決策だ」
「いいこと聞いた!そろそろ飛び始める季節だし、やってみよ!」
「これ、思いつかなんだな・・試してみる価値おおありです」

といった声が寄せられている。

ダミーの巣を設置することでハチが寄り付かなくなる。これが本当ならかなり画期的な対策法だが、実際のところ効果はあるのだろうか。

Jタウンネット記者は12日、ミツバチやその他ハチ類に関する研究を行っている、玉川大学(東京都町田市)の「ミツバチ科学研究センター」にも取材した。

科学的根拠はあるの?

取材に応じた同センターの研究員は、「自身もネットでこのような疑似巣を見かけたことがあり、面白いと思った記憶がある」とした上で、「しかし本当に効果があるかどうか、科学的にはよく分かっていないと思います」と述べた。

ダミーの巣に本当に効果があるのかを科学的に検証するには、きちんとした実験を行わなければならないと同研究員。

具体的には、まず似たような構造物のセット(例えば同じ構造をした2軒の家)を複数セット用意して、それぞれのセットで一方にだけ疑似巣をとりつけ、その効果を観察するというもの。ただ、統計的な有意差が得られることを期待して行う実験なので、「相当数のセットを用意する必要があります」。

スズメバチの巣(画像はイメージ)
スズメバチの巣(画像はイメージ)
「そのような実験を行って、例えばキイロスズメバチの営巣数には有意差は見られないけれど、キアシナガバチの営巣数は疑似巣をぶら下げた場合にぶら下げない場合と比べて有意に数が少ないという結果が得られたら、『キアシナガバチに効果がある可能性』があるといえます。
統計的な有意差を得るためには、疑似巣なしの実験区のほうにある程度の数の巣が作られる必要があり、そこがこの実験の大変なところになります」(同研究員)

ただし、たとえある特定の種(例えばキアシナガバチ)のハチの営巣数に有意差が観察されても、その効果は疑似巣だからではなく、単に営巣の邪魔になりそうなものがぶら下がっていたからハチが嫌がっただけの可能性もあるという。

そのため、次の実験として疑似巣と疑似巣ではないもの(例えば立方体、直方体、正四面体などで、どう見ても巣には見えないもの)をぶら下げてみて、疑似巣の場合に限ってキアシナガバチの営巣数が統計的に有意に少ないことを確認する必要があるとのことだ。

アシナガバチの巣(画像はイメージ)
アシナガバチの巣(画像はイメージ)
「そこまでデータがそろえば、『疑似巣にキアシナガバチの営巣抑止効果があることが示唆された』ということができます。(ダミーのハチの巣に効果があるという)科学的な根拠としては、最低でもある特定の種のハチに対して統計的な有意差があり、その効果が疑似巣に特異的である、ということを示した観察結果が要求されます」(同研究員)

つまり、「ダミーのハチの巣を設置するとハチの巣が寄り付かない」というのは、まだ科学的根拠に乏しく、はっきりと断定することはできない事象だということだろう。

一方で、研究員いわく「疑似巣に他のハチを寄せ付けない効果がある可能性はあると思いますし、大変興味深いところです」。

毎年ハチがやってきて困っている、という人は一度試してみてもいいかもしれない。

ただ、繰り返しになるが「効果がある」とは断言できないので、それでもハチが来てしまったときは、素直に駆除をお願いしよう。

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