甘みも、香りも、全然違う 北海道で一番うまいコメ「東川米」を知っていますか?
数十年前に降った雪が、美しくおいしい地下水に
先述の通り、東川町には上水道がない。田んぼに引く水も、家庭で使う水も、地下に流れる大雪山からの雪解け水を利用している。
数十年前に大雪山に降った雪が、地中に染み込み、自然という天然のフィルターを通して濾過され、細菌の汚染がほとんどない地下水となっているのだという。
その雪解け水が湧き出す源泉が、大雪山国立公園にある「大雪旭岳源水」だ。
苔むした岩の間から、澄んだ水がこんこんと流れ出ている。この水を汲むために、遠方から訪れる人もいるという。
この源水のほど近くに、「大雪水資源保全センター」がある。
災害時に確実に水の提供ができるように作られた工場で、湧き出る水を工場に引き、ボトリングしている。自然のフィルターで濾過された源水の水をさらに三段階のフィルターを使用して濾過し、熱処理はしないことで源水の美味しさをそのままペットボトルに詰めているという。
同社代表取締役社長の濱本伸一郎(はまもと・しんいちろう)さんと捧範行(ささげ・のりゆき)専務に大雪旭岳源水がどんな水なのか教えてもらった。
「大雪山に降る膨大な雪の雪解け水が染み込んで、そして30年とも50年とも言われる歳月を経て湧き出ています。
(源水では)1分間で4600リットル、1日で6600トンという物凄い量が湧き出ているんです。水温は年間を通じてほぼ7度で、どんなに雨が降ろうと、どんなに渇水だろうと、関係なく水が出ています。
それだけ深いところから雪解け水が湧き出しているということです」
湧き出た水は、人間の体液とほぼ同じpH7.4の弱アルカリ性。天然ミネラル分が豊富で、特にカルシウムとマグネシウムのバランスが2対1という飲用に理想的な濃度比率になっているそうだ。
「硬度は94(単位はミリグラム/リットル)。ちょっと硬めですけど、世界には1100を超えるものもあります。そういう高度になると、飲みにくいとか、お出汁が出にくいとかいうこともありますけど、硬度は94くらいで『これ硬いですね』と分かる人はほとんどいない。
適度なミネラルバランスの水です」
ちなみにフランス産のミネラルウォーター「エビアン」は硬度304、「コントレックス」は1468だ。硬水に苦手意識がある筆者も、大雪旭岳源水の水を飲んでみたところ、確かに硬さはほとんど気にならず、飲みやすい。ごくごく飲むことができた。
ちなみに、大雪旭岳源水は環境省が2008年に制定した「平成の水百選」に選ばれており、同社がボトリングした水は2015年に同省が行った「『名水百選』選抜総選挙」の「おいしさ部門」で3位になっている。
「この水が、そのまま東川の町に行っている。お米もそりゃおいしかろうと思います」
と濱本社長。そう、東川では田んぼに引くのも、蛇口から出てくるのも、この自然のフィルターで濾過されたナチュラルミネラルウォーターなのだ。
20年1月に東川町に来たばかりだという濱本社長に、大雪旭岳源水で炊かれた東川米は、これまで食べてきたご飯と何か違うところはあるのか尋ねると、
「明らかに美味しい。なんでかはわからないけれど、それだけは言える」
とのこと。また、20年4月に東京から東川町に移住した役場職員の畠田大詩さんも、
「炊き上がった時、水の臭みがないんですよね。
米の甘い香りがする、とこっちにきて驚きました」
と話していた。
本当に、そんなにも違うのか。自分の舌で確かめてみたいと思った町外に住む読者もいるに違いない。
実は、東川町に住んでいなくても、大雪旭岳源水で炊いた東川米を食べる方法がある。
東川町のふるさと納税「ひがしかわ株主制度」の返礼品のひとつに、米(5キログラム)と水(4リットル)のセットがある。
JAひがしかわの厳しい基準をクリアした東川米と、大雪水資源保全センターでボトルに詰められた大雪旭岳源水が一緒に届く。白米と無洗米から選ぶことができ、無洗米なら炊飯器に生米と源水を入れるだけ。お手軽だ。
東川の味を体験してみたいという人は、この機会に東川町にふるさと納税してみてはいかがだろう。
<企画編集・Jタウンネット>