甘みも、香りも、全然違う 北海道で一番うまいコメ「東川米」を知っていますか?
米作りの1番の武器は「きれいな水」
では、この米はどのように作られているのか。東川町農業協同組合(以下、JAひがしかわ)の代表理事組合長で、自身も農場を営む樽井功(たるい・いさお)さんと、営農販売部長の髙橋賢(たかはし・さとし)さんに詳細を聞いた。
東川米と、他の米の違いについて樽井組合長はこう語った。
「食べてみた感じの甘味だとか、炊き立ての香りだとか、全然違いますね。
食べてみたお客さんがはっきり言います」
その違いを生み出すのは、東川独自の栽培基準と、米作りに適した土壌と気候、そして、やはり、大雪山からの雪解け水だという。
そもそも「東川米」は地域団体商標として登録されており、東川町で育ったというだけでは名乗れない。JAひがしかわでは米の栽培に厳しい基準を設けており、それをクリアした米だけが「東川米」なのだ。
樽井組合長によると、町内で米作りを行う農家は様々なルールを守っている。例えば07年には、「東川米信頼の証10か条」、16年には「みずとくらす5か条」が制定された。
「東川の環境に配慮しながら、安全でおいしいコメを作るにあたり、厳しい栽培基準を作って、生産者の皆さんにそれを守ってもらっています。ずっとやってきて、良いお米を作るための決め事だということが、生産者にも根付いてきた。
種をまいてから収穫するまで、農薬の種類や散布の回数、また、散布方法にいたるまで限定されていて、生産者にとっては楽な作業ではありません。
しかし、これを守らなければ、『東川米』と謳えないというルールです」(樽井組合長)
例えば、JAひがしかわでは、薬剤を使用せず60度のお湯で種子を10分消毒する「温湯消毒」を施した種子を生産者に使用してもらっているという。
種子をまく前には稲の病害を防ぐために、種子を殺菌する必要がある。樽井組合長によれば、東川ではかつて、農薬による種子消毒を行っていた。しかし、この方法では消毒後に廃液が出てしまう。廃液によって水を汚さないために、JAひがしかわでは温湯消毒器を道内でいち早く導入した。
また、10か条の中には「東川米GAP(栽培記録・生産工程管理)を記帳・提出した米穀」という項目もある。これはJAひがしかわ独自のチェックシートで、土づくりから収穫、収穫までの工程を事細かに記載する米の「履歴書」だ。
生産者自ら、どの農薬や肥料をいつ、どのくらい、どのように使ったか。また、機械等の作業時期、作業担当者名などを記録し、JA職員が年に4回、それを一軒一軒チェックして回っている。そこで基準に当てはまらない農薬を使用したことなどがわかれば、出荷停止の措置が取られる場合もある。
チェックシートの記入と確認以外にも、出荷された東川米をランダムに選んで、残留農薬、カドミウム、放射能、DNAについての成分検査を行い、安全な農産物であることを毎年必ず確認しているそう。
「農薬使う回数も通常より少ない。まず温湯消毒を使うことによって、使用する農薬を一つ減らしている。
使う農薬も環境に影響を与えないものに絞っていて、しかも毎年、変更される。生産者にとっては手間かもしれない」
と髙橋部長。それでも、基準を満たさない生産者は「いない」とのこと。
その徹底して管理された田んぼに引かれているのが、大雪山からの雪解け水だ。東川町は大雪山の麓にあるため、この水を最初に使える。
「ミネラル豊富な水を田んぼにいち早く取り入れることができるというのは、私たちの米の生産に当たっての1番の武器になる。
他の農協の米作り農家さんが東川のお米を買って食べてくれたみたいなんだけど、『私たちの米から見たら白度があるというか、白っぽい』っていうんですよね。
その理由があるとしたら、綺麗な水だと思います」(樽井組合長)