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甘みも、香りも、全然違う 北海道で一番うまいコメ「東川米」を知っていますか?

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2020.12.04 18:00
提供元:東川町
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「東川米」をご存知だろうか?

その名前の通り、東川の米。北海道の真ん中あたりにある小さな町、東川町で作られている。

北海道といえば、今や日本有数の米どころ。新潟に次いで全国2位の作付面積と収穫量を誇っている。北海道でしか生産されていない「ゆめぴりか」というブランド米の名前は、一度ならず耳にしたことがあるだろう。

北海道米の最高峰とも称されるこの品種は、日本穀物検定協会が実施する米の食味ランキングで、最高ランクの「特A」を2011年以来9年連続で獲得し続けている。

北海道ではこのゆめぴりかの美味しさを競う「ゆめぴりかコンテスト」が15年から毎年行われており、19年に最高金賞を受賞したのが東川産の「東川米ゆめぴりか」だ(JAひがしかわとJAようてい蘭越が同時受賞)。

つまり東川町は、米どころ北海道で最も美味しい米を作っている場所の一つ、というわけだ。

町へのふるさと納税でも入手できる東川米は、どうやって作られているのか。2020年11月、Jタウンネット記者はその秘密を探るため、東川町を訪れた。

東川の米と水を使うために、移住を決意

旭川空港から車で約10分。忠別川にかかる橋を越えると、東川町に入る。

真っ直ぐに続く道路の両脇には広々とした田んぼが続き、その奥には山々が見える。東川町は、北海道で最も高い山・旭岳を主峰とする大雪山の麓に位置している。

米を基幹作物とする東川町は、耕地面積の約80%を水田が占めており、田植え時期には水田に張られた水が鏡のように空を反射し、また稲刈り前には一面が黄金色に染まるという。

水を張り鏡のように空を映す田植え時期の「鏡面水田」(写真提供:東川町)
水を張り鏡のように空を映す田植え時期の「鏡面水田」(写真提供:東川町)

稲が実って黄金色に染まる田(写真提供:東川町)
稲が実って黄金色に染まる田(写真提供:東川町)

この町でおむすびを作るために、隣町である旭川から移住してきた女性がいる。

町内に店を構える「玄米おむすび ちゃみせ」の店主・千葉紘子さんだ。

ちゃみせの千葉紘子さん(編集部撮影)
ちゃみせの千葉紘子さん(編集部撮影)

「甘みがあるように感じる。艶があるようにも、私は思います」

おむすびに使っている米について、千葉さんはそう語った。

ちゃみせの商品は、東川米のゆめぴりかで作ったおむすび。玄米がメインだが、白米のものもある。

千葉さんが東川でおむすびの販売を始めたのは2011年。当時は旭川に玄米おむすびの店を出しており、どこか他の場所でも販売できないか、と考えていたときに見つけたのが東川町だった。そこで、東川の水と米のおいしさに気づいたという。

実は、東川町には上水道が存在しない。ではこの町の人々がどうやって水を得ているのかというと、地下から汲み上げているのだ。

東川町の地下には、大雪山の雪解け水が地下水として流れていて、家庭ではそれをポンプで汲み上げて使う。この地下水を飲んだ千葉さんは「ここ、水がすごく美味しい」と感動し、おむすびに東川の水と、その水で育った東川米を使うようになった。

炊き込みご飯のおむすびも(編集部撮影)
炊き込みご飯のおむすびも(編集部撮影)

11年当時は東川町内の現在とは違う場所に店があり、千葉さんは毎日旭川から通っていたという。

「通いだったので、水を持って帰っていたんです。お米も東川のお米使わせていただいていて、旭川からおむすびを作って持ってきていて。正直大変でした」

いつか移住して、すべての水を東川の水でまかないたい――。そう考えるようになった千葉さんは、14年に現在の場所に店をオープンし、東川町に住み始めた。

水は当然、地下から引いたものを使っている。この水で炊いた米について、

「水が違うからか、美味しく感じます」

と千葉さん。

カゴにないおむすびは、注文すれば握ってもらえる(編集部撮影)
カゴにないおむすびは、注文すれば握ってもらえる(編集部撮影)

店内には「紅鮭」といった定番から「山わさびチーズ」といった珍しいもの、また炊き込みご飯をおむすびにした「タコ飯むすび」など10種類以上のおむすびが並ぶ。「揚げ半熟たまご」や「こうじチキン」など週末限定の商品も人気だという。

千葉さんによると、「甘くて、ご飯自体がとても美味しいので何にでも合います」とのこと。

店は朝8時から14時までの営業だが、夏場や週末にはそれ以前にご飯がなくなって閉める場合もある。町内のみならず、近隣の旭川、美瑛、富良野からも人が訪れるという。

大雪山や、雪解け水の源泉に水を汲みにいく道すがらおむすびを買っていく人も多い。また、中には札幌から来てまとめ買いしていく人もいるそうだ。

それほどまでに、東川の米と水は美味しいということだろう。

米作りの1番の武器は「きれいな水」

では、この米はどのように作られているのか。東川町農業協同組合(以下、JAひがしかわ)の代表理事組合長で、自身も農場を営む樽井功(たるい・いさお)さんと、営農販売部長の髙橋賢(たかはし・さとし)さんに詳細を聞いた。

東川米と、他の米の違いについて樽井組合長はこう語った。

「食べてみた感じの甘味だとか、炊き立ての香りだとか、全然違いますね。
食べてみたお客さんがはっきり言います」

その違いを生み出すのは、東川独自の栽培基準と、米作りに適した土壌と気候、そして、やはり、大雪山からの雪解け水だという。

そもそも「東川米」は地域団体商標として登録されており、東川町で育ったというだけでは名乗れない。JAひがしかわでは米の栽培に厳しい基準を設けており、それをクリアした米だけが「東川米」なのだ。

樽井組合長によると、町内で米作りを行う農家は様々なルールを守っている。例えば07年には、「東川米信頼の証10か条」、16年には「みずとくらす5か条」が制定された。

「東川の環境に配慮しながら、安全でおいしいコメを作るにあたり、厳しい栽培基準を作って、生産者の皆さんにそれを守ってもらっています。ずっとやってきて、良いお米を作るための決め事だということが、生産者にも根付いてきた。
種をまいてから収穫するまで、農薬の種類や散布の回数、また、散布方法にいたるまで限定されていて、生産者にとっては楽な作業ではありません。
しかし、これを守らなければ、『東川米』と謳えないというルールです」(樽井組合長)
樽井組合長(編集部撮影)
樽井組合長(編集部撮影)

例えば、JAひがしかわでは、薬剤を使用せず60度のお湯で種子を10分消毒する「温湯消毒」を施した種子を生産者に使用してもらっているという。

種子をまく前には稲の病害を防ぐために、種子を殺菌する必要がある。樽井組合長によれば、東川ではかつて、農薬による種子消毒を行っていた。しかし、この方法では消毒後に廃液が出てしまう。廃液によって水を汚さないために、JAひがしかわでは温湯消毒器を道内でいち早く導入した。

また、10か条の中には「東川米GAP(栽培記録・生産工程管理)を記帳・提出した米穀」という項目もある。これはJAひがしかわ独自のチェックシートで、土づくりから収穫、収穫までの工程を事細かに記載する米の「履歴書」だ。

生産者自ら、どの農薬や肥料をいつ、どのくらい、どのように使ったか。また、機械等の作業時期、作業担当者名などを記録し、JA職員が年に4回、それを一軒一軒チェックして回っている。そこで基準に当てはまらない農薬を使用したことなどがわかれば、出荷停止の措置が取られる場合もある。

チェックシートの記入と確認以外にも、出荷された東川米をランダムに選んで、残留農薬、カドミウム、放射能、DNAについての成分検査を行い、安全な農産物であることを毎年必ず確認しているそう。

「農薬使う回数も通常より少ない。まず温湯消毒を使うことによって、使用する農薬を一つ減らしている。
使う農薬も環境に影響を与えないものに絞っていて、しかも毎年、変更される。生産者にとっては手間かもしれない」

と髙橋部長。それでも、基準を満たさない生産者は「いない」とのこと。

東川米(写真提供:東川町)
東川米(写真提供:東川町)

その徹底して管理された田んぼに引かれているのが、大雪山からの雪解け水だ。東川町は大雪山の麓にあるため、この水を最初に使える。

「ミネラル豊富な水を田んぼにいち早く取り入れることができるというのは、私たちの米の生産に当たっての1番の武器になる。
他の農協の米作り農家さんが東川のお米を買って食べてくれたみたいなんだけど、『私たちの米から見たら白度があるというか、白っぽい』っていうんですよね。
その理由があるとしたら、綺麗な水だと思います」(樽井組合長)

数十年前に降った雪が、美しくおいしい地下水に

先述の通り、東川町には上水道がない。田んぼに引く水も、家庭で使う水も、地下に流れる大雪山からの雪解け水を利用している。

数十年前に大雪山に降った雪が、地中に染み込み、自然という天然のフィルターを通して濾過され、細菌の汚染がほとんどない地下水となっているのだという。

その雪解け水が湧き出す源泉が、大雪山国立公園にある「大雪旭岳源水」だ。

苔むした岩の間から、澄んだ水がこんこんと流れ出ている。この水を汲むために、遠方から訪れる人もいるという。

雪解け水が流れ出る源泉(編集部撮影)
雪解け水が流れ出る源泉(編集部撮影)

この源水のほど近くに、「大雪水資源保全センター」がある。

災害時に確実に水の提供ができるように作られた工場で、湧き出る水を工場に引き、ボトリングしている。自然のフィルターで濾過された源水の水をさらに三段階のフィルターを使用して濾過し、熱処理はしないことで源水の美味しさをそのままペットボトルに詰めているという。

同社代表取締役社長の濱本伸一郎(はまもと・しんいちろう)さんと捧範行(ささげ・のりゆき)専務に大雪旭岳源水がどんな水なのか教えてもらった。

「大雪山に降る膨大な雪の雪解け水が染み込んで、そして30年とも50年とも言われる歳月を経て湧き出ています。
(源水では)1分間で4600リットル、1日で6600トンという物凄い量が湧き出ているんです。水温は年間を通じてほぼ7度で、どんなに雨が降ろうと、どんなに渇水だろうと、関係なく水が出ています。
それだけ深いところから雪解け水が湧き出しているということです」
雪が積もった大雪山(写真提供:東川町)
雪が積もった大雪山(写真提供:東川町)

湧き出た水は、人間の体液とほぼ同じpH7.4の弱アルカリ性。天然ミネラル分が豊富で、特にカルシウムとマグネシウムのバランスが2対1という飲用に理想的な濃度比率になっているそうだ。

「硬度は94(単位はミリグラム/リットル)。ちょっと硬めですけど、世界には1100を超えるものもあります。そういう高度になると、飲みにくいとか、お出汁が出にくいとかいうこともありますけど、硬度は94くらいで『これ硬いですね』と分かる人はほとんどいない。
適度なミネラルバランスの水です」

ちなみにフランス産のミネラルウォーター「エビアン」は硬度304、「コントレックス」は1468だ。硬水に苦手意識がある筆者も、大雪旭岳源水の水を飲んでみたところ、確かに硬さはほとんど気にならず、飲みやすい。ごくごく飲むことができた。

ちなみに、大雪旭岳源水は環境省が2008年に制定した「平成の水百選」に選ばれており、同社がボトリングした水は2015年に同省が行った「『名水百選』選抜総選挙」の「おいしさ部門」で3位になっている。

大雪水資源保全センターの濱本社長(編集部撮影)
大雪水資源保全センターの濱本社長(編集部撮影)

「この水が、そのまま東川の町に行っている。お米もそりゃおいしかろうと思います」

と濱本社長。そう、東川では田んぼに引くのも、蛇口から出てくるのも、この自然のフィルターで濾過されたナチュラルミネラルウォーターなのだ。

20年1月に東川町に来たばかりだという濱本社長に、大雪旭岳源水で炊かれた東川米は、これまで食べてきたご飯と何か違うところはあるのか尋ねると、

「明らかに美味しい。なんでかはわからないけれど、それだけは言える」

とのこと。また、20年4月に東京から東川町に移住した役場職員の畠田大詩さんも、

「炊き上がった時、水の臭みがないんですよね。
米の甘い香りがする、とこっちにきて驚きました」

と話していた。

本当に、そんなにも違うのか。自分の舌で確かめてみたいと思った町外に住む読者もいるに違いない。

実は、東川町に住んでいなくても、大雪旭岳源水で炊いた東川米を食べる方法がある。

画像はひがしかわ株主制度特設サイトより
画像はひがしかわ株主制度特設サイトより

東川町のふるさと納税「ひがしかわ株主制度」の返礼品のひとつに、米(5キログラム)と水(4リットル)のセットがある。

JAひがしかわの厳しい基準をクリアした東川米と、大雪水資源保全センターでボトルに詰められた大雪旭岳源水が一緒に届く。白米と無洗米から選ぶことができ、無洗米なら炊飯器に生米と源水を入れるだけ。お手軽だ。

東川の味を体験してみたいという人は、この機会に東川町にふるさと納税してみてはいかがだろう。

<企画編集・Jタウンネット>

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