マスク姿の「さるぼぼ」観客席にずらり 飛騨高山ならではの感染対策が可愛すぎると話題に
今や日常の一部となった新型コロナウイルス感染対策。
劇場やコンサートホールでは、観客の数を制限して上演を行う場合もある。
ポコポコと空席の目立つ劇場は観客にとっても、舞台に立つアーティストにとっても切ないものに違いない。
しかし、岐阜県高山市にある「飛騨・世界生活文化センター」の多目的ホールには、そんな寂しさも和らぐような光景が広がっている。
ホールに備え付けられた椅子に座っているのは、色とりどりの「さるぼぼ」たち。
岐阜県・飛騨地方で作られている人形で、元は安産や健康を祈るお守りだった。猿の赤ちゃんに似ていることから「さる(=猿)ぼぼ(=赤ちゃん)」という呼び名がついたという。
まん丸の顔にマスクをつけ、前掛けには「そしゃ感染対策やぞ!」と書かれている。「そしゃ」は飛騨方言で「それじゃあ、それならば」の意味だ。
こちらの写真は、ツイッターユーザーのうつみとよし(@toyoshi29)さんが2020年10月17日に投稿したものだ。
万歳をした子供のような姿のさるぼぼが客席を賑やかす様子は、ツイッターで大好評。
うつみさんのツイートは2万6000件以上のいいね、1万件以上のリツイートを得るなど話題になり、
「可愛すぎ!ソーシャルディスタンスも、こうだと、ほのぼのして素敵ですね。」
「隣さるぼぼが座ってたらうれしい」
「全国の公共施設は真似してほしいなー」
などの声が寄せられている。
さるぼぼで地元を元気に
Jタウンネット編集部は22日、飛騨・世界生活文化センター(通称・飛騨センター)に取材。担当職員に客席に座るさるぼぼたちについて聞いた。
話題になった写真は、センター内にある「飛騨芸術堂」というホールの様子。18日に行われたコンサートのため、500席ある客席のうち250席をさるぼぼたちが埋めた。さるぼぼを2〜3体ずつ並べて配置し、観客と観客の間が開くようにしたとのことだ。
訪れた観客からは「可愛い」「空席で人がいないと寂しいが、人形がいることでそれを感じずにすんだ」など好評だったという。
同センターには飛騨芸術堂以外にも多目的ホールがあり、担当者は
「そちらのホールを使われるお客さまが見えたときは、移動して使えたらいいなと思っています」
と語った。たくさんのさるぼぼたちを移動させるのは大変そうだが、想像するとほっこりする光景だ。
このさるぼぼたちは、さるぼぼの製造・販売に関わる業者で組織される「飛騨のさるぼぼ製造協同組合」から、10月初旬に寄贈されたものだそう。
編集部の取材に応じた同組合の職員によると、マスクをつけた感染対策用のさるぼぼは、組合に所属する3社で製造しているもの。
8月初めに高山市役所に寄贈し、それ以降市内の他の施設にも無償で配布しているという。
「アルコールとかマスクとかを寄贈される業者さんが多かったんですけど、うちはさるぼぼを使って地元の皆さんに何かお役立てができないだろうか、と考えて作ったものです」
と職員。市役所に贈った際に、市長から「とてもいいものなので、市内の施設にも配られたらどうですか」と提案され、その後希望があった保育園や介護施設、個人医院などにも寄贈しているそうだ。
「手作りなので、なかなか一度には無理なんですけど、徐々に徐々に、できた分からお配りしている最中です」
組合がこれまでに感染対策のために製造したさるぼぼは約1000体。飛騨センターに納めたのはそのうち250体だという。
ホールの客席に座るさるぼぼがツイッターで注目を集めたことに関して、職員は
「ただバッテン印とかを貼って対策するよりは、皆さまの気持ちがほんわかというか、ほっこりしていただけるものであったなら良かったです」
と話した。
10月23日11時7分追記:飛騨のさるぼぼ製造協同組合から、回答した内容を訂正したいとの要望があり、記事の一部を変更しました。