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袴姿で馬に乗り、富士の樹海を疾走する女性 まるで映画のワンシーン...「爽快感すごい」乗馬動画に反響

松葉 純一

松葉 純一

2020.10.15 11:00
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馬に乗って疾走する光景を、ただひたすら追走しながら撮影した1本の動画が、いま注目を集めている。

馬に乗って走るとは、これほどまでに爽快な気分なのかを、実感させてくれる、ある意味衝撃的な映像だ。

動画を見た読者は、思わず引き込まれてしまったのではないだろうか。

「和種馬で和式馬装、袴をはいて襲歩」とコメントが添えられているが、いったいこれは何だろう?

2020年10月12日に投稿されたこのツイートには、4万件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(14日夕現在)。ツイッターにはこんな声が寄せられている。

「馬と一体になって風になってる!って感じで凄くカッコいいなぁと思いました!」


「乗馬視点での動画めちゃくちゃ格好いいですね!」
「初めて乗馬してる側視点の動画見ました... 馬の力強さが伝わります...馬的には全力疾走ではないんでしょうがメッッチャ速いですね...」
「この動画はカッコ良過ぎる!すごい爽快感がある」

この動画を目にして、衝撃を受けた人は多かったようだ。動画を投稿したのは、スポーツ流鏑馬や馬上武芸の動画をYouTubeやツイッターにアップしている市村弘(@kerpanen)さん。Jタウンネットは、市村さんに詳しい話を聞いた。

映像がブレない秘密とは

市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より
市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より

市村さんは、話題となった動画についてこう話した。

「今回の映像にはたくさんの方からコメントをいただきましたが、中でもかなり目立ったのは、『映像がブレない、撮影にすごいスタビライザーを使っているんですね』というものでした。

また『先頭を走っている方の体が全然ブレない、すごい体幹ですね』と言うのも多かったですね。映像がブレないのも、先導の騎乗者の体が安定しているのも、実は和式馬術の『立ち透かし』という乗り方に秘密があるんです」

和式馬術の「立ち透かし」とは、いったいどんな技術なのだろうか。市村さんに聞くと...。

「『立ち透かし』は、鐙に荷重をかけ鞍から尻を浮かせ、馬の反撞(はんどう、振動)を膝で抜く乗り方です。『立ち透かし』で乗れば馬への荷重負担が減り、小さな馬の能力を最大限に引き出すことができます。また『立ち透かし』では、騎乗者の体が安定するので躍動する馬からでもブレない撮影、そして弓を引けば正確に狙うことができるんです」

馬が揺れても人は揺れないのは、和式馬術の「立ち透かし」という乗りかたなのだ。騎乗者は鐙(あぶみ)に立ち、尻を浮かせて膝を使い駈ける馬の反撞(はんどう、揺れ)を吸収しているので、頭も体もブレないという。

市村さんによれば、「よくテレビで放映されている流鏑馬(やぶさめ)の射手も皆こんな風に乗っています」とのことだ。

市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より
市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より

市村さんは続けて話す。

「次に多かったコメントは、在来馬が『こんなに速いとは思わなかった』というものでした。

馬が小さくても、和式馬術で乗れば馬は持っている力を万全に発揮できるので、例えば甲冑武者を乗せて時速42.2キロで走った馬は、甲冑を着ないで乗れば時速46.6キロを出せます。

競馬の大きな競走馬は、時速60~70キロも出すそうですから、それに比べれば速いとはいえなくても、他に速い乗り物が一切なかった鎌倉時代には、それこそ目も眩むような速度だったのではないでしょうか」

日本の在来馬の平均的な体高(前肢の肩までの高さ)は、約130センチ前後だったという。現在、競馬で使われている競走馬の体高は160~170センチなので、大人と子供ほどの違いがある。

そんな小さな馬が、鎧兜を身に着けた武者を乗せて、戦場を駆け回っていたのだろうか。

山梨県南都留郡鳴沢村にある紅葉台木曽馬牧場で、鎌倉時代の武者が着用した完全武装重量99.9キロで、木曽系の在来馬に乗って実験をしたという。約3キロの道のりを平均時速19キロで駈け回った後に、時速42.2キロで突撃ができたそうだ。

理由は二つあるという。まず一つは、この馬が戦国時代の強健な軍馬を再現するため、産まれた時から牧場で注意深く飼養され訓練されてきたこと。そしてもう一つは、小さな馬になるべく負担をかけずに乗る「和式馬術」のおかげだ。

市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より
市村弘(@kerpanen)さんが投稿した動画より

その「和式馬術」の現在について、市村さんは語った。

「武家が『弓馬の家』と言われることからもわかるように、かつて馬術は武士には必須の技術でした。武家の子は、どんな武術よりも先に馬術を習い、体のバランス感覚を身につけたものでした。

しかし明治政府の軍隊洋式化の影響で、日本の在来馬、和種馬は激減し、現在は絶滅の淵にいます。また武士が千年に渡って磨き抜いてきた和式馬術も、今や完全に忘れ去られてしまいました」

ただし訓練すれば、甦るに違いない、市村さんはそう信じているという、

「昔も今も、武術家は鍛錬を重ねることによって戦闘力を得る。馬も同じです。馬は軍馬に生まれるのではなく、訓練で軍馬になるのです。紅葉台木曽馬牧場ではオーナーでもある菊地幸雄先生が、30年来、日本の古典馬術の復元、復活とかつての軍馬の再来を目指して試行錯誤を重ねています。

今回の映像の主役となった先導騎乗者の目を見張るような優美な騎乗姿勢も、大勢の人がゲームの3D映像と間違えるようなブレない撮影も、菊地先生が復元した和式馬術と現代によみがえった軍馬が実現したものなのです」

今回のツイートには、「こういう騎乗で乗る武士が出てくる映画やゲームを作ってください」というコメントが寄せられたというが、「それがいつか実現することを願っています」とコメントした。

市村さんは動画をYouTubeでも公開している。大きな画面でご覧になりたい人はこちらをどうぞ。

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