「宿題やりたくない」「しねばいいさ」「えっ」 庄内地方ではこれが普通の会話らしい
2020年5月18日、Jタウンネット編集部宛に、山形県庄内地方の読者から、こんな投稿があった。
庄内地方には、「しねばいい」という方言があるというのだ。
「一般的な聞こえ方は、『死んでしまえばいいのに』って聞こえると思います。
ですが、庄内地方では、『しなければいいのにねぇ』という、『やらやければよかった』という後悔や、『するべきではない』という戒めや引き止めなどの注意の意味合いだったりします。
する、という動詞が、すっ時(どぎ、と読みます)、しね(しないという意味)、せぇ(しなさい、という命令型)、すんな(やめなさい、という命令型)などの変化をみせる、我が地方。
時々自ら発してる言葉に、はっとして、今の言葉をよその地方の人が聞いたらビックリするほど物騒な言葉だな、と思うことがあります」
Jタウンネット編集部は、さっそく庄内地方の主要都市、酒田市役所に電話で問い合わせてみた。
社会教育文化課の担当者は、「たしかに『しねばいい』ってよく言いますね」と苦笑しながら答えた。「年配の人はよく使うみたいですが、最近の若い人はどうですかね」
詳しくは、酒田市立資料館に聞いてみては...、ということで、資料館に詳しい話を聞くことにした。
「しね」というのは、「しない」という意味
庄内地方は、山形県の日本海沿岸地域で、庄内平野を中心とした日本有数の稲作地帯だ。古くから海運による交流が盛んで、北前船交易などで繁栄した酒田港が名高い。江戸時代は庄内藩と呼ばれており、城下町・鶴岡と、商人の町・酒田が、二大都市とされている。
映画「おくりびと」は、庄内地方をロケ地としていた。酒田市や近郊の美しい風景に目を奪われた人もいるかもしれない。鳥海山を背景に、主演の本木雅弘がチェロを弾くシーンは、まさに圧巻だった。
日本海の海の幸と、庄内平野の農産物に恵まれた、美食の地としても知られている。
酒田市立資料館は、酒田市の考古、歴史、民俗などの資料を収集している。担当者は、こう答えた。
「『しね』というのは、『しない』という意味で、『さね』とも言います。『しねばいいさ』とか『さねばいいやんね』とか、よく使う表現で、くだけた言い方ですね。
身近な人や子供たちに対して使うことが一般的で、目上の人に使うことはあまりないと思います。『しない方がいいよ』『しなければいいじゃない』といった意味でしょうか」
「庄内方言辞典」(東京堂出版)というという本があるそうで、その中にも『しね』は記載されているとのこと。現代の若者たちにもごく自然に使われているそうだ。
仮に、あなたが庄内の人に出会ったとして、「しねばいい」と言われたとしても、けっして驚いたり、悲嘆にくれたりすることはない。庄内方言で、「しない方がいいよ」という軽い忠告のつもりかもしれないからだ。
もし標準語で言ったとしたら、話は別だが......。
標準語とは違う意味になる方言、募集します
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