iPhoneの「Siri」はオフにして 演劇公演で異例の注意喚起、その意外な理由とは
「上演中は、携帯電話やスマートフォン、音の出る電子機器は、電源からお切りくださいますよう、お願い申し上げます」
多くの演劇公演では開演前、スタッフ(時にはキャスト)からそんなアナウンスをされる。ところが、東京・恵比寿のエコー劇場で上演中の「まじめが肝心」の注意事項は一風変わっている。
観劇した来場者が2020年1月29日、配布された注意書きをツイッターに投稿し、注目を集めた。
「劇中『セシリー』という名の登場人物がおります。iPhoneをお使いの方は『Siri』機能をお切りいただけますようお願いいたします。高確率で反応いたします」
そんな文章が書かれた紙が、観客に配られている。
「セシリー」。たしかに、Siriを起動させるための言葉「Hey Siri」とよく似ている。条件があえば、起動してしまっても不思議はない。
そこで、Jタウンネット編集部は29日、公演を主宰する日本劇団協議会を取材。協議会の事務局次長で、「まじめが肝心」の制作を務める松村久美子さんに詳細を聞いた。
稽古中にSiriが『何かご用でしょうか』
松村さんによると、「まじめが肝心」では演出の一環で開演前のアナウンスは行われていない。その代わりに、注意事項を記載したA4の用紙を観客に配布しているのだという。
公演は2020年1月24日から行われており、用紙は初日から同じものを使っているそうだ。
注意書きにある「セシリー」とは、4人いる主要登場人物の1人。名前がキーワードの演目でもあるので、セリフとしても多く発語されるそうだ。
「セシリー」という名前にSiriが反応することが判明したのは、「本読み」の時。演者たちが脚本を読み合わせる段階だ。そこで、関係者数人のiPhoneやiPadのSiriが応答したそうだ。
「(iPhone、iPadとの距離が)近いからだとは思うんですけど、マナーモードとかにしてるとSiriが反応して『何かご用でしょうか』みたいなことを言ってくることがありました。
それでみんな『危ないね』『劇場で鳴ったらどうしようか』っていう話をしてたんです」
と松村さん。そこで演出家から、注意書きにSiriについての項目を入れてほしいというオーダーがあったという。
「電源切れば大丈夫なんですけど、今回喜劇なので。(注意書きに)遊びがあってもいいかもね、と」(松村さん)
注意書きを見て楽しい気持ちになってもらい、そのまま上演を見てもらえれば、という意図でSiriについても注意を促しているという。それと、と松村さんは言葉を続ける。
「これで電源を切って下さるお客様も増えるかなっていう魂胆もありました」(松村さん)
上演中の観客のマナーについては話題になることも多いが、今回の「まじめが肝心」の公演では注意書きの効果もあってか、観客のSiriが反応したり、着信音や通知音が鳴ったりしたことはないという。