NHKが時報放送を止めた理由 テレビから消えた「NHK時計」の歴史と現在
テレビ時報が終了したのはなぜ?
さらに驚くべきことに、1965~90年代まで放送された2つのデザインは実物の時計を使っている。
実物の大きさはタバコ2箱くらい。これをカメラで撮影し、別に撮影したそれぞれの色の紙を背景に合成して放送した。90年代以降の背景は撮影した紙ではなく、作成した画像データを合成した。
実物の時計は、時刻の基準を決める親時計装置から1秒毎に送られる信号で動く仕組み。正確な時刻が表示されていたという。現在、この時計は「NHK放送博物館」(東京都港区)に展示されている。
NHKにおける時報はアナログ放送の終了をきっかけに、11年7月23日をもって終了。地デジ化に伴いNHKから時報が無くなった理由を、担当者はこのように話す。
「デジタル放送では、多くの情報を送るためにデータをコンパクトにするために『圧縮』という処理を行います。一方、各家庭のテレビでは、圧縮されて送られてきた信号をもとの情報に戻す『解凍』という処理を行い、視聴できるようにしています。
この『圧縮』『解凍』に多少時間がかかるため、アナログ放送に比べて映像や音声が遅れて届きます。また、信号が各放送局を経由することで地域によって遅延時間が異なり、正確な時報が出せなくなりました」
NHKの時報をテレビで見ることはなくなったが、1番長く放送されたデザインは掛け時計や腕時計として各地で時を刻んでいる。久しぶりにその姿を見に、博物館を訪れてみるのもいいかもしれない。