東京の実家で30年、アラサー男編集長が「移住」と初めて向き合った
北九州市の魅力は「優しさ」
岩﨑さんは北九州市出身だが、大学進学で上京してから40代後半まで、ずっと東京で過ごしたという。転勤で戻ってきてから10数年。「県外」が長かったからこそ、客観的な視点で、地元を見られる部分もあるようだ。
――岩﨑さんから見て、北九州市の魅力は?
岩﨑さん 地に足が付いているところ。北九州の誇るべきところは、やっぱり文化と芸術、あと歴史。松本清張記念館や文学館、響ホール、芸術劇場など、市のアイコンになれる施設があります。一方で、買い物が好きな若い人は、小倉から博多まで新幹線で15分やけんね。そういう使い分けのできる都市なんです。あと食べ物。博多よりおいしくて安い。「角打ち」の文化もある。
――移住を考えている人に向けて、メッセージを頂けますか。
岩﨑さん やっぱり人が優しい。日本どこ行っても、「この町の人優しい」っていうけど、とりわけ優しいと僕は思います。なぜかっていうと、もともとモノづくりの町だったから、商売人じゃない朴訥とした人が多かった。言葉は荒いところもあるかもしれないけど、純粋なんです。
北九州市に住んでいる人は、5代前、10代前から住んでいるというよりも、全国各地から港湾とか筑豊炭田とかに来た人が多いんです。おそらくその頃の「人を受け入れて、一緒に仕事をする」というDNAが組み込まれているから、おせっかいなくらい気を使ってくるんです。テレビとかで言う「人がいい」とは、まったく違いますよ。それは、北九州に来てもらわないと、わからないかもしれませんね。
岩﨑さんいわく、北九州市が見習うべきは、東京や福岡市ではなく、スペインのバスク地方にある「ビルバオ」だという。鉄鋼で栄える港湾都市だったが、「鉄冷え」の時代には衰退。しかし、地元のバスク料理と、ビルバオ・グッゲンハイム美術館で、「美術と食の街」を打ち出してからは、再び活気が戻ってきたそうだ。
どうやら「人がいい」と思っていたのは、自分だけじゃなかったようだ。岩﨑さんによると、お試し居住プログラム後に移住したのは、だいたい全体の3割。ほかに3割が検討中だという。いますぐではないが、いつかは......。そう思う自分は「検討中」なのかもなと改めて思いながら、帰途につくK編集長なのだった。<企画編集:Jタウンネット>