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あの井上康生も練習に励んだ武道場! 滋賀の武徳殿、解体前にお別れ会

野口 博之

野口 博之

2018.03.28 14:00
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武徳殿(ぶとくでん)の旧称でも親しまれた大津市内の武道場「滋賀県体育文化館」が老朽化で解体されることになり、名残りを惜しむ市民有志らによって「お別れ会」が開かれた。

シドニー五輪金メダリストの井上康生さん(39)も柔道の練習をしたそうで、井上さんが写った集合写真も会場に展示された。

「これを見るために東京からやってきました」

お別れ会実行委員会事務局長の元田栄三さん(68)は、2018年3月26日のJタウンネットの取材に対し、こう武徳殿との関わりを話した。

「小学校3、4年生で柔道をやり、寒稽古を震えながらやっていた思い出があります。練習が終わった後に出された豚汁は、とてもおいしかったですね」
お別れ会で集まった人たち(以下、武徳殿お別れ会実行委員会提供)
お別れ会で集まった人たち(以下、武徳殿お別れ会実行委員会提供)

武徳殿は、武術の振興を図るために、大日本武徳会滋賀支部の道場として戦前の1937年に建てられた。全国にいくつもある支部道場の1つだ。入り母屋(いりもや)造りの屋根などが特徴の和風建築で、威風堂々とした姿が印象に残る。

戦後に武道が禁止されると、一時は県産品の展示場になった。56年から再び道場として使われ、多くの柔道家や剣士を生んできた。最後は、県警が主に使用していたが、本部が移転し、老朽化もあって2009年1月末に閉館した。現在は、フェンスに囲まれて入れないようになっている。

場所は、県庁の西隣にあり、JR大津駅からの街並みのシンボル的存在だった。しかし、18年4月に取り壊されることになり、大津市中心市街地活性化協議会のメンバーらを中心に、市民有志が3月25日に現地でお別れ会を開いた。

その様子などについて、ツイッター上で次々に報告が上がっている。

跡地の施設に、武徳殿を語り継ぐスペース設置へ

お別れ会では、武徳殿内部の見学会が開かれ、歴史を振り返る写真パネルや市民からのメッセージも展示された。

内部の様子
内部の様子

当日は、約600人の市民らが集まり、それぞれに思い出話をしたり、記念撮影をしたりして名残りを惜しんだ。地元で柔道をする子供たちも集まり、中には、道着を着て見学に来た人たちもいた。

メッセージは、フェイスブックなどで募集したところ、30人ほどから寄せられた。大正12年生まれの男性は、戦時中に中国へ出征したが、武徳殿で柔道をやったから生き延びられたと感謝していた。また、92歳の女性は、武徳殿が生まれてから解体するまで近所で見届けることになり、柔道をやっていなかったが寂しいと心情をつづっていた。

お別れ会実行委の元田栄三さんによると、井上康生さんも、武徳殿で練習していたといい、大会のときに武徳殿で撮った集合写真にその姿が写っていた

「お別れ会は、まさに同窓会の雰囲気でした。私は、小学校4年生のときに昇級試験に受かり、3級の茶色い帯を付けたときはうれしかった。32、3年前にアメリカの学生に柔道を教えたのが、武徳殿での最後になりましたね」

なお、解体後には、跡地に県の医療・福祉施設が建設されることになっている。県の健康福祉政策課は3月26日、建築素材の一部を展示したり写真パネルでその歴史を振り返ったりして、武徳殿を後世に語り継ぐスペースを施設内に設置する予定だと取材に明かした。

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