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捨てるはずだった「芋焼酎粕」を... 熊本での「もったいない」が、化粧品研究につながった

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.02.05 15:00
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再春館製薬所(熊本県益城町)は2017年6月、「甘藷(芋)焼酎粕エキス」をタンパク質の糖化抑制剤とする特許を取得した。このエキスは、同社を代表する「生涯基礎化粧品」である「ドモホルンリンクル」の主要原料でもある。

同社は、花の香酒造(熊本県和水町)とともに、芋焼酎造りの過程で生まれる「芋焼酎粕の有用性」に着目し、共同開発を進めてきた。そこで17年12月、芋焼酎粕の提供元でもある花の香酒造社長兼醸造責任者の神田清隆さんと、再春館製薬所の研究開発部の佐藤岳さんに話を伺った。

「化粧品に生かせる素材があるかも」と紹介された

左/花の香酒造・神田清隆さん、右/再春館製薬所・佐藤岳さん

左/花の香酒造・神田清隆さん、右/再春館製薬所・佐藤岳さん

花の香酒造は、社名にもなっている日本酒「花の香」のほか、芋焼酎の「茂作(もさく)」を主力商品としている。「茂作」の原料は焼酎用に改良された芋ではなく、焼き芋に使われることも多い熊本産の「高系14号」だ。コストがかかるため、一般的に焼酎造りには使われていない品種だが、あえて使用する理由はなんなのか。

「環境は素直に味に反映されると思います。ワインのように『テロワール(ワイン造りにおけるブドウの生育環境など)』を大事にして酒や焼酎を作っていきたい。そのため、効率的ではないかもしれませんが、地元の素材を原料に芋焼酎を作ることを目指してきました」(神田さん)
熊本県産のサツマイモ「高系14号」で仕込まれた芋焼酎「茂作」。

熊本県産のサツマイモ「高系14号」で仕込まれた芋焼酎「茂作」。

地元への思いが生んだ「茂作」だが、蒸留時に副産物として生まれる「焼酎粕」は、長らく大量に廃棄されていた。

「原料から考えると、弊社の芋焼酎の粕には良質なアミノ酸が豊富に含まれることはわかっていましたが、ほかの成分や効果に関しては未知数でした」(神田さん)

しかしある時、再春館製薬所を紹介され、成分分析をしてみた結果、芋焼酎粕には多くの可能性があることがわかった。

「化粧品に生かせる素材があるかもしれないと紹介があり、弊社の担当者が最初に花の香酒造さんに伺ったのは2006年ごろだったと思います。神田さんの想いを伺い、2007年ごろから成分分析や研究をスタートさせました。化粧品に有用な可能性のある素材を大量に廃棄しているのはもったいないというエコ的な視点もありましたね」(佐藤さん)

新たな形の「地産地消」

体や脳のエネルギー源である「糖」だが、必要以上に摂取すると、かえって老化を進行させるとも言われる。肌においても同様に、糖がコラーゲンなど体内のタンパク質と結びつくと、分解されにくくなって体内に蓄積され、ハリを失い、くすみやシワ、シミなどを引き起こすという。

しかし、10年ほどの研究を通して、甘藷(芋)焼酎粕エキスには、タンパク質の糖化抑制効果のほか、線維芽細胞機能を活性化する効果、コラーゲンの産生を促進する効果、およびメラニン生成に関与する「チロシナーゼ活性」を抑制する効果などがあるとわかったそうだ。また、抽出方法を見直し、当初のエキスよりも「糖化抑制力」を30%アップさせるなど、いまも研究は続けられている。

地元食材と水が生んだ「茂作」の副産物である、芋焼酎粕。こだわりがあったからこそ、効果が証明された時はとても嬉しかった、と神田さんは話す。

「自然界に無駄なものは何一つない」の信条で開発を続ける再春館製薬所と、地元に根差した醸造を行う花の香酒造。両社の研究は、単に化粧品の素材開発というだけでなく、熊本のものづくり企業同士による、新たな形の「地産地消」とも言えるだろう。

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