童話の街で愛される"満にら"とは? 岩手県花巻市の「満州にらラーメン」
■常連客に“満にら”と呼ばれて
ユニークな造りのさかえや本店。田園のある風景に突然現れますから、初めて来た客はびっくりしそうですよね。公共施設や天文台のようにも見えますが、元からあった建物を改装したのでしょうか?
伊藤さん「居抜きではないです。2002年に、ここから数百メートル離れた場所にあった店舗を移転したのですが、そのとき二代目が新しく建てたものなんですよ。昔どこかで見た建物を気に入ってモデルにしたと聞いていますが、目立ちたかっただけじゃないですかね(笑)」
店内の装飾もどこかユニーク。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をイメージにした鉄道模型や花巻の方言を集めた張り紙など、遊び心がちりばめられています。

そんなさかえや本店で、満州にらラーメンは創業当時からふるまわれてきた看板メニュー。ルーツはずばり満州にありました。
伊藤さん「初代は店を始める前に、戦争で満州に行っていたそうです。そのとき満州で飲んだスープを参考にして、帰国してから作ったのが満州にらラーメンだと聞いています」
訪れる客のほとんどは常連で、外の駐車場まで行列ができることもしばしば。地元のサラリーマンや近所にある富士大学の学生たちを中心に、満州にらラーメンは“満にら”という通称で熱い支持を受けています。
伊藤さん「常連さんはみんな “満にら”と呼びますね。うちの店、さかえやじゃなくて“満にら”と言われることのほうが多いくらいですもん(笑)」

常連客の多さは、昼どきの店内のオーダーに耳を傾けてみればわかります。メニューには載っていない、「“満にら”ガリガリ」といった独特の符丁が飛び交っているのです。
伊藤さん「満州にらラーメンの辛さのレベルですね。辛め、ガリ、ガリガリ、スペシャルの4段階に調節ができます。ガリガリやスペシャルになると、もう私も食べられないくらい辛い(笑)。緑のにらも真っ赤に染まっちゃうくらいですから」
一方で、年配の客や子どもにやさしい「辛み少なめ」「辛みなし」も用意しているそう。創業から半世紀以上にわたり地元で愛されているのは、きっといつの時代もお客さんと寄り添って歩んできたからなのでしょう。
伊藤さん「花巻で店を続けられるのは、やっぱりお客さんが来てくれるからこそ。“満にら”は赤くて辛そうなイメージがあるんですけど、見た目よりも食べやすいと思います。目でも味でも香りでも、楽しんでいただきたいです!」
花巻市は童話の街として有名ですが、温泉郷という顔も持っています。奥羽山脈を流れる川沿いを中心に12ヵ所の温泉が点在し、自炊できる昔ながらの湯治場があったり、立って入浴する独特の内風呂があったり、バラエティーに富んだスポットが満載。最近は満州にらラーメンを食べに県外からやってくる人も増えているそうなので、観光に来た人も花巻の古き良き一杯を気軽に味わってみてください!
店舗情報 ● 元祖満州にらラーメン さかえや本店 住所:岩手県花巻市山の神1000-1 電話:0198-23-7775 営業時間: 11:00〜15:00LO(無休) http://www.mannira.com/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。
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