ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

5枚の小皿に盛る独特のスタイル! 兵庫県豊岡市出石町の郷土料理「出石そば」

at home VOX

at home VOX

2016.04.13 12:03
0

日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は兵庫県豊岡市出石町へやってきました。『古事記』や『日本書紀』にも地名が登場するほどの長い歴史を誇る出石は、戦国時代以降に城下町として発展。その面影が残る街並みは「但馬の小京都」と称され、観光地として人気を集めています。

出石のなかでも、ひときわにぎやかな大手前通り。そば屋やみやげ店が立ち並びます。
出石のなかでも、ひときわにぎやかな大手前通り。そば屋やみやげ店が立ち並びます。
出石のシンボル「辰鼓楼」。札幌時計台と同年に設置された日本最古の時計台と言われています。
出石のシンボル「辰鼓楼」。札幌時計台と同年に設置された日本最古の時計台と言われています。

そんな出石を語る上で外せない名物料理が「出石そば」です。実はこの地は、約50軒ものそば屋が軒を連ねる関西屈指のそば処。独特のスタイルでいただく出石そばは、出石観光の目玉となっています。その魅力を人気店「そば庄」で、堪能してきました!

■小皿5枚のそばと多彩な薬味

今年で創業50年を迎えるそば庄。かつて新そばの季節だけ営業していた出石のそば屋のなかで初めて1年を通して店を開け、出石そばを客にふるまい続けてきた老舗です。

店名は初代・川原庄太郎さんから「庄」という文字をとったそう。大手前通りを少し脇にそれた場所にあります。
店名は初代・川原庄太郎さんから「庄」という文字をとったそう。大手前通りを少し脇にそれた場所にあります。
ゆったりくつろげる座敷やデーブル席。古民家のようないろりの席もあります。
ゆったりくつろげる座敷やデーブル席。古民家のようないろりの席もあります。

案内してくれたのは、二代目の川原千尋さん。注文すると、まずテーブルに運ばれてきたのは多彩な薬味とめんつゆ。その後に、そばが盛られた5枚の小皿が並べられていきました。これが出石そばですね!

「皿そば」。そばとっくりに入っているつゆを、そばちょこに注いでいただきます。
「皿そば」。そばとっくりに入っているつゆを、そばちょこに注いでいただきます。

川原さん「出石そばは出石焼の小皿5枚に盛ったそばを、おろした山芋鶏卵ねぎわさびといった薬味とともにいただくものです。うちのように大根おろしをつけたり、店によっては刻みのりが出たりするところもありますけどね」

独特のスタイルの出石そば。そのルーツは、1706年にあった出石藩主の松平氏と信州上田藩の仙石氏の国替えだと言われています。仙石氏が出石に領地を移された際、信州のそば職人の技法が伝わったことがその始まり。その後、江戸時代に白磁を中心とした出石焼が作られるようになってから、小皿5枚に盛るスタイルが確立されていったようです。

そうした経緯があるため、出石そばは関西の郷土料理でありながら、遠く離れた信州のそばの影響を受けているのだとか。では早速、そば庄の「皿そば」をいただいてみましょう。

白っぽい江戸の更科そばとは異なり、やや黒っぽい田舎そばのような色合いです。
白っぽい江戸の更科そばとは異なり、やや黒っぽい田舎そばのような色合いです。

麺は小麦粉とそば粉を2:8の割合で混ぜて打った二八そば。小皿から取ったそばを軽くつゆにつけてすすると、キュッとしたコシとモチっとした食感が! その後に、そばの豊かな香りが広がっていきます。

川原さん「そば粉は、そばの実の甘皮(中皮)や一部は鬼皮(外皮)も取り除かずにひいたひきぐるみで、ロール製粉(金属製のローラーでひく)と石臼びきで作ったものをブレンドしています。鬼皮がついたままひくと若干の雑味や土の香りといった、そば本来の風味が楽しめるんですよ

風味の強いそばは、濃い口のつゆとの相性もばっちり。だしはかつお節だけでとったシンプルなものではないようで、つゆの塩味の奥に複雑なコクのある魚介の味わいを感じます。

川原さんかつお節昆布に加えて、目近節(宗田節)さば節うるめ節を使っています。味は薄口の関西風ではなく、信州などでも作られる田舎そばのような濃い口ですね」

すりおろした山芋と鶏卵はお好みでそばちょこに入れます。
すりおろした山芋と鶏卵はお好みでそばちょこに入れます。

そばとつゆの味わいを堪能したら、薬味も使ってみましょう。おろした山芋と鶏卵がついてくるのも、出石そばの特徴のひとつ。よく溶いてからつゆと混ぜて食べると、とろみのあるまろやかな味わいに。

川原さん「出石そばには山芋と鶏卵がつきもの卵はよく見かけるうずらでなく鶏なので、他のそばとはちょっと違う、つゆとのハーモニーを楽しんでいただけます」

さらにその場ですりおろして使う生わさびは、わさび栽培発祥の地・静岡県有東木から取り寄せたこだわりの一品。ツンと鼻に来るような刺激ではなく、香り高いそばやつゆをやさしく包み込むようなほどよい辛みを堪能できます。味の移り変わりを楽しんでいたら、ものの数分で5枚のそばを平らげてしまいました!

■“三たて”を守る出石のそば職人

5枚のそばを完食しても、少し食べ足りないと感じる人は多いはず。出石そばを出す店では、一皿単位で追加注文できるのが共通の決まりごとです。

川原さん「岩手のわんこそばなんかと同じで、出石そばには競って食べるおもしろさがあります。何皿食べたとか、みんなで自慢し合いながらね」

出石のそば屋の多くでは、20皿以上そばを食べると記念品がもらえます。店によって枚数や記念品の内容が異なりますが、「そば通の証」として各店舗オリジナルの木札や小皿などを用意しています。

そば庄では20皿以上食べた人に店の名前が入った小皿を進呈しています。
そば庄では20皿以上食べた人に店の名前が入った小皿を進呈しています。

川原さん「出石では昔から、重ねた皿が箸の高さになるくらいが成人男性の一人前だと言われているんです。枚数にして20皿くらいですね。記念品を20皿食べた人に贈呈するのは、そのためです」

きちんと一人前食べるのが、出石では立派なそば通の証拠。おおよそ女性は10皿弱、男性は10皿強も食べれば満足できるようですが、観光客をはじめ20皿に挑戦する人もときにはいるそうです。

地元のそば通はこんな食べ方もするそう。小皿のそばに薬味を盛って、直接つゆをかけていただきます。
地元のそば通はこんな食べ方もするそう。小皿のそばに薬味を盛って、直接つゆをかけていただきます。

こうした遊び心をくすぐるチャレンジが評判となる一方で、全国各地の名物そばに負けないクオリティーの高さも人気の理由のひとつと言えるでしょう。そば職人たちは、ひきたて打ちたてゆがきたて“三たて”という出石そばの伝統を守ってきました。

川原さん「ひきたてはそば粉にしてから、数日間のうちにそばにすること。打ちたては今日打ったものを、今日使いましょうということ。ゆがきたてはゆでたばかりのできたてのそばを食べてもらおうということです。そばの香りやうまみが消えてしまいますからね

そうした味への努力は、星による格付けで有名なフランスのミシュランにも認められたほど。2016年兵庫版の『ミシュランガイド』には、出石のそば屋約50軒のうち8軒が掲載。うち3軒が3500円以下でコストパフォーマンスが良い調査員おすすめのレストラン「ビブグルマン」に選出されました。出石そば全体のクオリティーの高さがわかる好例です。

ちなみにそば庄も、ビブグルマンに選出された店のひとつ。川原さんは「皿に盛られたそばが、私のそばのすべて」とあっさり言いますが、その裏には素材へのこだわりや伝統の“三たて”を守るためのさまざまな努力があるのでしょう。そば処・出石は、そんな職人たちが日々切磋琢磨する場所なのです。

二代目の川原千尋さん。
二代目の川原千尋さん。

出石そばの楽しみ方は人それぞれ。20皿食べて「そば通の証」をもらう人がいれば、いろんな店を食べ比べて歩く人もいるようです。街の観光の中心地にあるいずし観光センターでは、3つの店で少しずつ出石そばを食べられる「出石皿そば巡り巾着セット」といった便利なチケットも販売しています。出石を訪れる機会があれば、自分なりのスタイルで出石そばを楽しんでみてくださいね!

店舗情報

● そば庄

住所:兵庫県豊岡市出石町鉄砲27-13

電話:0796-52-5479

営業時間:11:00〜19:00(LO18:30、水曜休)

http://www.sobasho.com/index2.html

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

関連記事

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~ 7つの具材とカレー粉で店の数だけ味が広がる! 茨城県古河市の「七福カレーめん」

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~ 100年近く受け継がれる"朝ラー"聖地の温と冷 静岡県藤枝市の「志太系ラーメン」

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~ 栃木県民が愛する"ちたけ"とは? 栃木県の郷土料理「ちたけそば」

PAGETOP