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昭和から愛されるスタミナの味!郡上市明宝の「鶏ちゃん」

at home VOX

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2016.01.30 13:27
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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回訪れたのは、岐阜県郡上市(ぐじょうし)。岐阜県のほぼ中央に位置し、平成の大合併で七つの町や村が合わさり誕生した市です。

郡上といえば、毎年7月半ばから9月の頭まで行われる、国の重要無形民俗文化財に指定された「郡上おどり」が有名です。特に8月13日から16日は夜から翌朝まで踊り続ける「徹夜踊り」が行われ、普段のどかな街が一晩中賑やかな雰囲気に包まれます。

長良川鉄道の郡上八幡駅。木製の駅舎はタイムスリップしたような気分に。
長良川鉄道の郡上八幡駅。木製の駅舎はタイムスリップしたような気分に。
郡上おどりの時期には人であふれ返る「新町通」。ゲートサインには郡上踊りの様子があしらわれています。
郡上おどりの時期には人であふれ返る「新町通」。ゲートサインには郡上踊りの様子があしらわれています。

今回の目的は、この八幡の中心部から車で20分ほど離れた明宝(めいほう)地域でよく食べられている鶏肉料理、その名も「鶏ちゃん」です。

■労働者のスタミナ源だった「鶏ちゃん」

郡上八幡駅から北へのびるせせらぎ街道を通り、20分ほどで鶏ちゃんが味わえる「料理旅館みずかみ」さんに到着しました。今回お話を伺ったのは、みずかみのご主人・髙田さんと“めいほう鶏ちゃん研究会”の河合さんです。

旅館にレストランが併設された「料理旅館みずかみ」。
旅館にレストランが併設された「料理旅館みずかみ」。
店頭ののぼりには「鶏ちゃんの里」の文字も。
店頭ののぼりには「鶏ちゃんの里」の文字も。
にこやかに迎えてくれた高田昌成さん(右)と河合美世子さん(左)。
にこやかに迎えてくれた高田昌成さん(右)と河合美世子さん(左)。
店内はゆったりとした作りで、窓も大きく眺めも最高です。
店内はゆったりとした作りで、窓も大きく眺めも最高です。

早速、「鶏ちゃん」とはどんなお料理なのか、聞いてみました。

河合さん「『鶏ちゃん』はカットした鶏肉を好みの調味料で味付けし、季節の野菜と一緒に炒めた料理です。簡単なのにとても美味しい郷土料理で、この地域では昔から愛されています。誕生した経緯には諸説ありますが、昭和30年代に明宝や隣の下呂で同時期に誕生したと言われています。当時、御母衣(みぼろ)ダム工事や伊勢湾台風の復旧工事が行われており、日本人はもちろん朝鮮半島出身の労働者の方も多く働いていました、工事現場近くの宿舎で仕事終わりにニンニクや唐辛子入りの調味料で味付けしたお肉を焼いて食べていたのが美味しいと噂になり、それを真似て作り始めたのがきっかけだとか。鶏は各家庭で卵を得るために飼われていたので、一番身近なお肉は鶏肉です。鶏ちゃんの『ちゃん』も内臓を意味する『トンチャン』が由来だという説や、『醬(ジャン)』が転じたものという話があります。それに、明宝には江戸時代から鉱山があったので、鶏ちゃんのルーツにあたる料理は戦前から鉱山労働者の間で食べられていたかもしれません」

戦後、肉とニンニクの組み合わせは厳しい肉体労働を支えたスタミナ源となり、しだいに美味しい料理として認められ、幅広くこの地域に伝わっていったんですね。

河合さん「実は明宝では昭和30年代前半は羊肉のジンギスカンが大ブームになったそうです。当時は羊を飼うことが奨励されましたが、産業的に羊の需要がなくなり、段々と鶏に変わっていきました。焼肉と言ったら皆さんは牛肉を思い浮かべると思いますが、この辺りでは20~30年前までは焼肉といったら鶏肉でした。鶏食文化が浸透している地域なので、その鶏肉を少しでも美味しく食べようと発展し続けているのが『鶏ちゃん』なんです」

それだけ鶏肉を愛している明宝の方々の自慢料理。楽しみが膨らんできました!

■ビジュアルと香ばしさに食欲全開!

髙田さん「今回は、現在主流の柔らかい若鶏を使った『鶏ちゃん』と昔ながらの親鳥をつかった『皮肝(かわきも)』を準備しました」

これが若鶏を使った料理旅館みずかみ特製の「鶏ちゃん」680円(税込)。
これが若鶏を使った料理旅館みずかみ特製の「鶏ちゃん」680円(税込)。
こちらが2歳以上の親鳥をつかった昔ながらの「皮肝」890円(税込)。
こちらが2歳以上の親鳥をつかった昔ながらの「皮肝」890円(税込)。
鶏ちゃん用の鉄板。昔はジンギスカン鍋を使っていたとか。
鶏ちゃん用の鉄板。昔はジンギスカン鍋を使っていたとか。
熱した鉄板にお肉を投入。まずお肉に火を通します。
熱した鉄板にお肉を投入。まずお肉に火を通します。
しばらくしたら野菜も入れて炒めていきます。全体を馴染ませたら「鶏ちゃん」の完成です。
しばらくしたら野菜も入れて炒めていきます。全体を馴染ませたら「鶏ちゃん」の完成です。
もう一個の「皮肝」も完成しました!!味付けによって出来上がりの見た目が違います。
もう一個の「皮肝」も完成しました!!味付けによって出来上がりの見た目が違います。
「作り方は簡単だけど、味付けが店ごとに違うのが鶏ちゃんの面白いところ」と髙田さん。
「作り方は簡単だけど、味付けが店ごとに違うのが鶏ちゃんの面白いところ」と髙田さん。

鉄板で焼けたタレの香りが立ち上りもうたまりません!!

髙田さん「鶏ちゃんは自家製味噌をベースの甘めのタレで味付けしてあります。皮肝は醤油ベースのタレで味付けしてあるので出来上がりの見た目が違うでしょ? どちらも美味しいので温かいうちにどうぞ」

甘い味噌味ともも肉のジューシーな脂がマッチして箸が止まらなくなる逸品です!
甘い味噌味ともも肉のジューシーな脂がマッチして箸が止まらなくなる逸品です!

まずは鶏肉から。鉄板からそのままいただくのでアツアツで柔らかく、香ばしさは満点! 鶏肉のジューシーな旨味が口いっぱいに広がります。甘じょっぱい味噌味のお肉と鶏の油の香りがうつった野菜も、普通の焼肉で食べる野菜より一段も二段もおいしくなっていますね。一緒に食べるご飯との相性も抜群。続いて皮肝をいただきましょう。

皮肝には鶏の卵巣も入っています。地元では「ツブツブ」や「フサ」と呼ばれて親しまれています。
皮肝には鶏の卵巣も入っています。地元では「ツブツブ」や「フサ」と呼ばれて親しまれています。

皮肝は醤油ベースということで、先ほどの味噌味よりもさっぱりした印象。しっかりとした食感の鶏ちゃんとは異なり、プリプリっとした鶏皮がクセになります。また、濃厚な旨味がたっぷり詰まった肝や卵巣も、食感はもちろんのこと、溶け出した鶏の脂のコクと醤油味が相まって、大人の味わい。タレのおかげで臭みは一切ありません。野菜と一緒に味わってもまた一味で、なんといってもお酒にもぴったりですね。

鶏ちゃんは味噌、醤油以外にも塩などお店ごとにいろいろな味付けがあるといいます。鶏ちゃんを名乗る概念などはあるのでしょうか?

河合さん「基本的にカット済み、味付け済みの鶏肉ならばそれが鶏ちゃんです。味付けも様々ですし、鶏も正肉のみでも内臓を入れてもそれぞれの好みでOK。私も肉屋で好きな部位を買ってきて、自分で考えて作ることもあります。野菜も入れず肉だけが好きという人もいます」

とても自由な料理だからこそ、それぞれの好みに合わせて色々な味の「鶏ちゃん」が生まれて、ここまで長く愛されてきたんでしょうね。

河合さん「この辺りだと人が集まれば『鶏ちゃん』ですからね。家の中でホットプレートでワイワイやったり、夏場は川岸に大きな鉄板を持っていってやります。みんな大好きなので家庭では週に2、3回つくっても文句はでませんよ(笑)。最近では保存技術も発達したおかげで、お店の味がそのままパックされたものもスーパーや道の駅でたくさん売られるようになりました。より簡単に美味しく楽しめるようになったので、鶏ちゃんの美味しさがもっと全国に広まっていくといいですね」

料理旅館みずかみさんからほどちかい道の駅にも、鶏ちゃんがズラリと並んでいました。
料理旅館みずかみさんからほどちかい道の駅にも、鶏ちゃんがズラリと並んでいました。

夏の郡上おどりに合わせて訪れてもよし、冬はスキーやスノーボードを目的にに訪れてもよし、一年中楽しめる郡上市。訪れる際には、地域の方が愛してやまない名物肉料理「鶏ちゃん」も一緒に味わってみては?

それでは満腹御礼、今回もごちそうさまでした!

店舗情報

●料理旅館みずかみ

住所:岐阜県郡上市明宝気良105

電話:0575-87-2136

営業時間:昼11:30~14:00、夜16:00~22:00(火曜定休)

http://www.gujo-tv.ne.jp/~mizukami/

●めいほう鶏ちゃん研究会

住所:岐阜県郡上市明宝二間手361-1

電話:0575-87-2002

http://keichannosato.com/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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