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今年もいろいろあったけど...事件も何もない、普段の靖国神社を歩く【現場2015】

竹内 翔

竹内 翔

2015.12.29 17:00
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冬のある日の靖国神社
冬のある日の靖国神社

靖国神社は、今年もいろいろと大変だった。毎年恒例の政治家の参拝をめぐる議論や、みたままつりでの露店中止、そして11月に爆発物事件、年末には中国国旗騒動も......。

思えば、テレビなどに出てくるのはこうした騒ぎのさなか、いわば「非日常の靖国」ばかりだ。そのため、下手をすると「右と左がいつもケンカしている場所」という印象さえある。

普段の、何事もない、「日常の靖国」。その姿を見たくなった。

普段の靖国神社は、小学生たちの通学路

12月中旬の、曇り空の日である。平日の昼過ぎだというのに、靖国の境内には多くの人が歩いていた。

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若い女性も多い。それも、普通の女性だ。別に、愛国だとか戦争だとかに興味がありそうな様子はない。黄色く染まったイチョウの葉にスマホのカメラを向けながら、ごく自然体で「参拝」していく。また外苑では、紺の制服姿の子どもたちも多く見かけた。靖国という場所も、この子どもたちにとっては毎日の通学路なのだ。

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外国人観光客だろうか、大鳥居をバックに、満面の笑顔で記念写真を撮っている。微笑ましく見ていると、そのすぐそばで、鳥居を前に深々と頭を下げるおじいさんに出くわしもする。その姿に、改めてここが「靖国」なのだということを思い出す。

レトロな売店には安倍ちゃん饅頭

せっかくなので、まっすぐ拝殿には向かわず、あちこち回ってみる。

目に留まったのは、中門鳥居の前にある「外苑休憩所」だ。お土産のコーナーには皇室カレンダーの他、安倍晋三首相饅頭も置いてある。

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レトロなムードな建物内に、「靖国うどん・そば」の看板が見える。名物であるこの一杯は、お値段1000円。このほか、焼き鳥や枝豆、焼きそば、ちょっと意外なことにビールまである。参拝前に飲むのもなんなので、ここは我慢。

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内苑の奥に、少し古びた能舞台があるのを見つけた。

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これは明治時代、日本初の近代的な能舞台として作られた「芝能楽堂」で使われていたものだ。その後、閉鎖に伴い靖国に寄贈された。ほとんど気にする人もいないが、こんなところにも歴史的な遺産があるのが、靖国らしい。

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拝殿のすぐ側には、おみくじの売り場もある。ひとつ試しに引いてみると――末吉。一緒についてくる、ストラップタイプのお守りがかわいい。

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たどたどしい字で書かれた切実な絵馬

参拝者の絵馬を、失礼ながらちょっと覗いてみた。普通の神社と同じように、「合格」や「健康」の祈願がやはり多い。外国語のものもちらほら目についた。

一方で、自衛隊員からの昇進祈願や、英霊へのメッセージ、またびっしり細かい字で書きこまれた「○○選で自民党が勝利しますように」といった願掛けなどは、やはり靖国というべきか。

最も印象深かったのは、子どものようなたどたどしい字で書かれた絵馬だ。

「すぐ帰化できますように」

参拝を済ませ、遊就館のカフェで一休みする。

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メニューに「麦水(おいしい麦茶)」とあるので、「旧軍では麦茶のことを『麦水』と言っていたのかなあ」と思いつつ購入したが、飲みながら調べると単に商品名......。展示されているゼロ戦を眺めながら飲む麦水は、しかし確かにおいしい麦茶だった。

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帰り道、爆発物事件があった南門付近のトイレに立ち寄る。警察官などの姿は見えなかったが、周囲には黄色い規制線が張られ、いまだ使用不可能なままだ。

大鳥居に嫌がらせ落書き続出!...は本当?

大鳥居に戻ってきた。そういえば昨年の話になるが、この鳥居にハングルで嫌がらせのような落書きがされていた、というニュースが世間をにぎわせたことがあったことを思い出す。

柱を見てみると、確かに「不届き者」の落書きが少なからずある。

カップルらしき2人の名が刻まれている

カップルらしき2人の名が刻まれている

もっとも、一番多かったのは日本人のカップルによると思われる「相合傘」だ。30年以上前の日付がある、かなり年季の入ったものもある。

今ごろはいい大人になっているのだろうが...

今ごろはいい大人になっているのだろうが...
年季が入ったものも多い

年季が入ったものも多い

大きく掘りこまれていた「夜桜」は暴走族か何かのチーム名だろうか。

中国語、英語のものもあるにはあるが、ほんの一部だ。そもそも、境内の解説は日本語と英語の方は充実しているが、中国語や韓国語にはあまり対応していない。少しばかり気になるところだ。

中国語の「あなた」

中国語の「あなた」
ピースマーク。ある意味ふさわしい落書き?

ピースマーク。ある意味ふさわしい落書き?
英語で記されたメッセージ(?)

英語で記されたメッセージ(?)

ということで、靖国の散策を終えた。「日常の靖国」は、思った以上に見どころが多い。靖国をめぐるさまざまな論争に興味がない人でも、ゆったり受け入れてくれる懐の深さがある。心だけは敬虔に、気軽にお出かけしてみたい。

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