「実は方言だった言葉」関西編...「『ほる』は関西弁で、『ほかす』が標準語やろ。え、違うの!?」
大阪人であるAさん(50代)の体験談だ。当時学生だったAさんは、関東出身の友人に、あるものを「捨てて」くれるよう頼もうとした。普段なら、
「これほって」
と言うところだが、「『ほる』は関西弁だから、友人には通じないかもしれない」と思ったAさん、気を利かしたつもりで、
「これほかして」
と、「共通語風のイントネーションで、丁寧めに」頼んだ。もちろん、友人はポカン。そう、「ほる」だけではなく、「ほかす」も関西弁だったのである。
「なおして」「壊れてないよ?」
京都府の会社員・Bさんも、関東で「ほかす」が通じず驚いた一人だ。
「あるとき関東の工場へ出張し、仕事が終わってから現地の社員に『ごみはほかしといてくださいね』と言ったら『ほかす? 何のこと?』と言われるし、『道具は元になおしといてね』と言ったら『別に壊れてないっすよ』と言われるし......。まさか方言とは思いもよらず、予想外のカルチャーショックでした」
ちなみに「ほかす」は禅用語の「放下(ほうか)」に由来するという。「ほる」より共通語っぽい、という認識は、その辺りにあるのかも。
というわけで、Jタウンネットで何度か実施してきた「共通語だと思っていたけど、実は方言だった言葉」特集、(前回から間が空いてしまったが)今回は関西の読者からの投稿を紹介したい。
「鍵を落として」と頼んだら、そっと置かれた
続いては、奈良県のCさん(20代女性)のエピソード。
「出かけるとき、『裏口から出るから、玄関の鍵を落としといて!』と県外の友達に言うと、友達はその場で鍵を床に置きました。『......何してるの?』と聞くと、『このまま落として折れると危ないからそっと置いたんだけど......ダメだった?』と。普通に『鍵閉めて』と言えばよかったと思った瞬間でした」
「鍵を落とす」=鍵を閉める。錠前などが使われていた古い扉のイメージからだろうか。奈良を中心に、大阪の一部でも言うところがあるそうだ。それにしても、友人の対応がかわいいエピソードである。
響きは標準語っぽいのに
高尾山に出かけた、やはり奈良県のDさん(50代女性)。
「標準語のつもりで、『バス、あと半時間来ないね』って言ったら、『え? 3時間?』って言われた。『1日の半分は半日、1年の半分は半年って言うでしょ? じゃあ1時間の半分は半時間じゃないの?』って言いましたが、『言わない~!』と返されてしまいました」
実際、戦前の文章などを読むと普通に「半時間」という言葉が使われている。時代が下るとともに関東などでは次第に廃れ、関西を中心に方言として残ったもののようだ。
播州弁では熊手を「がんじき」
Eさんは、兵庫県は播州地方の生まれだ。
「一般的には『熊手』か『落ち葉かき』と呼ばれるものを『がんじき』と呼びます。長いこと共通語だと思っていました」
「がんじき」は兵庫県の中でも、旧播磨国エリアでもっぱら使われるいわゆる「播州弁」の1つだという。同じ関西圏でも通じないところが多いが、投稿にある通り地元では、共通語だと思い込まれるほど一般的らしい。
めばちこの「ばちこ」って何よ
首都圏で「ものもらい」と呼ぶ目の病気、麦粒腫は地方ごとの呼び方の差が激しいことで有名だ。以前関東編で「めかいこ」(群馬)を取り上げたが、兵庫県のFさん(40代男性)からは「めばちこ」が投稿された。
「他地域の方にはまったく通じませんでした。通じないことが分かってから、『ばちこってなんやねん??』と疑問を抱いています(笑)」
ロート製薬のウェブサイト「ものもらいMAP」によれば、「めばちこ」は兵庫のほか大阪、奈良などを中心に使われている言葉だという。ちなみに「ばちこ」の意味は、目を「ぱちぱち」する、という説のほか、いわゆる「乞食」を指す「鉢(鉢坊主)」由来、という話もあるとのことだ。
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