旅の思い出は、自分1人のものではない。誰かが素敵な経験をした土地は、その家族や大切な人にとっても、心に残る場所になる。そして、そこではまた新たな出会いが待っているかもしれない。 たとえば、両親の新婚旅行先。島根県のCさんは学生のころ、2人の思い出の地である「熱海」を訪れた。 卒業直前の旅行で、熱海へ 東京で学生生活を送っていた、今から10年ほど前の話です。 大学卒業を控えた私はある日、一人旅を思い立ちました。車で行ける範囲で、まだ出かけたことのない場所......。いろいろ考えて、思いついたのが「熱海」です。 熱海(necoさん撮影、Flickrより) というのも、熱海は両親の新婚旅行先。子どものころからよく「素敵な場所だった」という話は聞いていたので、常々1度は行ってみたいと思っていました。 ドライブの途中、見えてきたのはオレンジ色の... 季節は12月。 昼過ぎに熱海に到着した私は、とりあえずホテルに荷物を下ろして、ぶらぶらとドライブに出かけることにしました。 両親が訪れた当時よりは、さすがに観光客も減ったらしく、街は思ったより落ち着いた印象でした。とはいえ地元は内陸部なので海はなかったし、東京に来てからも行くのは九十九里のロングビーチぐらいだったので、熱海の「ごつごつした」海岸線はとても新鮮。景色を楽しみながら、ドライブを満喫していました。 そんなとき、前方の山の斜面に、点々とオレンジ色の何かがあるのが目に留まったのです。興味を持った私はハンドルを切り、山の方面へと進路を変えました。 両親もここでみかんを食べたのだろうか たどり着いてみると、そこはみかん農園でした。ずらっと枝に揺れている、美味しそうなみかん。直売所もあります。 そういえば、両親はそろってみかん好き。若い2人も熱海で、みかんを食べたのでしょうか。そんなことを考えつつ、直売所のそばに車を止めました。 画像はイメージです(haru__qさん撮影、Flickrより) 「試食してみて~」 とにっこりやってきたのは、店番のおばあちゃんです。勧めに従って1つ食べてみると、甘くて、それでいて酸味もしっかりしていて、嬉しくなるようなおいしさでした。 さっそくおみやげにしようと1袋買うことに。笑顔のおばあちゃんと話すうちに、両親の新婚旅行のことが話題に出ました。するとおばあちゃんは、 「ありゃまあ~。今は新婚さんもすっかり減っちゃったからね~。じゃあ、これ親御さんにしっかり食べさせてあげて!」 と、上着のポケットがぱんぱんになるくらいに「おまけ」のみかんをくれました。 後日、両親にそのみかんを渡すとやっぱり大喜び。すぐに、その場で食べ始めたほどです。笑顔でみかんを口にする2人を見つめながら、心の中で改めて、あのおばあちゃんにお礼を言いました。