湯布院はなぜ「メガソーラー抑制」を目指すのか
「湯布院温泉」の町として有名な由布市で、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設を抑制する条例案が市から議会に提出され、注目を集めている。
東日本大震災以降、「再生可能エネルギー」の代表格としてメガソーラーの建設が相次いできた。由布市が「待った」をかけた背景はどこにあるのか。
長年「景観」の保護に力を入れてきた
由布市では、現在複数のメガソーラー建設計画が進んでいる。
このうち福岡市の企業は2013年に、湯布院町塚原地区の土地86万平方メートルを購入した。由布岳の北麓、牧場や放牧地などが広がる高原として知られる塚原地区だが、倒産した別荘地や開発予定のない市有地など、「塩漬け」となっている土地も。メガソーラー業者にとっては「好条件」といえ、上記の企業が買い取ったのもそうした一角だ。
地方自治体には、こうした土地の「活用」を積極的に推進するところも少なくないが、湯布院では少し事情が違う。というのも湯布院では、これまで自然を生かし、景観を重視した温泉街として発展してきた歴史がある。バブル期のリゾート開発ブームなどに対しても、条例による開発抑制などを通して独自の立ち位置を守ってきた。
合併により由布市が誕生した後の2009年策定した「景観マスタープラン」では、
「自然と人間生活が織りなす落ち着いた佇まいを守り育て、まちの発展と調和した景観まちづくりを目指して」
との理念を掲げ、上記の塚原地区についても、以下のように自然の保全を宣言している。
「塚原高原は、牧場・放牧地の景観が塚原の風土を形成していることから、これらの環境と調和した景観の保全と活用を進めていきます」
条例制定求める陳情書が出ていた
メガソーラー建造計画に対し住民などから景観保護の機運が高まったのは、こうした風土からだ。
1月23日提出されたこの条例案では、事業面積が5000平方メートル超の再生可能エネルギー発電設備に対し、地元などへの説明会などを義務付けるとともに、市は自然などを守るため「抑制区域」を定めることができる、といった内容を盛り込んでいる。
全国的にも珍しい再生可能エネルギー事業抑制条例は、28日の最終本会議で採決が行われる。