観光地の混雑ストレスを「AI」が解消!? 宮島の最新プロジェクトが目指す「観光革命」の全貌

2019年8月13日 12:14
提供元:広島県
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突然ですが――。観光地でケンカをしてしまった経験、ありませんか?

恥ずかしながら、筆者は何度かある。休日に有名観光地を訪れると、ほぼ必ず遭遇するのが人混みや行列だ。移動や見物などで疲れていることも相まって、いつもよりも混雑にイライラが募ってしまう。

こうした「混雑ストレス」が原因となって、同行者と口ゲンカになってしまうことも。せっかくの楽しい旅行が、これでは台無しだ。とはいえ、こういったプチトラブルは、多くの人が経験する「旅行あるある」と言っていいだろう。

だが近い将来、観光地でイライラすることは、今よりずっと少なくなるかもしれない。実はいま、日本三景の1つとして知られる広島・宮島で、とあるプロジェクトが進行中なのだ。

それは、NTT西日本の広島支店を中心としたコンソーシアムが、県の実証実験プロジェクト「ひろしまサンドボックス」の中で進めている取り組み。観光客の移動傾向、滞在時間などのデータを蓄積することで、

「AI・IoT技術を活用したストレスフリー観光」

を実現することを目的としている。

まだ走り出したばかりのプロジェクトだが、2019年4月にはLINE公式アカウント「宮島観光」をリリース。島内の観光スポットやトイレなどの混雑具合をリアルタイムで発信している。今後、混雑予測や観光ルートの提案など、サービスをどんどん充実させていく予定だという。

最新テクノロジーによる「ストレスフリー観光」とは、いったいどんなものなのか。詳しく知りたくなったJタウンネット編集部は、さっそく広島へ向かった。

トイレの混雑状況も一目で分かる

まずは何より、いま提供されているサービスを実際に使ってみよう。そう思った記者は19年6月某日、あいにくの雨模様のなか広島・宮島口駅を訪れた。

宮島へ行くフェリー乗り場
宮島へ行くフェリー乗り場

フェリー乗り場に到着してまず目についたのが、リアルタイムの混雑状況を示すモニター。これも、今回のプロジェクトの一環で設置されたものだ。

平日で天候も悪かったため、どこも「空き」の状態だった
平日で天候も悪かったため、どこも「空き」の状態だった

「人混みは苦手」「渋滞は嫌い」...フェリー乗り場には告知ポスターも
「人混みは苦手」「渋滞は嫌い」...フェリー乗り場には告知ポスターも

実は記者、宮島を訪れるのはこれが初めて。

今回はあえて事前情報をまったく仕入れず、「宮島観光」のLINEアカウントを使って現地をめぐってみようという趣向だ。宮島について知っているのは、厳島神社、鹿、もみじ饅頭...本当にそれくらいだった。

というワケで宮島に到着後、さっそくアプリを起動すると――。

「宮島観光」LINEトーク画面。これを頼りにして観光してみる
「宮島観光」LINEトーク画面。これを頼りにして観光してみる

19年7月時点で提供されているサービスは、「クルマ渋滞」「ヒト混雑」「おすすめ」「もみ爺と話す」の5つ。最後に出てきた「もみ爺」は、このLINEのイメージキャラクターというべき存在。観光情報や宮島に関する豆知識などを聞くと、(彼の知っている範囲で)いろいろ教えてくれる。

これが「もみ爺」。トークはポンコツ気味だが憎めない
これが「もみ爺」。トークはポンコツ気味だが憎めない

まずは試しに「ヒト混雑」について確認したが、乗船前に見たモニターと状況は変わらず、どこも「空き」の状態だった。ちなみに、「ヒト混雑」のページでは、女性用トイレの混雑情報も確認することもできる。

宮島桟橋のトイレが混雑しかけていることが分かる
宮島桟橋のトイレが混雑しかけていることが分かる

これは、トイレの個室ドアにセンサーを設置することで実現したもの。ご覧のとおり、具体的にいくつの個室が使用されているのかも分かる。観光地のトイレで、女性が大行列を作っているのはよく見る光景。リアルタイムで空き状況を確認できるのは、かなり嬉しい機能だろう。

トイレの扉に開閉センサーが設置され、情報をタイムリーに発信している
トイレの扉に開閉センサーが設置され、情報をタイムリーに発信している

「おすすめスポット」の紹介も

このように、リアルタイムの混雑状況を確認したうえで、まずは厳島神社へと向かった。この日の天気は雨のち晴れの予報。今は「空き」の状態だったが、天気が回復するにつれ、これから人が増える可能性も考えられたからだ。

なお、混雑状況のマップから観光地のアイコンをタップすると、目的地までのルートをGoogleマップで確認できる。観光地だと訪れたい場所の正式名称が分からないこともあるので、これは地味に便利だろう。

ときおり立ち止まって、こうした機能を確認しながら移動していると、厳島神社が見えてきた。

厳島神社の大鳥居。改修工事のため、一部が覆われている
厳島神社の大鳥居。改修工事のため、一部が覆われている

せっかくなので、アップでもどうぞ
せっかくなので、アップでもどうぞ

あいにくの天候だったが、やはり圧巻だ。潮が引いている際は、すぐ近くまで歩いて行けることでも知られる大鳥居。LINEのトークで「もみ爺」にも聞いてみると、干潮・満潮の情報を教えてくれた。

上のURLを飛ぶと、当日の潮位情報がチェックできる
上のURLを飛ぶと、当日の潮位情報がチェックできる

参拝料を払って、じっくりと神社内をめぐる。事前に混雑状況を確認していたこともあって、スムーズに回ることができた印象だ。ただ、見物に夢中になって、その後の予定を考えていなかった。「これからどうしよう...」と思い、ふたたびLINEを起動する。

「おすすめ」のボタンを押すと、「大聖院」や「千畳閣」などのスポットが紹介された。非常に申し訳ないが、宮島ビギナーの記者。どこもまったく聞いたことがない場所だったが、宮島観光LINEが薦めるならば――と、これに従っていくつかのスポットを回ってみた。

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ちなみに後でNTTの担当者に聞いた話だが、この「おすすめ」に表示されるのは、宮島の中でも比較的マイナーなスポット。こういった場所を紹介することで、有名スポットへの混雑集中を分散させたり、滞在時間を延ばしたりする狙いがあるという。

というワケで、宮島観光アプリに紹介されたスポットをいくつか実際にめぐってみたので、駆け足で恐縮だがその様子を写真でご覧いただこう。

真言宗御室派の総本山・大聖院
真言宗御室派の総本山・大聖院

見た目から涼し気な風鈴が飾られていた
見た目から涼し気な風鈴が飾られていた

国の重要文化財にも指定されている「千畳閣」
国の重要文化財にも指定されている「千畳閣」

「もみ爺」チャットボットの豆知識で発見も
「もみ爺」チャットボットの豆知識で発見も

――こういった具合で、約2時間にわたって宮島をめぐった記者。先にも述べたとおりだが、今回はパンフレットやウェブ検索などは一切使わず、「宮島観光」LINEだけを頼りにした。

触ってみた感想だが、現時点ではサービスとしての完成度はまだまだの部分もある。純粋に「使いづらい」と感じる機能や、「ここがこうなればもっといいのに」と思う箇所もあった。

とはいえ、現在の状態であっても、IoT技術を使った「次世代型観光」の期待は十分に感じられた。例えば、リアルタイムで更新される混雑情報などのデータを頼りにして、どのように観光していくかのルートを考えてみた点などだ。

これからの夏休みシーズン。宮島を訪れる予定のある人は、とりあえず「宮島観光」LINEを触ってみるのもアリだろう。友達登録はこちらから。

サービスの展望は?担当者にインタビュー

ここまで、実際にサービスを使用しながら、今回のプロジェクトの現状について紹介してきた。

そうなると気になるのが、今後の展望だろう。宮島観光を終えたばかりのJタウンネット記者は、NTT西日本広島支店の担当者に詳しい話を聞いた。

まず気になったのが、どういった基準で「ヒト混雑」に表示される8のスポットを決めているのかだ。その点について聞くと、

「混雑しやすいエリアはもちろんですが、宮島観光協会などとも相談したうえで、もっと人が来てほしいと考えるエリアも表示するようにしています。混雑ストレスの緩和はもちろんですが、島内の滞在時間を延ばしたり、観光客の満足度を高めたりすることも目的ですので」

という。

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なお、島内に設置したカメラでは、AIが映像を解析することで、性別や年代、滞在時間などを測定できる。こうしたデータを蓄積することで、数時間後の混雑予測をはじめとしたさらなるサービスの充実へと繋げていく狙いだ。担当者によれば、

「まだデータを貯めている段階なんです。リアルタイムでの混雑状況の表示は本当に第一段階になります」

とのことだ。

実際、今秋にも「混雑予測」を新たに導入する予定。将来的には、島内の各所でLINEプッシュ通知し、当日の混雑予測や次に誘導したいおすすめスポットを観光客にレコメンドすることも考えているという。

「宮島について一目散に厳島神社に行かれた人は、出口にある広場で『さて、この後どうしよう?』となるんですよ。だから、そこでLINEから通知を出して、『こういうスポットがありますよ?』と提案する。そんな方法も考えています」(担当者)

記者も厳島神社を出た後に「どうしよう」となった1人。ここでレコメンドが出てきたら、確かにありがたいと思えた
記者も厳島神社を出た後に「どうしよう」となった1人。ここでレコメンドが出てきたら、確かにありがたいと思えた

さらには、宮島へフェリーで渡る前の駐車場の混雑についても対応予定だ。

駐車場にセンサーを設置し、空車状況を確認できるようにする試みを進めている。少し離れた駅で車を停め、その上で電車移動する方がスムーズな場合などには、そうした情報をレコメンドすることも検討しているそうだ。

写真下側の黒い横長の物体が車両検知センサー。センサーを車が踏むことで自己発電をしてデータを送信する
写真下側の黒い横長の物体が車両検知センサー。センサーを車が踏むことで自己発電をしてデータを送信する

現時点でも、リアルタイムの渋滞情報を提供している。これも、今後さらにパワーアップする予定だ。

このように、最新のAI・IoT技術を使って、「どうしたらストレスなく観光できるか」を追い求めているけている今回の取り組み。そもそも、プロジェクトを始めたきっかけも、地元から上がった「混雑を何とかしてほしい」と言う声だった。

しかし、カメラの設置やおすすめスポットの紹介など、いざプロジェクトが実施段階に入ると、予想外の壁にぶつかる部分もあった。それは、地元の事情だ。特定の売店をレコメンドすることができないなど、様々なハードルがあることに気付いたというのだ。

「あくまで中立の立場なので、『このお店のグルメがおすすめ』とかは難しいんです。だから、どういう形で、どこまでなら可能なのか。それを、地元の皆さんと話し合いながら、少しずつ進めているところなんです」(担当者)

だが、こういった問題が起きるのは、宮島だけではない。こうした新たな観光サービスが、地元とどう「共存」していくかは、全国の観光地で共通した課題だろう。

つまり、このプロジェクトが、他のモデルケースにもなりうるわけだ。少々大げさかもしれないが、最新テクノロジーを使った「新しい観光」の在り方を探る試みが、いま宮島で行われているとも言えそうだ。

取得したデータは人数、属性、島内滞在時間など、リアルタイムに分析される
取得したデータは人数、属性、島内滞在時間など、リアルタイムに分析される

――現状のサービスと、今後の展望。その両方から、今回の取り組みに触れた記者。取材を通じて率直に感じたのは、「観光客」と「観光地」それぞれの考え方が、大きく変わるきっかけになるかもしれない期待だった。

1人の観光客として、プロジェクトの成功と発展を祈りたい。純粋に、そう思えた。

<企画編集・Jタウンネット>

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