観光地の混雑ストレスを「AI」が解消!? 宮島の最新プロジェクトが目指す「観光革命」の全貌
サービスの展望は?担当者にインタビュー
ここまで、実際にサービスを使用しながら、今回のプロジェクトの現状について紹介してきた。
そうなると気になるのが、今後の展望だろう。宮島観光を終えたばかりのJタウンネット記者は、NTT西日本広島支店の担当者に詳しい話を聞いた。
まず気になったのが、どういった基準で「ヒト混雑」に表示される8のスポットを決めているのかだ。その点について聞くと、
「混雑しやすいエリアはもちろんですが、宮島観光協会などとも相談したうえで、もっと人が来てほしいと考えるエリアも表示するようにしています。混雑ストレスの緩和はもちろんですが、島内の滞在時間を延ばしたり、観光客の満足度を高めたりすることも目的ですので」
という。
なお、島内に設置したカメラでは、AIが映像を解析することで、性別や年代、滞在時間などを測定できる。こうしたデータを蓄積することで、数時間後の混雑予測をはじめとしたさらなるサービスの充実へと繋げていく狙いだ。担当者によれば、
「まだデータを貯めている段階なんです。リアルタイムでの混雑状況の表示は本当に第一段階になります」
とのことだ。
実際、今秋にも「混雑予測」を新たに導入する予定。将来的には、島内の各所でLINEプッシュ通知し、当日の混雑予測や次に誘導したいおすすめスポットを観光客にレコメンドすることも考えているという。
「宮島について一目散に厳島神社に行かれた人は、出口にある広場で『さて、この後どうしよう?』となるんですよ。だから、そこでLINEから通知を出して、『こういうスポットがありますよ?』と提案する。そんな方法も考えています」(担当者)
さらには、宮島へフェリーで渡る前の駐車場の混雑についても対応予定だ。
駐車場にセンサーを設置し、空車状況を確認できるようにする試みを進めている。少し離れた駅で車を停め、その上で電車移動する方がスムーズな場合などには、そうした情報をレコメンドすることも検討しているそうだ。
現時点でも、リアルタイムの渋滞情報を提供している。これも、今後さらにパワーアップする予定だ。
このように、最新のAI・IoT技術を使って、「どうしたらストレスなく観光できるか」を追い求めているけている今回の取り組み。そもそも、プロジェクトを始めたきっかけも、地元から上がった「混雑を何とかしてほしい」と言う声だった。
しかし、カメラの設置やおすすめスポットの紹介など、いざプロジェクトが実施段階に入ると、予想外の壁にぶつかる部分もあった。それは、地元の事情だ。特定の売店をレコメンドすることができないなど、様々なハードルがあることに気付いたというのだ。
「あくまで中立の立場なので、『このお店のグルメがおすすめ』とかは難しいんです。だから、どういう形で、どこまでなら可能なのか。それを、地元の皆さんと話し合いながら、少しずつ進めているところなんです」(担当者)
だが、こういった問題が起きるのは、宮島だけではない。こうした新たな観光サービスが、地元とどう「共存」していくかは、全国の観光地で共通した課題だろう。
つまり、このプロジェクトが、他のモデルケースにもなりうるわけだ。少々大げさかもしれないが、最新テクノロジーを使った「新しい観光」の在り方を探る試みが、いま宮島で行われているとも言えそうだ。
――現状のサービスと、今後の展望。その両方から、今回の取り組みに触れた記者。取材を通じて率直に感じたのは、「観光客」と「観光地」それぞれの考え方が、大きく変わるきっかけになるかもしれない期待だった。
1人の観光客として、プロジェクトの成功と発展を祈りたい。純粋に、そう思えた。
<企画編集・Jタウンネット>