「すこし視界が滲んでしまいました」 非公開だった「幻の近代建築」と夢の邂逅...下関市「長府苑」の美しき西洋館
完成間近に新築のまま廃墟と化した西洋館
下関市の公式サイトに掲載されている資料によると、田中隆氏は第一次世界大戦時に海運業で財をなし、中国の革命家・孫文に資金援助をしたことで知られる下関の豪商。1925年、市内の長府黒門町の広大な敷地に木造瓦葺の日本家屋を新築し、この場所は「長府苑」と呼ばれた。
投稿者・腹よわボーイさんが紹介したのは、その日本家屋と同時に作られていた洋館だ。
神戸市にある国指定重要文化財「旧ハッサム住宅」の設計者である英国人建築家アレキサンダー・ネルソン・ハンセル氏に依頼したものだったが、大恐慌による経営悪化で内装に取り掛かる寸前で工事中断。その後43年に工事の再開を試みたものの完成に至らず、そのまま廃屋になった。
そして朽廃のために80年に解体されることとなり、1階の周壁部分のみが保存されていたという。
この建物がなぜ"幻"か。それは、この場所が長らく民間所有地で、一般には非公開だったからだ。