「満席のバスで愚図る幼い兄弟。宥める母には地獄なのに、夫が『うるさいな、自分の子供くらい言い聞かせろ!』」(千葉県・50代女性)
シリーズ読者投稿~「ごめんなさい」を言いたくて~ 投稿者:Hさん(千葉県・50代女性)
10年前、Hさんは夫に失望した。彼の行為が、彼女にとって許せないものだったからだ。
そして先日、彼女は夫にそれまで言い出せなかった思いのたけを打ち明けたという。
<Hさんの体験談>
10年前、兄が病気で亡くなり、帰省のため羽田空港へと向かうバスの中でのことです。満席でした。
補助席を挟んだ横に母子が座っています。
子供は2人、一人は幼稚園児くらいのお兄ちゃん、母親の膝にも3歳くらいの男の子。弟のほうが、ぐずって泣き出しました。
「うるさいな、自分の子供くらい...」
間が悪くお兄ちゃんも駄々を捏ね、母親は2人を宥めるのに汗だく状態。小学生の男子を育てる私には、「公共の交通機関でこの状況は、お母さんにとって地獄だろうな」と大変さがよく理解できます。
しかしその時、私の隣に座っていた夫が長引く地獄絵図に「うるさいな、自分の子供くらい言いきかせろ!」と吐き捨てたのです。
私は夫の恥ずかしい行為に顔を背けることしかできず、母親もまた泣きそうな顔で周囲に謝罪を繰り返し、怒鳴られた子供たちは面食らって静かになりました。
車内は嫌な静寂に包まれ、5分程後に目的地に着いたときには、皆が胸を撫で下ろした様子でした。
私は、逃げ去るように駆け出す親子の背中に謝りながら、その場で夫を諫めなかったこと、諫めて口論となれば余計に周囲に迷惑になるのではと考えたこと、夫への失望が堂々巡り状態。この時のことは、一度も口に出さずに生きてきました。
ですが、自身の子が成人し、「育児終了」を迎えた先月。初めて夫にあの日の出来事について話すことに決めました。
夫は私に詫びたけど...
夫の行為は「人格を疑われる行いであったこと」「母親だから言いきかせられると考えるのは、子育てに参加していない人間の馬鹿な理論であること」「夫に失望したこと」など思いの丈を打ち明けました。
現代では、当然にハラスメントと認識される問題です。社会でそれなりの立場になった夫自身も「当時なぜあの言葉を吐いたのか、葬儀に向かう状況だったから不安定だったのか、行為自体の間違いと恥ずかしさで今まで口にできなかった」と私に詫びました。
ですが、あの母子に届かない謝罪に意味はありません。私は私の責任で「自制の効かない夫」を選んだのだと受け止められますが、あの時の母子には詫びようがないからです。
今はもう、どうかあの母子が幸せな人生を送られていますように、子が元気に育ち仲良く暮らしていますようにと願うしかありません。
末文になりますが、どの時代でも子育てする母親は、日々悩み反省し自身を奮い立たせながら懸命に子育てしています。ぜひ周囲の方々には思慮深く理解してもらい、補い合える人間関係を育て、安心できる子育て環境を作ってほしいと思います。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」「あの時はごめんなさい」、聞かせて!
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