「寝台特急『北斗星』で札幌めざし一人旅。朝、個室のドアが叩かれて、開けると隣の部屋の男性が...」(東京都・50代男性)
シリーズ読者投稿~忘れられない「あの人」と~ 投稿者:Kさん(東京都・50代男性)」
10年ほど前、Kさんは寝台列車「北斗星」に乗り、東京から北海道へ向かった。
1人部屋を予約した、1人旅。その隣の個室に、途中駅からある男性が乗ってきて......。
<Kさんの体験談>
北海道新幹線開業に向けて、青函トンネルの新幹線工事の本格化が報じられるようになり、正式発表はないまでも、トンネルを通過する寝台特急や在来線の特急列車の廃止が予想されるようになった2014年3月。
廃止になる前にと、寝台特急「北斗星」のB寝台個室に乗車し、一人札幌を目指した。
隣の個室の男性に出会って...
ひと月前に予約したため、スムーズに部屋を確保できた。数か月後に「北斗星」の臨時化と廃止が発表されると、途端にチケットはプラチナ化していたが......。
乗車したのは6号車。B寝台個室のソロと半室がロビーとなっている車両だった。
上野を発車し、更けていく夜を満喫しながら車窓を楽しみ、一人食堂車でのディナーも楽しんだ。
一人ではあったけれど、そこは大好きな寝台特急。全く寂しいなどという感情はなかった。
23時過ぎ、仙台に到着したのでホームの様子を見ようと自室のドアの近くにいると、スキー板を担いだ初老の男性が乗車してきた。
彼は隣の個室の乗客で、その時は挨拶をするだけだったが、翌朝再び通路で顔を合わせると、いろいろ話をすることに。
北海道のどこかで行われるスキー大会に出場すること、寝台列車に乗ると必ず誰か見つけて話すことにしていること......私たちはしばらく話し込み、また部屋に戻った。
それからしばらくすると、部屋のドアを叩く音。開けると隣の彼がいた。
食事に誘われ、食堂車に向かうのかと思ったら...
「一緒に朝食を食べないか?」
そう言われたので、てっきり食堂車に向かうものだと思ったのだが、長万部駅の駅弁「カニ飯」を予約したので一緒にどうか、というお誘いだった。
函館出発で予約すれば、長万部到着で受け取れるそうで、ロビーカーで話しながらご馳走になった。
カニ飯はもちろん美味しかった。それに、私の分までわざわざ予約をして誘ってくれた気持ちが嬉しくて、とても暖かい気持ちで頂くことができた。
そのまま札幌到着まで色々と話をし、改札で大会の健闘を祈って別れた。
彼との出会いのおかげで、その後の北海道旅行が気持ちの良いものになったのは言うまでもない。
新幹線が便利なのは理解できるけど...
何度か乗車した「北斗星」には、こんな一期一会が何かしらあったし、旅情を感じられたものだ。
こんな経験、新幹線ではまずあり得ないだろう。
北海道新幹線が開業し、寝台列車は一部を除き過去のものになってしまった。
鉄道好きな人じゃなければ新幹線のスピードは必要だろうし、便利なことは理解できる。
けれども、過去の新台列車にも良いところはあったし、旅をする感覚は新幹線とは比べ物にならないのも確かだ。
時代が巡り、豪華な列車ではなく、普通の人が気兼ねなく乗車できる夜行寝台列車が復活することを心から願っている。
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