「岩手で有名な食堂に寄ったけど臨時休業。地元民にいい店はないか尋ねると『コンビニでおむすび買っておいで』と言いながら...」(大阪府・50代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(大阪府・50代男性)
Tさんはかつてのゴールデンウィークに、バイクで東北を旅したという。
岩手県では、有名な食堂でのランチを楽しみにしていたのだが......。
<Tさんの体験談>
趣味のバイクツーリングで、東北地方を訪れた時の体験談です。
その日のランチは、岩手県・大槌町の有名な食堂で食べようと楽しみにしていました。雨の中、店にたどり着いたのは営業開始時刻より前。店の横の駐車場で開店を待つ事にしたのですが......。
「うちの魚食べていけ」
営業開始時刻を過ぎても開店はおろか、人の気配もしません。改めて店の入口を確認したところ、運悪く臨時休業だったのです。
諦めざるを得ず、しかし楽しみにしていた海鮮料理を諦めきれず、漁港の近所ならと思い、大槌漁港に向かいましたが、飲食店らしき店構えは見つからず、荒天のなか人影もありません。
そんな中、鮮魚店の看板を見つけました。行ってみると、飲食店でも小売店でもない店構えです。加工場と思わる建物に人影を見つけたので、とにかくバイクを停めて、地産の鮮魚が味わえる食堂を教えてもらう事にしました。
店先にいた男性に事情を話すと、奥から女性が現れました。ずぶ濡れの私にタオルを差し出しながら、こう言います。
「うちの魚食べていけ、米は切らしてるからコンビニでおむすび買っておいで」
そして、店内をささっと片付けて、丸椅子とテーブルがわりの酒瓶ケースを用意して下さいました。
新鮮なホヤ、生のり、イカ、水揚げ直後のホタテの貝柱!
作業中のところ、あまりに悪いと思い立ち去ろうとしますが、「いいからいいから」と歓迎ムードで迎えてくださり、お言葉に甘えることに。
「こんなもんしかないけど」と言いながら、新鮮なホヤ、生のり、イカなどのほか、お店の佃煮などを次々に用意してくださり、美味しくいただきました。
そこへ女将さんらしき方が作業場から「こっち来い」と手招き。水揚げ直後のホタテから、ささっと貝柱を取り出して「美味いぞー」と差し出して下さいます。デカい貝柱をそのまま放り込むと、得も言われぬ甘みが口の中に広がりました。
地産の海鮮を満喫させていただき、代金支払いを申入れたのですが、「要らない要らない、こんな所へわざわざ寄ってくれたのに金なんて要らない」と言って聞き入れてもらえません。それどころか、食べ足りないだろと、さらにオカズを包んでくださり、「これを持って知り合いのラーメン屋行ってごはんと一緒に食べろ」と......。
とはいえタダ飯おみや付きで去る訳に行かず、「じゃあ値段の付いた店の商品を買ってくれ」との有り難いお言葉に甘え、お土産を買いクール便で送ることにしました。
東北、ホヤ、ホタテのワードを聞くたびに、あの旅の想い出が甦ります。GWのまだ寒い東北地方での暖かい想い出です。
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