「夜営業の仕込み中に来店した男性に『弁当を作ってほしい』と頼まれた。1つは無理だと断るも、『どうしても』と引かなくて...」(福岡県・70代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Fさん(福岡県・70代男性)
Fさんは35年前、小さなレストランを経営していた。
ある日、夜の営業のための仕込みをしていると、男性が来店し「お弁当を一つ作ってください」と言われ...。
<Fさんの体験談>
今から35年前の話です。当時、私は小さなレストランを経営していました。
ある日、お昼の営業が終わり、夜の仕込みをしていた時、男性が来られて「お弁当を一つ作ってください」と言われました。
「どうしても」と言われ...
私は「一つは無理です」と断わったのですが、彼は「どうしても」と言うのです。
理由を聞くと、男性のおばあちゃんが、がんで入院していて先生から「もう手遅れなので好きな事させてあげなさい」と言われたとのこと。
そこで彼がおばあちゃんにどこか行きたい所はないかと聞くと、「私の店の料理が食べたい」と言ったのだそうです。それでお願いに来ました、とのことでした。
私は、すぐにある材料でお弁当を作り、男性に託しました。
二ヶ月後、再び来店したその男性に、「おばあちゃんは亡くなりました」と言われました。
あの日、男性はお弁当をおばあちゃんの入院先に持って行き、すぐに食べさせたそうです。
おばあちゃんは「あ~この味、この味」と言ってくれたそうで、このことをどうしても伝えたかったとおっしゃっていました。
私は料理人で良かったと心から思い、涙が止まりませんでした。
これ以来、私の座右の銘は「記憶に残る味」です。
今私は高校の調理科で、時々生徒に料理を教えています。この時の経験も、伝えています。
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