「大学3年生、野宿の旅。ヒッチハイクをしていたらウッカリ族車を止めてしまって...」(神奈川県・50代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Oさん(神奈川県・50代男性)
牧師のOさんには、忘れられない旅がある。30年ほど前、大学3年生だった時の経験だ。
三浦半島を徒歩と野宿で一周する旅に出た彼だったが、砂浜で寝ているときに雨が降ってきてしまった。
そこで、ヒッチハイクをすることにしたのだが......。
<Oさんの体験談>
30数年前の大学3年の春、人間関係に少し疲れていた私は思い立って、三浦半島を徒歩と野宿で1周する旅に出ました。
持ち物は地図と傘、寝袋、トイレットペーパー、缶詰、懐中電灯ぐらいだったと思います。
家からの仕送りはなくアルバイトで学費や生活費を稼いでいた私にとって、金銭的にも時間的にもこれが精いっぱいの旅行でした。
「しまった!」
葉山側からスタートしたのですが、途中、御用邸を警備する警官に職務質問をされ、不審者として葉山署に連れて行かれてしまいました。
とはいえ、持ち物を検査され、危険物を持っていないことが分かるとすぐに解放してもらえて、それからは海岸線をひたすら歩くことに。
1日目の最初の食事のとき、缶詰を食べようとして箸がなかったのですが、どうやって食べようと悩んだ結果、「手で食べればいい!」。そんな些細だけれど新鮮な気付きを得た後、砂浜で寝たのですが、真夜中に水の音で目覚めました。満潮で足元まで水が迫ってきていたのです。おまけに雨まで降ってきています。
慌てて海沿いの道路に上がり、とぼとぼと歩きはじめました。しかし、すでに真夜中で怖くなり、時折通りかかる車に乗せてもらおうと合図をしましたが、なかなか停まってはもらえません。
50台目ぐらいにして乗せてくれたのは、コンビニのルート配送のトラックでした。その後の道中もできるだけ海岸線を歩こうとしましたが、がけのようなところも多く......。
道路を歩いているときはとにかくヒッチハイクをしましたが、全行程の中で車に乗せてもらえたのは最初のルート配送のトラックを含め3台。そして、そのうちの1台はいわゆる「族車」でした。
おじさんが追いかけてきて...
停めてしまったときは「しまった!」と思いました。しかし恐る恐る理由を話すと、気さくに乗せてくれたのです。
「オレが言うのもなんだけど、野宿は危ないぜ」とアドバイスまでくれて......。
その後は、洞窟や廃屋、手漕ぎボートの下で野宿をしました。剱崎灯台近くの雑貨屋で食糧を買い込んだ時は、そのお店の人がご飯を食べていけと言って、食事を出してくれました。
食べ終わった後、茶碗の下に500円玉を忍ばせて立ち去ったのですが、お店のおじさんが追いかけてきて......。
おじさんは「こんなの受け取れない」とお金を返してくれました。もしかしたら自殺願望者に見えたのかもしれません。
海鮮グルメや温泉を楽しむような旅でもなく、野宿するにもまだ寒い季節でしたが、人の暖かさに触れ、癒された旅でした。今、私はキリスト協会で牧師をしています。
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