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川も干上がるほどの「熱量」だ...! 岐阜県河川課の力作「水難事故Q&A」を全人類に読んでほしい

松葉 純一

松葉 純一

2023.06.30 08:00
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沖縄や奄美では梅雨明けが発表され、全国の夏到来もそろそろだ。最高気温が35度を超える猛暑日が続くともなると、海や川、湖など、水辺に出かけたくなる。

そんな夏本番を前に、岐阜公式ウェブサイトに掲載されている河川課による「水難事故Q&A」が話題になっている。

スクロールバー仕事しすぎ(岐阜県公式webサイトのスクリーンショット)
スクロールバー仕事しすぎ(岐阜県公式webサイトのスクリーンショット)

「Q&A」というと、簡潔でシンプルなものを想像するが、この「水難事故Q&A」はなんと64項目もある。しかも、その一つ一つの回答が、懇切丁寧、担当者のなみなみならぬ熱意が伝わってくる力作だと評判を呼んでいるのだ。

例えば、第一問。

Q1.岐阜県内の河川で、安全に泳げる場所はありますか?

対する答えは、こうだ。

A1.ありません。河川は自然そのものであり、安全は一切保証されていません。
河川は、おだやかな見た目に反して、非常に危険な場所です。
河川には常に水難事故リスクがあります。毎年、多くの方が、河川での水難事故で亡くなっています。

「川の危険は、見た目では、分からない」

この後、63項目の「水難事故Q&A」が続き、その中では、河川の危険性が繰り返し解説されている。それはもう、しつこいくらいに......。

その量と密度に圧倒される他ないページを読んだ人々からは、ツイッターにこんな声が寄せられている。

「ちょっと読んでみたけど、マジですごかった。でもきっと、読まないといけない人達にはなかなかこの内容と気持ちは届かない...。 届け」
「『川は、何事もなかったかのように、ただ静かに流れているだけです』ここ戦慄」
「川で流されたって通報で消防が駆けつけた頃にはもう亡くなってるし、川ってまじで怖いんすよ。 河川について知れば知るほど入るのが怖くなる」
「どの質問への回答も『川に近づくならライフジャケット!!!!!』が強くあらわれてるし、言わなくてもわかるだろうという部分を全ての質問で省略していないの、ほんと苦労が伝わる」
「久々にこれ見たけど、全ての想定問答に元となった水難事故が具体的にあるよね」

なぜこの圧倒的な熱量の「Q&A」を作ったのか。Jタウンネット記者は岐阜県に電話して、詳しい話を聞いてみた。

岐阜県美濃市前野・曽代間を流れる長良川に架かる美濃橋(先従開始さん撮影、Wikimedia Commonsより)
岐阜県美濃市前野・曽代間を流れる長良川に架かる美濃橋(先従開始さん撮影、Wikimedia Commonsより)

取材に応じた岐阜県河川課の担当者によると、サイトを整備し、「水難事故Q&A」を充実させ、水難防止啓発に力を入れはじめたのは、2020年。2022年からは、岐阜県県土整備部河川課の公式ツイッターアカウントを設け、SNSでの発信も積極的に行っている。

「鮎釣りや水遊びなどで、生命を落とされる事故が跡を絶たず、状況はなかなか改善されないことに危機感を感じて、啓発活動に力を入れることになりました」(岐阜県河川課担当者)

岐阜県には大きな河川が多く、人が集まりやすいポイントも各地にある。

「なかでも長良川流域の事故件数が多いようです。美濃市の美濃橋付近、関市の鮎ノ瀬橋付近、岐阜市の千鳥橋付近は、とくに危険です」(岐阜県河川課担当者)

広い河原があり、釣りやBBQ、キャンプに人気のある場所も、要注意なのだ。

岐阜県関市、鮎ノ瀬橋から望む長良川の上流側(Alpsdakeさん撮影、Wikimedia Commonsより)
岐阜県関市、鮎ノ瀬橋から望む長良川の上流側(Alpsdakeさん撮影、Wikimedia Commonsより
「川の危険は、見た目では、分からないことが多いのです。川を渡ろうとして、急に深くなることもあります。冷たい水が流れている場合もあります。川の危険性は、十分に認識していただきたいと思います」
「川遊びにライフジャケットは必須です。ライフジャケットを着用することを心がけてください」(岐阜県河川課担当者)

ライフジャケットは「最低限」!

ライフジャケットについては、「水難事故Q&A」でも繰り返し繰り返し着用を促している。例えば、こんな感じ。

Q4.泳がなければ、少しくらいなら川の中に入っても大丈夫ですか?
――A4.川を甘く見ると重大な事故につながります。少しでも川の中に入るときは、ライフジャケットを必ず着用するとともに、十分注意して行動してください。
河川は、非常に危険な場所であり、常に水難事故リスクがありますので、川に入る場合は、最低限ライフジャケットを着用するとともに、十分注意して行動してください。 
例えば、足が藻で滑ったはずみで深みにはまり、そのまま流されてしまうかもしれません。こうしたとき、ライフジャケットを着用していないと、重大な事故に直結します。
Q20.ライフジャケットの重要性は分かりましたが、でも実際は、ほとんどだれも着用していないのではないですか?
――A20.エリア・時間帯によっては、川でのライフジャケットの着用率は70%を超えています。「川ではライフジャケットを着用する」が、新たなスタンダードです。
Q25.子どもには、自然と触れ合ってたくましい子に育ってほしいと思っているので、川遊びをする際に、贅沢なライフジャケットに頼るのは違和感があるのですが?
――A25.毎年、全国の河川で痛ましい水難死亡事故が数多く発生しています。
ライフジャケットを着用することは、贅沢どころか、最低限の水難事故リスク対策です。
浅い場所でもライフジャケットを!(画像はイメージ)
浅い場所でもライフジャケットを!(画像はイメージ)
Q30.水難事故が毎年たくさん起きていることは知っています。でも、「私だけは大丈夫」と思うので、ライフジャケットは着用しないつもりですが?
――A30.「私だけは大丈夫」と思うことは、楽観バイアスと呼ばれる、認知バイアスの一種です。

そして、Q34。「父はアユ釣りが趣味です。父の日に何をプレゼントすればいいですか?」

答えはもちろん「A34.ライフジャケットが良いと思います」。

毎年、アユ釣り中の水難事故が多発しています。アユ釣りにはライフジャケットが絶対に必要です。ライフジャケットをプレゼントすれば、あなたがお父様を大切に思っていることがまっすぐ伝わると思います。

このほかにも、多くのアンサーでライフジャケットに言及し、浅い場所で遊ぶつもりだろうが、川で泳ぐつもりがなかろうが、水辺で遊ぶときには用意するように訴えている。

そして、ライフジャケットを着用していればそれでOKということでもない。

「水難事故Q&A」のQ5「ライフジャケットを着用すれば、安全ですか?」への、河川課のアンサーは次の通り。

ライフジャケットを着用することで水難事故リスクを低減することができますが、河川は自然そのものであり、安全が保証されることはありません。河川は、非常に危険な場所であり、常に水難事故リスクがありますので、川に入る場合は、最低限ライフジャケットを着用するとともに、十分注意して行動してください。
なお、ライフジャケットの着用は、最低限のリスク低減対策にすぎません。逆に、ライフジャケットを着用せずに川に入ることは自殺行為と言っても過言ではありません。
川の危険性について知識を身に付け、アクティビティに応じヘルメット、ウォーターシューズ、プロテクター等を着用することが必要です。

ライフジャケットの着用は、大前提。川にどんな危険があるのかを知り、出来る対策は全て講じることが重要というわけだ。

最後に、全64項中63項目のQ&Aを引用する。

Q63.どうして水難事故防止の啓発をおこなっているのですか?
――A63.水難事故をなくすためです。
岐阜県内の一級河川では毎年水難事故が発生し、亡くなられる方もいます。水難事故で亡くなられた方のご遺族やご友人の悲しみは一体どれほどでしょうか。痛ましい水難事故をなくすため、岐阜県は一丸となって啓発に取り組んでいます。
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