高知の「カツオのたたき」は何故ニンニクたっぷりなのか? 「土佐伝統食研究会」に聞く独自の食文化
2023年5月、とあるツイッターユーザーが投稿した「高知でかつおのたたきを注文すると、にんにくが食べ切れないほど出てくる」といった内容のツイートが、大きな反響を呼んだ。
その投稿を受けてツイッター上には、高知県民や出身者をはじめ高知を旅行した人などから、さまざまな感想が飛び交っている。
例えば、こんなものだ。
「カツオが見えないくらい、ネギと茗荷とニンニクが山盛りで出てきたものでしたw」
「タタキと一緒にだけでなく薬味だけで食べたりもするのでニンニク足りなくなります」
「たたきは薬味がメインデリッシュ」
「土佐っぽの知人は生にんにくを左手に持ってボリボリかじりながら右手でタタキを食べ酒を飲みます」
「小さい頃から実家ではニンニクを玉で齧ってました。消費量ハンパないので、植えてました」
高知県民はそんなに「ニンニク」が大好きなのだろうか......?
Jタウンネット記者は、専門家に詳しい話を聞いてみることにした。
高温多湿な気候を乗り切るため?
Jタウンネット記者が電話したのは、高知県立大学健康栄養学部の彼末(かのすえ)富貴先生だ。
「土佐伝統食研究会」のメンバーでもあり、土佐の伝統料理について研究している。
彼末先生によれば、高知県の県魚でもあるかつおは県内では日常的によく食べられており、今では一年中スーパーなどで販売されているという。
そんなかつおを使ったたたきのニンニクが「超大量」なのは、事実なのだろうか?
「たたきの上に、スライスしたタマネギや青ネギ、大葉などの薬味をちらし、酢や醤油をかけるのですが、ニンニクだけは別盛りにして、一箇所にまとめてドーンと置くのが、一般的ではないでしょうか(笑)。ぶ厚いかつおの切り身に、ニンニクを一切れ二切れのせ、薬味もたっぷりつけて食べます」(彼末富貴先生)
ニンニクだけ別盛りとは......並々ならぬ「本気」がうかがえる。
そんな高知県民の「ニンニク」好きは、「この地方ならではの高温多湿な気候を乗り切るためとも言われている」という。彼末先生は
「栄養補給と健康回復のため、長年の体験から産まれた生活の知恵かもしれません」
とも語っていた。
ニンニク好きの高知の食文化
なお、彼末先生いわく、ニンニクを利用する高知の食文化は、他にもあるという。
「葉ニンニクのぬた」がそれだ。
葉ニンニクは、ニンニクの成長途中に収穫した若い葉の部分。ぬたは、それを細かく刻んですり潰し、味噌や酢、いりごまを混ぜ、砂糖で味を整えてつくる。
特徴は、ニンニク独特の香味とピリっとした辛みだ。さっぱりとした口あたりで、ブリなどの生の魚やこんにゃくなどにつけて食べると美味しいとのこと。高知では、このぬたがパック入りで、スーパーなどでも売られているそうだ。
また、高知では「ぬた」にする以外にも、
すき焼きや雑炊、炒め物など、いろいろな料理に使われているそう。
すき焼きを食べるとき、ネギの代わりに葉ニンニクを使うこともあるらしい。ニンニクと高知県民の関わりは、なかなか根が深いようだ。
これからどんどん暑くなり、スタミナが必要になってくる。ニンニクたっぷりのかつおのたたきを味わいながら、ニンニクについて、土佐っ子の話に耳を傾ける......そんな旅もいいかもしれない。