いろんな「ウマイ!」集まってます 「日本三大酒どころ」広島を味わうチャンスが到来中
人にはそれぞれ事情がある。
しかし、どんなことがあろうと、うまいものを味わうとき、人は幸せだ。
うまいものは、どこに集まるか。それは、人が集まる場所である。
そんな場所として今、注目したいのが、2023年5月のG7サミット開催を控える広島だ。
なだらかな中国山地に育まれた山の幸、穏やかな瀬戸内海で生まれた海の幸......サミット公式プログラムや関連行事ではどんな料理がふるまわれるのだろう。どんなものであれ、各国の首脳は舌鼓を打つことになるに違いない。
いいなあ......うまいもの、食べたい。幸せに、なりたいなあ......。
そう思った記者は、西へと向かった。
そして突然、一軒目。
到着したのは広島市内の繁華街・流川エリア。
そして、いきなりドン!
カウンターの鉄板で焼けるバターの香りが食欲をそそる、居酒屋「一娯一笑」の「うにホーレン草~バケット付~」(2200円、以下全て税込み価格)。
うにとホウレンソウをバターで炒めるこの料理は、50年以上前に流川の日本料理店で誕生したメニューで、今では複数の店で提供されている。
ふんわりとしたうに、しっとりとしたホウレンソウ、そしてバケットの食感が意外なほどに合う。さらに驚いたのは、和食とも洋食ともつかないこの一品が、驚くほど日本酒と合う、合う!
「さすが広島名物。広島のお酒と相性がばつぐん!」
そう言って酒をすするのは、広島を舞台にした映画「犬ころたちの唄」の監督で、広島を拠点に活動する俳優・映画監督の前田多美さん。
実は広島県には、京都・伏見、兵庫・灘とならぶ"日本三大酒どころ"のひとつ、西条がある。ほかにも、呉や福山をはじめ県内の各所に銘酒の酒蔵が存在するのだ。
そんな広島のご当地グルメが、日本酒に合わないわけがない。実食した記者も、前田さんに激しく同意。
一口でマリアージュの極致に飛んだ。「これは良い」。
間髪入れずに次を注文。次はお肉だよ。
ほかの地域では"ブリスケ"と呼ばれる部位を炙った「広島和牛 コウネ炙り」(1480円)。むやみに柔らかいのではなく、肉らしい弾力と脂のうま味がやみつきになる。
『宝剣 超辛口』(宝剣酒造/呉市)と合わせれば......ヤバい、もう止まらない。
なお、広島市内の繁華街で実施予定の「広島県産食材フェア」の期間中(23年3月19日~5月21日)は、「一娯一会」の「広島和牛 コウネ炙り」は500円引きになる。このチャンス、逃せない!
うまいに決まっている! 広島産の酒&魚介
次に訪れたのは、同じ流川エリアにある「居酒屋 かめ福」。同店でも「広島県産食材フェア」開催中、限定メニュー「広島地魚コース」(8500円)を提供する予定。8品の料理とそれぞれに合う広島の地酒8種を堪能できてしまうのだから、オーダーしない手はない。
広島に来たんだから、やっぱりこれも食べなければ。そう、カキですよ、カキ。このコースには、生牡蠣も焼牡蠣も含まれていて、贅沢極まりない。
生牡蠣の上には、イングランド東部エセックス地方で採れた塩とからすみが。これに合わせるのは、爽やかな酸味が楽しめる『富久長 海風土 純米酒』(今田酒造本店/東広島市安芸津町)。
瀬戸内海で忘れちゃいけない魚といえば、タイである。もちろん、おいしくいただきました。
広島で水揚げされた素材を使った「瀬戸内天然鯛の煮つけ」は、食と合わせることで味わいの相乗効果を発揮する『清酒竹鶴 純米』(竹鶴酒造/竹原市)を熱燗で。くーっ!
ほら。もう、写真だけでも十分おいしいでしょ。
そして、広島の海の幸と日本酒の蜜月はまだまだ続く。
「地蛸の天麩羅」には『雨後の月』(相原酒造/呉市)。ふんだんに感じられる含み香が特徴で、徐々に広がる酸味と後味のキレが揚げ物と◎。
こんなにいろいろ出てきたら......。
とりあえず、飲むしかないでしょ!
ちなみに「かめ福」には常時、広島の地酒が25種類そろっている。
うまい酒も、うまいものもタップリ堪能。これこそ幸せの極み。
次々に現れる、様々な特徴を持つ地酒を少しずつ楽しみながら、こんなことを考えた。
「広島で生まれたお酒を、いろんな意味で味わい尽くしたい」
酒どころ西条で"歩いて、学んで、味わって"
というわけで翌日、やってきたのは――
ドンっ!
ドンっ?
ドン??
ド~ン!!!
日本三大酒どころのひとつ、東広島市の西条だ!
JR西条駅から徒歩10分圏内に7つの酒蔵が密集している西国街道(旧山陽道)周辺は、「西条酒蔵通り」と呼ばれている。
パンフレットを片手に散策するのもいいけれど、詳しい人に案内してもらえれば、より深く楽しめるのが観光ってモノだ。
というわけで、「東広島ボランティアガイドの会」が行う「酒蔵のまちてくてくガイド」をお願いし、ガイドの小平求さんと一緒に酒蔵を巡ることにした。
江戸時代に陸路の中継地として栄えたこの場所が、本格的な酒造業の町として発展し始めたのは明治時代の鉄道開通がきっかけ。県外への輸送手段が船から鉄道に転換したことで、酒造りの中心地が沿岸部から西条にうつり、そしてそこから全国へ西条の酒が広まっていくことになったのだ。
小平さんによると、日本全国から酒造りを学ぶために人も集まり、日本酒の発展に大きく貢献したのだとか。
古い建物が多く残る街並みは、のどかな雰囲気。ボランティアガイドや酒蔵のみなさんが醸し出すとてもウェルカムな空気感のおかげもあって、非常に心地よい。
7つの酒蔵は隣接しているので、歩き回っても全然疲れないし、それぞれの建物や展示物も個性的で、見ていて飽きることもない。
「酒蔵それぞれに違った歴史があり、銘酒があるんだなあ」なんて、しみじみしてしまう。
たとえば、かつて「西條酒造学校」として優秀な杜氏を全国の酒蔵に送り出していた福美人酒造に置かれている「たる」は、野球ファン、特にカープファンなら感動必至だろう。
酒蔵の街の散策も、一つの酒の"味わい方"。
繁華街でほろ酔いになる夜もよかったし、作り手の皆さんの存在を間近に感じながら、まぶしいほどに真っ白な壁の間を歩くのも、素敵な体験だった。
ただ......これだけいろいろ見て回ると、お腹がすいてきた。それに、そろそろじっくりとお酒も飲みたいな。
そんな人にとって、都合がよすぎるほどピッタリなレストランが、この街にある。賀茂鶴酒造が運営する「佛蘭西屋」だ。
ここで味わえるのは、「美酒鍋」。ほかの店でも提供されているが、賀茂鶴酒造発祥の料理だ。
終戦直後、「酒蔵で働く人々に栄養をつけてあげたい」と思った当時の役員が、利き酒に影響が出ないように考案した料理で、砂糖や醤油を使わず、塩と胡椒とお酒のみで調味する。
溶き卵につけて食べるのが定番だが、まずは何もつけずに食べることをオススメしたい。
ものすごくあっさりしているのに、酒のうまみやコクはしっかりと具材にしみ込んでいるのだ。
広島に到着した日の夕方から酒蔵巡りを終えるまで、味わった日本酒は14銘柄ほど。日本酒が大好きな前田さんも「24時間でこんなに多くの銘柄を味わったのは初めてです」と笑顔を見せてくれた。
しかし広島には、うまい酒とうまいものが、まだまだある。
あなただけの組み合わせ――つまり「幸せ」を見つけに、足を運んでみてほしい。
撮影:宮田昌彦
モデル:前田多美
<企画編集・Jタウンネット>
広島県産食材フェア
広島市内の飲食店で2023年3月19日(日)~5月21日(日)開催 参加店舗はこちらから鉄板酒家 一娯一笑
広島県広島市中区流川町7-18 古本ビル月~木、日、祝前日/18:00~25:00 (L.O. 24:00)
金、土/18:00~25:00 (L.O. 25:00)
祝日/18:00~24:00 (L.O. 23:00)
定休日/日曜日(月曜が祝日の場合は月曜定休、日曜営業あり)
公式Instagramはこちらから
居酒屋 かめ福
広島県広島市中区新天地1-9レジャービル2階月~木/18:00~24:00 (L.O. フード23:00/ドリンクL.O. 23:30)
金~日/17:00~25:00 (L.O. フード24:00/ドリンクL.O. 24:30)
定休日/なし
公式サイトはこちらから
日本酒ダイニング 佛蘭西屋
広島県東広島市西条本町9-11ランチ/11:30~14:30 (L.O.14:00)
ディナー/17:00~22:00 (L.O.21:00)
定休日/木曜日、第2、第4月曜日
公式サイトはこちらから
西条酒蔵通り観光案内所
広島県東広島市西条本町17-110:00~16:00(第1・3水曜と年末年始は休み)
東広島市観光案内所
JR西条駅2階(東広島市西条町西条475-2)09:00~18:00(年末年始は休み)
「日本酒のまち東広島(東広島市観光情報サイト)」はこちらから