知る人ぞ知る埼玉ご当地グルメ「豆腐ラーメン」とは何ぞや? 考案者の店監修のカップ麺で触れる
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第九十八回 寿がきや食品「全国麺めぐり さいたま豆腐ラーメン」
文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第九十八回目となる今回は、埼玉県さいたま市のご当地ラーメンである「豆腐ラーメン」の味を再現した、寿がきや食品の「全国麺めぐり さいたま豆腐ラーメン」をレビューします。
監修は「トーフラーメン 幸揚」(さいたま市)。豆腐ラーメン考案者のお店です。
さいたまのご当地麺をカップ麺で再現
全国一の人口集中地区だけあり、南関東には全国的な知名度を誇るご当地ラーメンが多く存在します。
東京では最近、昔ながらの東京ラーメンの一種である「荻窪ラーメン」や「八王子ラーメン」が脚光を浴びています。
神奈川には横浜の「家系ラーメン」や町中華の「サンマーメン」があり、千葉には「竹岡式ラーメン」や「勝浦タンタンメン」、さらには「アリランラーメン」なんていう幻のご当地麺もあります。
しかし、全国的な知名度の「埼玉のご当地ラーメン」という存在はあまり聞いたことがなく、他の1都2県に比べるとちょっと分が悪そう。筆者は元埼玉県民で埼玉愛に溢れているので、埼玉が東京や神奈川に負けるのは許せても、千葉に負けるのは耐え難いものがあります。
海と大きな空港とTDLがないことを除けば、他の全要素で千葉に負けることはないので(※個人の感想です)、ご当地ラーメンで分が悪くても南関東第3位の地位は安泰(※個人の感想です)。
ただ、そうは言いつつもちょっと悔しいことは悔しいので主張しておきたいですが、埼玉にも注目のご当地ラーメンがいくつか存在します。
比較的よく知られているのは、さいたま市を中心に供されている「スタミナラーメン」と「豆腐ラーメン」ではないでしょうか。
「豆腐ラーメン」は、あっさり醤油ラーメンに豆腐や挽肉が入ったあんかけがかかったメニューです。中華料理店のまかないとして誕生し、その後、商品として出されるようになりました。
麻婆豆腐のような見た目に反して刺激は少なく、老若男女誰もが食べられるのが特徴。
「スタミナラーメン」も醤油味のラーメンに麻婆のようなあんかけをかけるラーメンなので、「豆腐ラーメン」とは共通点が多いです。
元を辿れば両者はどこかでつながるのでしょうか。あるいは、埼玉県民にあんかけ好きが多いのでしょうか。
「全国麺めぐり さいたま豆腐ラーメン」の内容物
「全国麺めぐり さいたま豆腐ラーメン」の内容物を見ていきます。
別添袋は「液体スープ」「後入れ粉末スープ」「かやく」の3つで、カップには細めのノンフライ麺のみが入っています。
お湯を入れる前に開けるのは「かやく」の袋のみ。袋には主役の豆腐が5片と、ネギ、挽肉が入っています。
あんかけの具になることを考えれば、挽肉の量が少し不安です。
そしてこちらの「後入れ粉末」はスープにとろみをつけるためのもの。「加工でんぷん」などが入っています。
あんかけスープの再現性は...?
豚鶏ベースの醤油味のスープはあっさり系で、丸みを持ったやわらかい味わい。
ほのかに香るネギ油とごま油の風味がアクセントになっています。
豆腐や挽肉の入ったあんかけ状のスープなので、麻婆豆腐みたいな味を思い浮かべるかもしれませんが、辛みは全くなく、だいぶやさしい味。同じさいたまでも豆腐の入っていない「スタミナラーメン」の方が麻婆味に近いんですよね。
そのスープと混ぜ合わせるのが、とろみをつける後入れ粉末スープ。魔法の粉みたいで、「ねるねるねるね」気分を味わえるかもしれません。
とはいえ、今回のカップ麺ではとろみはおとなしく、最近出てきているあんかけを完全に再現したカップ麺ほどの「らしさ」はありません。
お店で供される「豆腐ラーメン」はガッツリあんかけ状のスープなので、このとろみではちょっと物足りないように思います。
豆腐や挽肉は少ない
麺は、中細で縮れのついたノンフライ麺。
寿がきや食品のカップ麺でよく見るタイプの麺ですが、お店の麺との特徴とも合致しており、雰囲気はよく出ています。
緩やかな縮れがとろみのついたスープをよく拾い、麺とスープに一体感を生んでいました。
具は、主役の豆腐と、挽肉、ネギ。
お店の「豆腐ラーメン」では、豆腐や挽肉がこれでもかっ!とたくさん入っているのが特徴的ですが、今回はどちらも少なく、特に挽肉の量は壊滅的。
具の少なさととろみの足りなさという面で、「豆腐ラーメン」の形状についての再現性はあまり高くなさそうです。
「豆腐ラーメン」と「スタミナラーメン」の弾丸ツアーも可能
さいたまのご当地ラーメン「豆腐ラーメン」を再現したカップ麺でしたが、スープのとろみが弱く、豆腐や挽肉の量も物足りませんでした。
一方で、ネギ油やごま油を効かせつつ老若男女に好まれるやさしい味という特徴はしっかり踏まえており、麺の形状と合わせて雰囲気は伝わる商品です。
具の足りなさについては、自分で豆腐を足せれば良いのですが、もともとスープの味がおとなしいため、豆腐を追加すると超薄味に変化してしまいそうなのでおすすめできません。
今回の商品で初めて「豆腐ラーメン」という存在に触れるのなら、カップ麺だけで完結するのではなく、この体験を実際にさいたまに行って食べてみる契機にしたいところ。
なんなら、「豆腐ラーメン」と「スタミナラーメン」を両方食べるツアーも可能だし、さいたま市には他にも「大宮ナポリタン」や「岩槻ねぎ塩焼そば」といったB級グルメの名物もあります。
M-1でさや香が、「佐賀は出れるけど入られへん」と言っていましたが、さいたまは訪れたら最後、食が魅力的すぎて抜け出せなくなるかもしれませんね。