帰省の途中、「このまま死んでしまうかも」と怯えた新婚夫婦 2人の前に「無敵のカウボーイおじさん」が現れて...
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Uさん(岩手県・40代男性)
ある年の冬、Uさんは年末年始の帰省のために車を走らせていた。
実家があるのは東北。通常なら2時間ほどでたどり着くことができるはずだったのだが、雪深い山道を走ることになり......。
<Uさんの体験談>
今から12年前の冬、大晦日の出来事です。新婚だった私と妻は、東北にある私の実家に帰省して過ごすことになっていました。
妻の職場から私の実家までは100キロメートルほど。通常なら車で2時間の距離でした。
妻の仕事が終わる夕方5時頃に職場まで迎えに行き、高速道路に乗れば、遅くとも7時過ぎには実家に到着します。なので、私の家族とご馳走を食べながら年を越す予定だったのですが......。
高速道路も、一般道も通行止めに...
その日は朝から雪が降り続け記録的な大雪になってしまいました。
夕方になる頃には、交通機関が麻痺するほど。高速道路も通行止めになっていたので、私たちは一般道を通って実家に行くことに。
ところが半分くらい走ったあたりで、一般道の大きな道路すら通行止めになってしまったのです。
そこで今度は、車のナビを見ながら迂回路を行くことに。すでに妻の職場を出てから2時間は経過していました。
迂回路を進んでいるとどんどん山道に入っていきました。
雪深く、視界も10メートルくらい先までホワイトアウト状態。ナビを見ながらかろうじて道がわかる感じです。
「このままスタックでもしたら、やばいね。遭難してしまうね」
妻とそんな冗談を言いながら、心の中では本当にそうなるのではないかという不安を抱えつつ走っていると......数分後、それは現実となりました。
「このまま死んでしまうかも」と思ったとき...
大晦日の誰も通らないような大雪の山の中、ついに車がスタックし、動かなくなったのです。その間にも雪はさらに降り積もっていきます。
外に脱出したとしても、どうしようもない。そんな状態になってしまいました。車内で妻と、「このまま死んでしまうかも」と、半泣き状態に。
山の中で、もちろん近くに民家などありませんし、当時はまだ携帯の電波も届かないような場所でした。
どのくらい時間が経過したのかも覚えていません。ふと、後ろの方から車の明かりが見えました。 その車は大型のSUV。それが後ろに止まった瞬間、「助かった」と思いました。
車から降りてきたのは、スコップを持ち、作業着のような服を着て、テンガロンハットを被ったおじさんでした。私たちには、ヒーローに見えました。
まるでカウボーイのようなそのおじさんは、私たちが県外から来たのだと思ったのでしょう。
「東北の冬をなめちゃだめだよー」
と笑いながら、車を押したり、牽引したりしてくださり、なんとかまた走り出すことができました。
その後も私の車は何度もスタックしてしまいましたが、その度に後を走るそのおじさんに助けてもらいました。途中からは「先に走るから後ろをついてきて」とおじさんの"無敵SUV"に誘導していただき、無事に山道を抜け出すことができました。
カウボーイおじさんは、そのまま車で走り去っていきました。
実家に着いたのはちょうど新年を迎える10分ほど前。雪道との7時間にも渡る死闘を終えた私と妻は憔悴しきっていましたが、生きていることの喜びを心から感じました。
大晦日に実家に帰省する度に、あの時助けてくれたカウボーイおじさんへの感謝の気持ちと、それをまともにお伝えできなかった後悔を思い出します。
翌年、四駆のSUVを買いました。
あのおじさんに恩返しはできないかもしれないけど、次は私が同じように誰かを助けることができればとおもいます。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)