冒険の気配を感じるぞ...! 山形にある「立体交差水路」に、何故かワクワクが止まらない
山形県には、ついつい冒険したくなるような水路が存在しているらしい。
「どうなってるんだろう......?」と探求心に火が付いてしまう、その光景がこちら。
この写真は、埼玉県在住のツイッターユーザー・いこ~(@e_ikuon)さんが2022年11月18日に投稿したもの。のどかな雰囲気の住宅街の中に、立体交差する形で流れている水路がある。上の水路から溢れた水が下の水路へと流れ込み、さらに下の水路も写真右下の部分で二方向に分岐している。
複雑に交差し、水がどう流れているか見ただけではわからない水路に、ツイッター上ではこんな声が。
「一瞬、リアルエッシャー騙し絵かと。面白いです」
「上があふれてちょっと滝のようになっているのもまたおかし」
「なんかワクワクするなー」
この水路、一体どこにあるの? Jタウンネット記者は21日、まずは投稿者のいこ~さんに話を聞いた。
上の水路は堰き止められ...
地形などを絡めた散策や街歩きが趣味だといういこ~さん。特に、湧水や水路と人とのかかわりに興味を持っており、そういった視点で町を見ることが多いという。話題の水路を発見したのは、11日に家族旅行で訪れた山形県の長井市内だ。
「長井市は水路の町ということで、一度訪ねてみたいと思って調べていました。その中で長井市観光協会の公式サイトにこの水路の立体交差の写真があり、とても興味を持ったので訪問してみました」(いこ~さん)
長井市公式サイトによると、同市は朝日連峰を水源とする置賜野川(おきたまのがわ)を活用して街中に水路を巡らせることで、町場の生業を発展させてきた歴史がある。この水路を引き込んだ土地利用の名残が見られる景観を含めた「最上川上流域における長井の町場景観」は、2018年2月13日に国の重要文化的景観にも選定されており、まさに「水路の町」という呼び名が相応しいだろう。
いこ~さんが訪れた立体交差水路の水の流れは、上の水路は写真左方でせき止められ、あえて懸樋(水路の橋)の上で溢れさせているという形。そして下の水路は奥から手前側に流れて、懸樋の下で2方向に分かれていたそうだ。
「想像以上に自分の趣向に刺さり『これはたまらない!』という感じで感動しました。水路の立体交差は埼玉にも結構あるのですが、近代化されて逆サイフォンになっている(水路をくぐらせている)ところが多いので、この昔ながらの雰囲気はとても良いと思いました」(いこ~さん)
それにしても、どうしてこのような立体交差型の水路が設けられているのだろうか。Jタウンネット記者は25日、長井市観光文化交流課主任の海藤元さんにも話を聞いた。
「上」と「下」は違う川
海藤さんによると、話題の立体交差水路は、上側が大樋川(おおどいがわ)、下側が野呂川(のろがわ)という川で、長井市中央地区の街中に位置している。
いつ頃に誰の手によって作られたものなのかは残念ながら記録が残っていないそうだが、1852年に描かれたとされる「小出村長井大火図」には、「立体交差水路」が描かれているという。少なくとも江戸時代にはすでに水路を交差させていたようだ。
設置に関する記録がないため、どういった目的で設けられたものなのかも不明。ただ、水量調節のための物だったのではないか、という説があるという。
そして、「なぜ立体交差しているのか」という疑問について、海藤さんは「これも明確にはわかりません」と前置きしつつ
「これは推測でしかありませんが、2つの川の水を混ぜずに『交差』させているということから、例えば上を流れる大樋川は現在でいう上水用、下を流れる野呂川は下水用といった風に、別々の役割を持っていたのかもしれません」
と述べた。
長井市を訪れる機会があれば、かつてどのような役割を担っていたのか想像しながら、あちこちの水路を水の流れと一緒に巡ってみるのも面白いかもしれない。