「夜中に原チャで事故った私に近付いてくるイカツイ男性。『黒塗りスモーク』のセダンから降りてきて『おねーちゃん...』」(兵庫県・女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Oさん(兵庫県・年齢不明女性)
40年ほど前の冬の夜、Oさんは原付に乗ってバイトから帰る途中、スリップ事故を起こしてしまった。
誰かとぶつかりこそしなかったものの、彼女はけがを負って動けなくなり......。
<Oさんの体験談>
40年近く前のある寒い冬の夜のことです。梅田でのバイトを終え伊丹の自宅に帰る途中、凍ってしまった白線の上で原チャリの前輪がスリップしてしまいました。そして、私はその下敷きになったまま何メートルか道路を滑ってしまったのです。
いかつい男が「言うてくれなわからんでぇ」
あっという間の出来事で何が起きたか分かりませんでしたが、気が付くと肘と、靴の脱げた足から大量の血が......。それを見たとたんに急に痛みが現実になり、寒さもあって私は立ち上がれずにいました。
バイクは道路上にあり、車が来たら危険だと分かっていたのですが、私は手で体を支えながら道路の縁石まで這っていき、腰掛けるのがやっとでした。当時は携帯電話もなく、誰にも連絡できず途方に暮れていたら、私の前に黒塗りのセダンが現れました。窓もスモークで黒くしていて、本当に怖かったです。
車は私の方に近付くと、運転席から男性が声をかけてきました。
「おねーちゃん、だいじょうぶか。送ったるから乗っていき」
その人は短髪で、いかつい感じの見た目の人だったので、私は「さらわれるのでは......」と思い、怖すぎて返事ができませんでした。
するとその人は私をお姫様抱っこして後部座席に乗せ、バイクを邪魔にならない場所に移動させてから運転席に戻ってきました。
「家どこや? 言うてくれなわからんでぇ」
「まっすぐか?」
そう聞かれたので「次の信号左です」と答えると、「良かった。しゃべれるやん。家帰ったら病院行きや」と言われ、車は私の自宅へ向かう道を進み始めました。
抱きかかえた私を父に受け渡し...
その後も道を伝えながら自宅に戻ると、その人はまた私を抱きかかえて車を降り、そのままインターホンを鳴らしました。
玄関から父が出てくると、私を受け渡し「ケガしてるから病院行ってください」とだけ伝えて去っていきます。
事情のわからない両親は唖然としていましたが、母に「バイクでこけたから送ってくれた」と伝えると、お礼を言うために慌てて追いかけていきました。すると男性は、
「ちょっと送っただけやから気にせんといて」
「明日でもバイク取りにいっときや」
と私に叫んだ後、手を振って車に乗り込まれました。
その頃の私は夜遊びもしていたので、帰宅してなくても探しに来てくれる可能性は低かったでしょう。冬の寒空の下、あそこで一晩過ごしていたらと思うとぞっとします。
あの時は本当にありがとうございました。あれから、私は人を見た目で判断したらあかんなと思うようになりました。そして、困ってる人がいたら助けられる大人になれているかなと、あの男性を思い出すたび自分に問いかけています。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
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